ピエロのワルツ(全33話)
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「ただいま」
と言いながら部屋に入れば、そこには私が出かけた時と違わずウタ君がくつろいでいて、 ウタ君は
「お帰り」
と顔をこちらに向け「あ」と呟いた。
「何でグールといるの?」
「ウタさん、私、覚えていませんか?」
ウタ君はやはり一発で友人のことをグールだと見破り友人は友人で己について語ろうとしていたが、だ。
とりあえず手洗いをして欲しいので洗面台で手を洗ってもらいウタ君は 3人分のコーヒーを淹れている。
もう一度友人はウタ君の前に膝をつき自己紹介をしており 私はコートをハンガーにかけながらじっと耳を傾ける。
友人4区に住んでいたらしい。
友人は何とかウタ君の記憶の中の己を思い出して欲しいらしく一生懸命に「あんなこと」や「こんなこと」そして「そんなこと」を語っている。
いやらしい意味じゃないと言っておくけど。
それでも首を傾げたウタ君はチラリと私を見て「う~ん」とうなった後
「マスク、ある?」
と口にした。
マスク?
グールならその単語でわかるものなのだろうか、友人は今は持ってないけどウタさんが作ってくれたと猫の面をあしらったマスクなんですけど、と。
「思い出した、双葉さん」
「よかった!思い出してくれましたか!」
そう友人はパッと笑い、私はコーヒーをズズと飲み干した。
その後 2人のグールのなされる会話について行けずこの隙にでもお風呂を済ませてしまおうかと悩んでいたら友人と ウタ君が私を見て、私は身構えてしまう。何?
空のカップ片手に身構えていればウタ君に手招きをされ友人の横にしゃがみ込みウタ君 の顔を覗き見る。
「柚木さんって周囲にグール多いよね」
「はぁ、そう、だね?」
というかグールが周囲に多いのではなくグールだと気づかないというのが正しいのではないだろうか?
そのことをポツリと呟けば2人は小さく笑い私は3人分のコーヒーを淹れ直す。そして2人の会話にまた耳を傾ける。
やはりグール同士での情報交換をしており「ハト」や「 ケース持ち」など、一度関わったその存在を又聞きし、2人にコーヒーを出した。
このまま友人もお泊まりでいいかとした私は来客用の負担を出そうとし、ウタ君と友人が首を傾げて
「何してるの?」
と背中に声をかけてきたので 私は振り返り
「泊まるでしょう?」と。
「いや、ウタさんと恋人なら私泊まっちゃダメでしょ」
「なんで?あ、ご飯」
コーヒー以外でグールに食べられるものは私以外にいないでしょ、なんてちょっと冗談交じりに言ってみれば、友人は笑いウタ君には眉をひそめられた。冗談です。
即言い直せばウタ君はむすっとしたままで友人は私とウタ君を見ると口を押さえて笑い
「おじゃま虫にはなりたくないから帰るね、またそのうち」
「うん、ばいばい」
「泊まればいいのに……」
久しぶりの高校生活の思い出を語りたかったのだがという思いをのせ呟けば思いのほか 残念そうな声に友人は苦笑いを浮かべている。
「共食いはしたくないから」
「と、共食い?!ウタ君と!?」
「私じゃ勝てないから、じゃ!」
「え、ええ……?」
そう混乱しつつも友人を玄関先まで送り出し、出て行ったところでドアは閉まり鍵は自動でかかり背後からトン、と背中を押されウタ君に壁ドンをされてしまった。
「柚木さんって無防備だよね」
「え?え?」
そう再び混乱している私をウタ君は抱き上げてきて、ストンとベッドに降ろされた。
今更に嫌な予感。
「しないから!」
「1回だけ」
「シャワー!」
ウタ君はにっこりと笑い
「そんな暇ない」
と口を塞がれてしまった。
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