ピエロのワルツ(全33話)
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上手いこと同僚にウタ君の情報を与えず昼食から戻って仕事をこなし定時で上がる。
さて、今日の夕飯は何にしようかなぁなんて考えながらふと、ストーカーのことを思い出し振り返ってみても人がすごいのでどこにいるのかわからない。
時刻と季節もあってかカメラのフラッシュがないのでマジでわからないがまあいいか。
立ち止まって振り返っている私を不審そうに見ている人たちもいたので前に向き直り歩き出す。
パンプスの音を立てながら歩いてマンションに戻りエントランスでポストを覗き込み中から封筒とチラシ 数枚。
それを見ながらパスを読み込ませエントランスを抜けると 自動ドアが閉まる。
エレベーターに乗り込んで大きく息を吐き出しながら厚みのある封筒の中をちらっと見れば写真の束。
自分大好きかよ、 笑える。
エレベーターは止まり静かに開いたのでエレベーターを降り自宅の鍵を開ければ玄関のたたきには男物の靴が一足あり居間の電気がついている。もしかして、
「ウタ君いるの?」
「柚木さん、おかえり」
「ただいま、いつからいたの?」
なんて、ちょっと笑いつつスーツをハンガーにかけていればウタ君はクッションに腰掛けテーブルに写真を大量に並べていて、……待って、写真……って……?
ウタ君は私の手の中の封筒も手に取りガサガサと取り出し それもテーブルに並べている。
嫌な予感。
「これ、何?」
「……写真……」
「写真だね」
静かなウタ君が怖かったりするのだがウタ君はジッと私を見上げコテンと首をかしげていてもう一度
「写真だね」
と。
「こんなにたくさんどうしたの?」
「んー…あー……えっと…ストーカー、的な?」
アハハと笑いながら後頭部に手を当てその場に立ちすくんでいればウタ君が私に手を伸ばしてきてウタ君の横に座らされた。そして 視線で語りかけてくる。
「これいつから」と。思わず 苦笑い。
「あー…先月?」
「何で僕に言わないの?」
「写真撮られるくらいなら別にどうでもいいかなって……」
「 この家に入られたことは?」
「ないと思うけど、合鍵はウタ君しか持ってないから」
相当なことがない限り入ってこれないし、屋上からベランダに降りてくる人もいないし何も盗られてないし、と説明をしていればウタ君は表情を変えることなく私を見つめ私 の腰を引き寄せその手に力が入る。
あ、これ怒ってるやつ。
ちょっと、その理由はわかるけど分かりたくない。
「ほら、あの、ウタ君には言うつもりだったよ?」
今日の昼に思い立って。
ウタ君は私のことを思いきり引き寄せながら腰をスルリと撫で、部屋番号はバレているみたいだし、1ヶ月以上もこんな相手がいたのになんですぐ教えてくれないの?等々と色々言ってくれるが、これは 大分怒っている。
私、今日無事に眠れるかな。
「あの、ウタ君には、本当に…」
「何」
「……ごめんなさい」
ずるずると押し倒され、顔が近づいてくると私はそろりと視線をそらし、ウタ君はそれさえも許さないと言わんばかりの私の顎に手をかけ、また問いかけてきたのは
「そいつの顔は見たことある?」
「 ないかな…早朝とか、深夜 ピンポンはあるけど」
「じゃあ僕泊まる」
「え」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど……」
そこまで言うとウタ君は鼻先をすり合わせそれはもう優しく口づけてきてもう一度
「嫌じゃないなら泊まる」
と繰り返し思わず息をもらし笑ってしまったが、ウタ君は不思議そうに首をかしげ「何?」と呟いた。瞬間、ピンポンとベルが鳴り、私とウタ君は顔を上げウタ君はインターホンの来客用の画面を見るため立ち上がり携帯でどこかにメールを送っている。
そして5分ほどしてからメールの着信音にウタ君はテーブル前に座り込み
「もう大丈夫、何とかした」
その「なんとか」が怖いので尋ねないことでして
「ありがとう」と礼を述べておいた。
なんとか、か……。
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