ピエロのワルツ(全33話)
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ここのところ少し困っていることがある。
朝に、昼に、夜に、休日に、外へ出ると人の気配を感じるのだ。
そりゃあ外に行けば人なんてたくさんいるだけれどそうではない。
私のことをつけてきている人がいるのだ。
朝はドアベルの音に目を覚まし、昼は外食する時にどこかでシャッター音。
夜は夜で会社からの帰宅中に背後で人の足音。
そしてポストに大量の私の写真。
そう俗に言う、ストーカーというものだ。
何でストーカーって撮った写真を本人に送る人がいるのだろうか、不思議だ。
マンションの都合上、中に入るには暗証パスとカードキー 。上に上がっても屋上には行けないので縄などを使って私の部屋のベランダに出て下着を取ったりすることはできない。だから集合ポストの私の部屋のポストには私の写真 。
望遠で撮ったと思われる写真もあるのでこんなことをしている暇があったらもっと有意義に使った方がいいと思う。
まあこれがストーカーの有意義な時間なんだろうけど、さすがに早朝ピンポンは勘弁してほしい。
平日ならまあ多少はいいけれど、休日まで使って朝の5時のピンポンは本当に勘弁してほしい。
直近写真も望遠写真もあまり気にはならないが、もしこのストーカーがエントランスを抜け私の部屋まで前で来るのかもしれないと言うことを考えるとちょっと憂鬱なのだが こんなことを相談できる相手というものが見つからない。
職場の同僚に話してみても仕方ないし警察に行っても実被害が出ないと動いてくれないし早朝ピンポン以外では本当に大して気にならないのがいけないのだろうけど。
しかし休日の早朝ピンポンのせいでちょっとした不眠症であり、朝もベルがなる直前に目が覚めるようになってしまった。
これに加え夜中のピンポンも 追加されたのでなおさらだ。
「ふあ…」
と会社でデスクに向かいながら思わず大きく欠伸をしてしまえば隣のデスクの同僚に「寝不足?」と問いかけられたのでそんなところと返し目頭を押す。
そして コーヒーを胃に流し込む。
「悩み事とかあるの?聞こうか?」
「んー……あるけど、解決しなさそうだからな」
「助言とかならできるでしょ?」
助言。助言か、なるほど。
解決はしなくても話してみれば少しは気が晴れるかもしれない、いいことを聞いた。昼食の時に話してみよう。
「お弁当でしたっけ?」
「青山さんもだよね?」
「そー」
「なら、」
その時にお話ししましょう。
そう言ってから2人で仕事に向き直り進めていく。
パチパチとキーボードを押しながら仕事をある程度まで進めればいいところでお昼となり隣の同僚とカフェテリアにある食堂に向かい、そして今日までのことを話してみた。
端的に話しながらお弁当のおかずを口に放り込み咀嚼していれば同僚はじっと私を見つめ
「警察に、」
行った方がいいんじゃない?と囁かれた。
「いや、でも写真撮られてるだけだし」
「なんでそんな軽いの!?」
普通嫌だなあとか、怖いなあとかあるんじゃない?!と詰め寄る同僚に、私は「早朝ピンポンさえなければ、」全然平気、と答え
「そのうち飽きるでしょ」
と笑ってしまった。
なにせ東京で一番最悪と言われている4区に住んでいたし タクシーの運ちゃんグールに喰われかけたし、なんなら恋人であるウタ君もグールで人間を捕食していたし……待てよ、その手があったじゃないか。
あとのことはわからないけど
「恋人いたからそっちに相談してみる!」
「恋人いるの!?何で早くそっちに相談しないの!?」
「思いつかなかった」
へへへと笑えば同僚には大きなため息を吐かれてしまい、しかし次には顔を上げ私を見つめてくると
「もしかして、岩島君がお持ち帰りしようとしてたあの時の男の子?」
「あ、見てた?そう、その時の男の子」
「高校生くらいじゃなかった……?大学生?え、年下??」
「ふふ、年下よ。若いって素晴らしい」
同僚は「えー!」と大層驚いておりストーカーについては綺麗に抜けていってしまったらしく恋バナが始まる、そんな予感に襲われ、さすがに4つ下の未成年の恋人がいるなんて、ストーカーにあってる私の方が引かれそうなので、とにかくウタ君については「話せない」を通し続けた。
必死だよ。
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