ピエロのワルツ(全33話)
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ズキズキ痛む頭を押さえながら今の惨状を見て目頭を押さえてしまう。
裸だと思ったがウタ君はパン一で、よくよく見ればイトリちゃんも下着姿である。
引っ越しの際、ウタ君にせがまれ セミダブルのベッドにしたのが今、役に立ったと考えながらイトリちゃんの腕を腰から外しウタ君を跨いでベッドを抜け出すとどうやら己も下着姿で、けれどスーツはハンガーにかかっている。
時計を見ると8時半。平日なら冷や汗ものだが休日ならもう少し寝ていたい、そんな時間だ。
まあ起きてしまったから起きるけど。
「頭痛い…」
投げ置かれたカバンを正しながらキッチンに行き、冷蔵庫から水を取り出し薬箱から頭痛薬を取り出すとそれを口に放り込み水で流し込む。
ひんやりとした水が心地いい。
ペットボトルの水を飲み干してから洗面台に行き、鏡を覗き込めばメイクはしっかりと落としてあるし洗面台の脇には開封した拭くだけメイク落としの姿。
多分イトリちゃんだろう。
一旦部屋に戻り着替えを持つと顔を洗いがてらシャワーを浴びてまた部屋に戻っても二人はそれはもう健やかに夢の中だ。
タオルで髪を乾かし、そのままタオルを頭に乗せたままミルでコーヒーを挽きながらお湯を沸かしコーヒーを淹れていればベッドの軋む音と「ん?」という声に私は振り返って声の主を見つめた。
「おはようウタ君」
ウタ君は黒と赤の人の瞳でぼんやりと私を見つめていたが 2人分のコーヒーを淹れている私と、その香りにようやく目が覚めたようで、欠伸をしながらベッドを下り抱きつかれてしまった。
「おはよう」
とふにゃふにゃ笑うウタ君が可愛くて頭を撫で回していればウタ君は顔をすり寄せてきて首筋に口づけを落とされてしまう。
「ふ、ふふ…くすぐったいよウタ君」
ウタ君の吐息がくすぐったくて思わず笑いながらコーヒーを渡せば、器用にも私を腕の中に閉じ込めながらコーヒーカップに口をつけ私も同じようにコーヒーをすする。
自分で言うのもあれだけど、コーヒー淹れるの上手くなってるよね、多分。
私が無言でコーヒーを飲んでいてもイトリちゃんはまだ起きる様子を見せず、黒いレースの下着が何て言うか、女であっても目に毒だ。
セクシーだな。イトリちゃん。
ウタ君と共にコーヒーを飲み干してから眠り続けるイトリちゃんに布団をかけ直し、ウタ君が床に散らばっている服を身にまとい、私はテレビをつける。
4区でグールが人を襲ったらしい。
私も襲われたがよくよく考えれば4区にいた時からほぼ毎日のように4区ではグールが捕食していた、なんてことわざらにあったし20区ではそんなニュースがあまり流れないことに気がついたつい最近のこと。
平和な区に移動したなあと思って人をダメにするクッションに座っていればウタ君用の同じくグールもダメにするクッションに座ってニュースに目を通している。
ウタ君とイトリちゃんがここにいるって事は今の4区のニュースで2人が人を襲ったわけではないことがわかったのでそれで良しとしようと。
チャンネルを変えるもめぼしい番組はやっていないのでテレビを消す。
もう一杯 コーヒー飲むか。
「ウタ君、コーヒーの、む、わっ!?」
「柚木さん」
「な、なに?どうしたの!?」
横にいたウタ君に腰を抱き寄せられクッションに押し倒されると、ウタ君は服の中に手を差し込んできて、私は静かに頑張って抵抗する。
ウタ君は気にしない。
「昨日のこと覚えてる?」
「どこから!?」
と問いかければウタ君は眉間にシワを寄せ口を塞いできたがまた顔を上げ鼻先がぶつかり合う。
「僕とイトリさんがいなかったらクソ社員に連れて行かれるところだったんだよ」
「うわ~……記憶に無い……」
思い出すまで責めようか?の視線を避ければ、ウタ君の向こうでイトリちゃんが起きており、私は思わずウタ君の腹部に膝を押し付けると退かし、ニヤニヤしているイトリちゃんにコーヒーを淹れてあげた。
二人とも、ごめんなさい。
ありがとう。
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