ピエロのワルツ(全33話)
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「柚木さん、20区に行っちゃうんだ」
異動を言い渡された2日後に ウタ君が家を訪れてきて、特にどうともせず中に入ってもらえば少しずつ片付けを行っていた段ボールを見かけ吐かせられた。まあ、隠すつもりはなかったのだが。
ポツリと呟いたウタ君に、「うん」と頷いて、「そうだ」と口にしたのは
「引っ越しの手伝いをしてくれないかな?」
「…引っ越しは、まあ賛成だけど…そうしたら会いにくくなるのが寂しいなぁ」
思わず一緒に住む?と問おうとしたのだが、イトリちゃん情報でウタ君が4区のどこかに何かの店を開くと聞いたので誘うことはできなかった。
仕事を年上後輩に引き継ぎをしてから内覧に動き、あっという間の1週間で私は本社から20区の支社へと転属が終わり約10日の休みができた。
免許証と住民票の書き換えをしたり仕事関連以外の荷物はわりと少ない私の引っ越しの荷解きを手伝ってもらい、今まで住んでいたアパートの倍くらいの広さにしばらくは落ち着けないだろうなと思ってしまう。
ウタ君ともなかなかに 会えなくなってしまう。
寂しいなぁ。
「アンテイクに近いなら」
そこを待ち合わせにしよう、なんて問いかけられたそれに、私は視線をウタ君に向け ウタ君はサングラスを外し、黒く赤い瞳で顔を覗き込んできた。
そしてツイと視線が下がってきて、ウタ君の言いたいこととしたいことが分かってしまった。
「今はしないから!」
「泊まっていい?」
「しないってば!」
「実は着替えを持ってきてる」
「よ、用意周到……!」
そう呟いてしまった私にウタ君は顔を寄せてきて、下からすくい上げるように口づけられてしまった。
そういえば ここのところ忙しすぎてウタ君と「そういうこと」をしていなかったなと考えるが今は本当にダメだ。
汗かいてる。
シャワー くらいなら浴びたい。
浴室とトイレが別室なのが今のところ 一番嬉しい。
そして アンテイクが近いのも嬉しい。
不満なのはウタ君と家が隣ではない。それだけだ。
それを伝えたらウタ君調子に乗りそうだな。
まあ乗らせてもいいか。でもするのはシャワーの後にしてほしい。そんな思考を読んだらしいウタ君は私のことを抱き上げて浴室に連れられてしまう。
いやいやいやウタ君ちょっと待ってよ。
「ウタ君一緒に入るつもり?!お湯はってないから入るとしたらシャワーだけだけど ?」
「一緒に入って、一緒に浴びて楽しいことしよう?」
「いやいやいやちょっと待って」
「 結構ガマンしてたけど」
柚木さんと同じ部屋で広いベッドなんてあったら、 しかも恋人同士だしこの時間だからそういうことをしたくなるのはしょうがないでしょ?何なら触る?
とまで言われると、もう言葉も出ない。そうして無言になった私にウタ君はご機嫌に浴室へと歩いていき、服を脱がされると
「先に浴びてて、僕はタオルを用意するから」
と。
もうさっさと済まそうと服を投げるように脱ぎ捨てウタ君が来る前にとノズルを捻る。
すごい。あっという間にお湯が出る。というか浴室マジで キレイ。
社割で家賃が安いのも高い。
ふんふんしていればウタ君がドアをあけて入ってきて、私はウタ君を見て黙り込んでしまう。
「……刺青入れたの?」
「うん」
それだけで泡を流す私にウタ君は口付けてきて
「久しぶりだから頑張るね」
なんて笑みを渡されてしまった。
「手加減してくださいね……」
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