ピエロのワルツ(全33話)
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一昨日の事が嘘だったように 、2週間後、私の身の回りにいたグール捜査官は私から何も取れないとさっさと引いてしまい、また平穏が訪れた。
そしていつも通り、というより、今までのように家に来てくれるようになりほっと一息。
ウタ君の話によると何でも4区より18区でグールの争いが頻発し、グール捜査官がそちらに引っ張られているらしく私への張り込みはなくなったと。
あの日デパートでスーツとイトリちゃんとウタ君推しの服を購入しスーツ以外でも出勤するようにすれば隣のデスクの先輩が意味深に笑い
「男?」
と尋ねられたので思わず「女」と答えれば先輩は小さく笑い
「友達から?すごく似合ってるよ」
と言われてしまった。
社長にも「趣向を変えたの?」と不思議そうに問われたので「そんなところですかね」と答えてしまう。
まあ、そんなところなのだが。
イトリちゃんは友達なのだろうかウタ君は、まあ恋人だし 、その相手からが選んでくれた服は可愛くて、イトリちゃんが選んで渡してくれたのはちょっと露出が大きいので カーディガンを張っているのだけれど。
今日もそんな感じで仕事をしていれば社長からのお呼び出しがありその日はスーツでいたため(スーツの下は私服のシャツだ)社長室に向かい室内へと入る。
社長は パソコンを眺めながら 忙しそうにしており私は社長の用事を終わるまで待とうとするも社長はすぐ顔をあげて手招きされた。
「これこれ、読んで、大切だから」
と言って伸ばされた腕から紙を1枚手渡され私はそれを受け取り目を通して、黙ってしまった。
「異動……ですか」
「そう。僕も君みたいな優秀な子は手放したくないけど向こうの会社の支店長が気に入ってくれてね」
「もしかしてグールニュースについてですか?」
「それもある」
「お、おう……」
この社長はハッキリと言ってくれるので、ある意味貴重なのだが時と場合というものがある。
でも確かに グールに囲われていると噂が立ってもいるし私が異動すれば本社であるここも、またきっと明るく……なるのだろうか。
よくよく異動命令書類を見れば今よりも上の地位に昇進 でもあるし給料も増える。
4区から離れられない理由は アパートの隣がウタ君だからというだけであり、これを断る理由はない。
「…来月から……20区か」
「とりあえず来週いっぱい休みにするからおすすめのマンションも探しなさい」
秘書に良いところをいくつか 探させたから選ぶといいと言われ退室すれば、秘書さんが私を応接室に連れて行きマンションの候補を見せてきて
「内覧も」
しておきましょう!と張り切られた。何故あなたが張り切る。
「とりあえず今週は仕事をめちゃくちゃ進めてもらうから」
急にごめんね、と言われ、あなたのせいではないと伝えつつ仕事に戻った。
ちょっと先輩に色々訪ねられたのでどう話そうかとしていれば、私の手にあった異動通知の書類に目がいっているようで
「あーあ、いなくなっちゃうのか。羨ましい」
とポツリと呟かれてしまった。
それよりウタ君に何て説明しよう。 駄々をこねられたら 私はどう答えるんだろう、なんて。
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