ピエロのワルツ(全33話)
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休日の昼。ウタ君に前日に抱き潰された私は全身の筋肉痛で顔をしかめながらも私を抱きしめているウタ君の腕の中から脱出しシャワーを浴びる。ウタ君はまだ夢の中だ。
タオルで水気を取り服をまとってから「さあ今日は何をしよう」と考えていたら友人からお誘いメールが届いていて。
久しぶりだなぁと思いつつ画面を開くとそこにはちょっとしためまいを覚える内容が書いてあって、見なかったことにしたかった。
SMショーのS嬢が風邪で倒れて他にショーに出れるほどの腕前がいないからS嬢ヘルプに入って!と。
お願いこの通りと、手を合わせる友人の姿が浮かんでしまい頬がひきつってしまう。
別に私SでもMでも何でもないけど前に1度だけヘルプとして入ったら意外とウケてしまったということはあるけれど、勘弁してほしい。それにSで腕前とかそういうのあるのだろうか?SでもMでもないから分からないけどな!
断固拒否のメールを送ればすぐ電話が鳴り響きその音量にウタ君が起きてしまうと慌ててて出てしまう。
「おはよう」
「おはよう!もう全部すっ飛ばして言うと今夜前に出てもらった会場で8時から10時までショーがあるからそこで約30分観客から一人Mを選んで攻めるんだけどその役をお願いしたいの!」
「いや、やらんて、私Sじゃない」
「選んでやるのは他の人が担当するけど柚木はエキストラM嬢をしばいてほしい!もちろん給金は出る!」
「いや、だから、やらんて!」
「衣装はこっちで用意するし送迎もする」
「だから、やらないって!」
「前に1回やってもらった動画見てこの人が良いって指定されてるから、6時にコンビニで拾うから!じゃ、私打ち合わせに行かなきゃいけないからよろしく!」
「だから!」
やらない、と言う前に通話が終わり勝手に決められたそれに大きなため息を吐き出してまった。
「んー…もう!」
と携帯をクッションに投げつけもう一度ため息を吐くとベッドに背を預け時計を見ようとすれば衣擦れの音がし
「おはよう柚木さん」
とふにゃふにゃな笑顔で目を覚ましたウタ君が起き上がった。
くっ……可愛い!!
「おはようウタ君」
そう噛みしめるように口にすればウタ君は寝転がったまま私の頬に口づけまたゴロリとベッドに倒れ込み寝返りを打っている。
別にウタ君は寝起きが悪いとかそういうことはないけれど、またスウスウと寝始めたウタ君を見て笑い、私はコーヒーでも淹れることにした。
ウタ君がグールだと知り、コーヒーは飲めると聞いてから私もコーヒーを飲むのが習慣なってしまってる。
別に苦ではない。
コーヒーの美味しい淹れ方や、安くても本格的に美味しいコーヒーを見つけるのが楽しくなっているし、ウタ君のおかげで、イトリちゃんや蓮示君も遊びに来てきてくれる。
蓮示君は「来る」というより「連れてこられて来る」に近いけど来てくれるのは嬉しい。
コーヒーを落としてからカップに注いでいるとベッドが軋む音を立て、ウタ君が
「僕も」
と口にしたため、ウタ君のコーヒーも用意しペッタリと背中に張り付かれる前に手渡した。
ウタ君はそれを受け取りつつ私の唇をかすめるようにキスをしてきて、いたくご機嫌にコーヒーを飲んでいる。
「そうだ、柚木さん」
「ん?何?」
「Sの紹介しようか」
「……聞いてたの?」
聞こえてた、と笑ったウタ君の耳のよさに驚きつつウタ君の「S嬢紹介」は凄く助かるわけで、友人に紹介すればすんなりと代役となり私はSをやらずにすんだけれど、その晩、またウタ君に抱き潰されてしまった。
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