ピエロのワルツ(全33話)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は今、人生の中で結構なハードモードに陥っている、と思う。
4区からでてショッピングをして帰宅する道の途中で
グールが争っているところに出くわしてしまったからだ。
無修正グロってこういうことを言うのだろうか。思わずむせかえる血臭に吐き気を覚え口を押さえれば私持っているビニールが、がさりと音を立てて殺していたグールは殺されているグールの内臓を取り出しながらこちらを向き、ニヤリと笑った。後は本能である。
グールが駆け出すよりも先に私が駆け出して走って逃げようとするがショックが大きすぎて足がもつれてしまう。
この際今持っている買い物袋とパンプスは脱ぎ捨て、ダッシュでも決めようかと走っていれば突然首と腕を引かれ体が横にそれてしまいと
「転ぶ!」
と覚悟をしようとしたら私がずれた真横に赤黒い何かが風を切りピッと頬から痛みを感じる。少し切れたようだがそれよりも掴まれた腕の先を見ようとして、そして私の目の前できたグールは勢いよく吹っ飛んでいてしまった。
早すぎる展開に軽い混乱を覚えながらバクバクと高鳴る心臓と、今私を助けてくれた相手を見るとその人、いやそのグールは一度見かけたことのある
「れ、れんじ、くん?」
そう、その人である。いや、グールか。
そんな私の呟きに蓮示君らしき相手は私を見下ろしながら眉を寄せたので、恐らく
「何で俺を知ってる」
か
「誰だそいつ俺じゃねえ」
かのどちらであろう。
前者であった。
襲いくるグールを片手でぶっ飛ばし、ぶっ飛ばされたグールは慌てて裏道に消えていってしまい蓮示君は私の腕を掴んだまま歩き出し
「……名前」
とつぶやかれた。
人との接し方がわからないタイプグールと感知した私。
「ウタ君とイトリちゃんから聞いたの。もしかしたらそうかなって、アンテイクにもいたよね?」
「……ああ」
「よかった……」
と息を吐き出せば蓮示君はまた眉を寄せると大通りに出て腕を離される。しかしこの時間帯でもこの界隈は人通りが少ないのでこちらを気にする人はない。
そんな私の良かった発言に
「グールが怖くないのか」
と疑問のようなそうでないような問いかけに笑って
「恐いと言えば恐いけど、全てのグールがそういうわけではないって知ってるから」
「俺もウタもイトリも人間を殺してるんだぞ」
「直球だな、確かに」
思わず腕を組んでしまえば蓮示君が探るような視線を投げかけてきたので、自己紹介がまだだったかと気付き名乗ることにした。
「苗字で呼ばれるのは会社だけだから普通に柚木って呼んでくれると嬉しい」
「……わかった……」
ほら、なんだ、いい子じゃん。
ふふっと笑い蓮示君の頭を撫でれば蓮示君も驚いたように肩を強張らせたが拒否の姿勢は見せなかったのでもう一度髪を梳くように撫でて
「助けてくれてありがとう」
と笑いかけた。
「お礼にコーヒーご馳走するよ、家においで」
今なら多分ウタ君もいるかもしれないから、どう?と首をかしげれば無言で見下ろされ渋い表情を向けられた。
なんだその顔。
「いや?」
「怖くないのか?」
「蓮示君はいい子と見た。助けてくれたし」
「横取りかもしれないぞ」
「そしたらさっさと食べるでしょ?わざわざ大通りに出る必要はない。目立ってしょうがないし顔バレしたら後々面倒そう」
「ウタに何か聞いたのか?」
質問の意図が掴めず首を傾げていれば両手にあった袋を持ってくれてアパートまで送ってもらうとウタ君が調度戻ってきたところにかち合って、私と蓮示君を見ると不思議そうに首をかしげていたので二人まとめてコーヒーを飲ませることにした。
次へ