伏黒と先輩
我に叫べ(全8話)
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間接的な告白をしたあの日からしばらく経つが彼女が言っていたように確かに誰も何も言わず聞かずで、釘崎辺りが騒ぎそうだと思っていたのでホッとしたのだが。そしてあの日以来、原雲が珍しく出張任務で消えてしまいモヤモヤがつのる。
そんな伏黒に人の表情などに人一倍敏感な同級生は三人での任務に付きながら
「伏黒なんかあった?」
と車の中でつめよってきた。
釘崎は助手席で虎杖は横なのだがそんな二人に「何もない」と答えても引き下がるはずもなく、今日担当の補助監督は微笑ましく笑っている。
味方はいない。
「なあなあ」な虎杖に釘崎の言葉を聞かないものとしていれば任務地につき、荷物は車の中で帳の中に足を踏み入れ呪いを祓っていった。
三級の呪いであったが数がえげつないもので、けれど特に苦戦するものでもなく三人で元の位置に戻れば任務完了である。
遠方であったためそのまま宿に直行すれば、しかし釘崎も虎杖も夕陽が落ちる前なので散歩してくると行ってしまい伏黒は一人ロビーで報告書を作成する。そんな中で不意に
「あれ?」
なんて声が耳には入りパッと顔を上げれば声の主は存外近くにいたようで驚いて見つめてしまった。
いや、なんで、まさか、いや
「原雲先輩…?」
「あれ~?伏黒君一人?」
「虎杖と釘崎は散歩に行きましたが、先輩は」
なんでいるんですか、と続けようとすれば彼女は「ステイ」と示し鳴ってもいないスマホをポケットこら取り出し画面が光っている。バイブ音もないのに、なんで気付いたと見つめていればそのまま彼女は画面をタップし二言三言話すとスマホをポケットにしまいパスパスとスリッパの音を立て近づいてきた。
「スゴいねぇ、私この後任務だけどこの旅館には夜中には戻ってくる」
その後また別の任務地まで移動、今は任務前にひとっぷろ浴びてきたところ。
そう説明する彼女の髪は確かにまだほのかに湿っているしシャンプーの香りが優しくただよってくる。
「(クソッ…ドキドキさせんな……!)」
「どした?」
一人悪態を吐いても意味はなく原雲は伏黒の顔を見つめるとほんのりと微笑んできて
「露天入った?入ってないなら今オススメ。夕陽が沈んでいくのマジ絶景」
「…特に興味はありません」
「え~勿体無い。まあ、いいけどね…っと、連絡だ」
そう彼女はまたまだ鳴りもしない震えもしないスマホを取り出し伏黒の頭をわしゃわしゃと撫で回すと「じゃ」と行ってしまい、虎杖なみに短く刈り込まれている髪とほっそりとした背中を見送って息を吐き出してしまった。
本当に、何がしたいんだ。
しばらく原雲が出ていったロビーの玄関を見つめてから報告書をまとめまたため息一つ。
そうして少しのち、虎杖と釘崎が旅館に戻ってきたので三人でチェックインを済まし通された部屋は経費削減か、男女同室であるが今更慣れた。
食事を済まし部屋にまた戻れば布団が敷かれており、温泉に浸かり浴衣を着ると散歩ではしゃいだらしい二人はぐっすり夢の中である。
そこでふと原雲の言っていた「露天風呂」を思いだし足を向けた。
午前2時を過ぎている。
虎杖と風呂は済ませたが露天は入り口が別らしくそちらに向かえば籠に一人分の服があり人がいるのかと思案する。それでもまあ別に関わるわけではないのでいいだろうと判断した伏黒は扉をあけ露天に足をむけ、小さな照明と明るい月の下の風呂の中で呑気な歌声が響いてきて、身を固くしてしまった。
混浴かよ!
そうして一瞬固まった気配に、そう、原雲が振り返り「あれ?」なんて笑いかけてきた。
乳白色の湯から胸の谷間がチラリと伺い見れて、しかし原雲は少しも気にした風もなく手を振ってきた。
「入りなよ、なに固まってんの?」
なんて軽い言葉に目眩を覚えつつマッハで脱衣場に戻り浴衣に腕を通し早足で部屋に戻って行った。
今ならこのスピードに勝てる人間はいないだろうという素早さであったが、しっかりと思春期の脳には好きな女性の谷間を思いだし刻まれてしまい、その部屋から中庭に回るとベンチに腰掛け大きく深呼吸を繰り返す。
「(あの人は本当に…)」
そうグッと拳を握りしめ、一刻過ごすと部屋に戻るも全く眠れやしなかった。
恥じらいの無い先輩