伏黒と先輩
我に叫べ(全8話)
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「ねえ伏黒君」
「何ですか先輩」
それはうららかな日差しの日であった。
高専の談話室で転がっていた一つ上の先輩を見かけた伏黒へなんとなくそちらに引き寄せられるように、そしてその人一人しかいないということを確認してソファーの背もたれにに引っかかっている足をみてため息を吐き出した。
一つ上の先輩、原雲は、そうして吐かれたため息に顔を上げアイマスクをとると伏黒を見上げ軽く手を振る。テレビの番組は特にこれと言って引かれるモノはないが伏黒は原雲の足を持ち上げるとソファーに座り手を上げたままの先輩を見下ろし眉を寄せてしまう。
呪術師として、というより人として無防備すぎるこの人は本当に五条先生の従妹なのだろうか。
五条先生は当代最強を自負し言い触れているし事実そうなのだから誰も何も言えない。
しかし今ここに転がっている先輩は六眼も無下限も受け継いでいない、ただ呪力量がエグイレベルのまあ別の意味でバケモノで。そんなバケモノは五条先生並みにしっかりとイカれているし本人もケラケラとしている。
伊地知さんは彼女の任務監督になった日は胃薬を流し込んでいるのを知る人は多い。
そんなことをボンヤリと考えながら真っ白で柔らかい素足が器用にも持ち上がり、器用にも折りたたまると身体を起こし伏黒の顔を覗き込んできた。
キョトリとした黒くて大きな瞳は猫を彷彿させ、その瞳を細めてくると口端を持ち上げ軽い笑みを浮かべてきた。この辺りは五条先生によく似ている。似てほしくない。
しかし今はそうではない。
伏黒から距離をとりテレビのザッピングを始めた原雲はふと思い立ったようにまた伏黒に顔を寄せると
「ねえ」
と女子にしては低めの声で首をかしげ尋ねてきたその内容は
「伏黒君って好きな人できたことある?」
というもの。思わず周囲を見渡して誰かが隠れてこの話を知ろうとしているのではと思ってしまったが彼女はフスンと笑い「誰もいないよ」と。
2年で既に1級術師であるのにわりと暇そうに高専にいるのは何故かは知らないが誰かが教えてくれるわけもなく、伏黒は彼女の言葉を繰り返す。
『伏黒君って好きな人できたことある』
なぜその話題をと眉間にシワを寄せながら「なぜです」と答えてしまえば原雲はコトリと首をかしげ言いはなった。
「私、初恋まだでさ、バラちゃん(野薔薇)と真希ちゃんに馬鹿にされたんだよね。特にバラちゃん」
あと狗巻にも。あいつ呪言使って「本音言え」とか言ってきてさ、本音もなにも私嘘ついたことないからちゃんと繰り返して「まだ」って言ったら笑われてさ、酷くない?
「……それで、何で俺に聞くんですか?」
「ちょうど来たから」
この自由さは本当に五条先生と同じでため息がでる。
「で、どう?」
とクルリと瞳を回した彼女に伏黒は息を吐き出すのと同時に「あります」と答え「今まさにいます」とたたみかけるように口にした。
「誰?バラちゃん?真希ちゃん?」
「両方違います」
「え、じゃあ同中の子?」
「同学の人です」
言葉遊びのように互いに紡いでいれば原雲はソファーの上であぐらをかき悩む仕草もなくパッと笑って口にした。
「私?」
と。
思わず息をのみ彼女の瞳を見つめればただとにかく興味があるだけなのか本気で尋ねているのかの真意が掴めず、それでも彼女は身を乗り出して尋ねてきたのは
「当たり?」
という身も蓋もない言葉。
伏黒はそんな原雲の瞳を見つめると彼女の首裏に手を回し引き寄せながら押し倒し
「そうと言ったら」
どうするんですか、と囁いた。
その吐息に笑った原雲の笑顔は無邪気なもので、今の状況をしっかりと理解しているのか心配になってしまう。
「私かあ」
「そうですよ」
原雲は伏黒に組み敷かれている状態でまた「私かあ」と呟くと今まで見た中でも一番華やかに笑うと
「頑張って!」
と肩パンをしてきて笑いながら伏黒の頭を優しくかきまぜてきた。
あなたと言う人は
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