隣の隣の社会人(全14話)
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通勤に使う駅前の居酒屋に入りテーブル席に通されてもらえば、休日の夜ということでそこそこに賑わってもいて七海さんは靴を揃えながら私と向かい合うように座布団に腰を下ろし胡座をかいている。
な、七海さんって胡座かくんですね!想像できなかった!!
ちょっとカウンターを期待してみてもいたが横にいるか隣にいるかの違いなのでプレッシャーの度合いは大して変わらない。
チャンポンしないでセーブして飲もう。
私はどれだけ飲んでも酔わないザルなのだが酒豪だと思われるのは微かに残る乙女心が悲鳴を上げているので本当に注意しよう。
メニュー表を開いた七海さんはビールか焼酎かを悩んでおり、おしぼりを持ってきてくれた店員さんに私は七海さんより先に梅酒を頼み、七海さんも梅酒を頼んでいた。
この居酒屋はよく来るのでメニュー表を見なくてもほぼメニューは覚えている。ついでキュウリの一本漬と鳥串を二人前頼んでから七海さんに向き直る。
う、うわ~!拷問じゃ~!なんて私に七海さんは気にもせず、私は手を拭きながらチラと見つめ、けれど七海さんはメニュー表を見つめている。
ここ入ったことないんかな?
「響さん」
「!はい、なんでしょう!」
背筋をピシッと正し七海さんを見つめれば七海はサングラスを外し内ポケットにしまっている。
見るのは2度目だけど、目の色も美しいな!
もっと色んな知識を持ってきたかったな!としていれば、けれども七海さんは静かに私を見つめ無言の空間になりそうなところで梅酒などの注文した品が運ばれてきてそちらに意識を向けることにした。
とりあえず、二人して梅酒のグラスを持つと
「乾杯」
とグラスを合わせた。いただきます。
緊張に乾いていた喉に梅酒がスルスルと通り落ちて潤してくれて胃に入るのを感じながらキュウリに手を伸ばす。
ここにくるとほぼ必ず頼むので私が同僚と来ると頼む前に目の前に置かれることもある。常連だよ。
パリポリと良い音を奏でるキュウリに七海さんも食い付き
「美味しいですね」
と呟いている。
七海さんがキュウリ食べてる。キュウリの一本漬、食べるんだ、頭から。
謎の感動を覚えていれば私の視線に気付いた七海さんはキュウリを飲み込みながら目を細目「どうか」しましたか、と問いかけてきたので思わずポロリと
「七海さんってキュウリ食べるんですね」
と呟いてしまった。
「食べますよ」
「で、ですよね~……」
「食にそれ程の好き嫌いはありませんので」
平麺はあまり好きではありませんが、と続いたので「へぇ」と答えながら梅酒を飲み干した。
あ!セーブして飲もうってさっき自分に言い聞かせたじゃん!と思い出したのは2杯目を半分を飲んだところで既に3杯目も注文済みである。
そんな私を横目に七海さんも2杯目を何にするか悩んでおり
「あれ?」
なんて声が耳に入った。よく聞き知った声だ。
「響さん」
「新井君」
同僚だ。
新井君は恐らく友人であろう人物と来ており私と私の目の前にいる七海さんをみてよく分かるまでに勘違いをしてくれて
「恋人?」
と笑いかけてきた。
それに私は笑って「違うよ~」恐れ多いよ~と答えながら話をしていれば、メニュー表から顔を上げた七海さんが難しい表情で私と同僚を見つめてきたかと思うと目を細め
「どなたですか?」
そう低く小さく問いかけてきた。なので、と私は
「同僚の新井君~」
と紹介し、新井君には
「ご近所さんの七海さん~」
と紹介した。
二人は軽く頭を下げあうと同僚君とその友人は案内された席(後ろかよ)に行ってしまい、七海さんの眉間に微かにシワが寄っている。何で?
「な、七海さん?」
「すいません、何でもありません」
推しがそう言うならそうなんだ、深く突っ込むのはやめようと調度届いた3杯目をグイッと傾けた。
セーブしようかって?キレイに忘れてましたよ!
酒豪