隣の隣の社会人(全14話)
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ドアを開けながら七海さんは私を振り返りジッと見つめてきたかと思うと小さく首をかしげ
「ご近所でしたか」
と呟き「おやすみなさい」と言うとドアの向こうに消えて行ってしまった。
なので私も急いで自宅に入ればオートロックのため鍵は自動でかかり玄関のタタキにしゃがみこんでとうとう頭を抱え込んでしまった。
いくら落ち着けと思い込んでも落ち着けるわけないしまあ出来ることならもっとちゃんと色んな方のあれやこれやを見て蓄えてから来たかった(?)と思っても今更だ。だって誰がトリップなんて予想できるよ、できるわけねえよ。
日付けも日付けだし曜日も曜日だし時間も時間だと立ち上がりパンプスを揃えてから大きく息を吐き出した。
そうしながらも日々の習慣をなぞり手を洗いうがいをしメイクを落としシャワーを浴びてからベッドに倒れこんでアラームをセットする。
もう夜の1時だよ。明日は会議だよ。眠いよ、寝よう。
色んなことが凝縮された1時間ほどであったがとにかく明日からはまた日常に戻らなければいけないので電気を消し布団を頭からかぶり、気付いたら朝だった。
あんな体験をしたのに健やかに眠る私は中々に神経が図太いようで、朝、目を覚ましたら、私にとって夜中のことは全て夢だった、ということになっていた。本当に中々だよ。
適当に朝食を済ませスーツの袖に腕を通し鞄を持つと部屋を出れば私の部屋の扉の横にいたのは
「ヒッ…!?七海さん?!」
「響さん、おはようございます」
「よく眠れましたか」という問いかけに私はなんとか頷いて七海さんは「そうですか」と静かに呟くと
「仕事でしょう」
遅刻しますよと背を押され昨晩のように七海さんとエレベーターに乗りエントランスをくぐる。
エレベーターに乗る前も乗ってからも降りてからも七海さんはずっと無言であり、何故か近くの駅まで肩を並べて歩いている。なんで!?
いつもと変わらぬ朝の景色であるが横に推しがいるということだけで私のHPはゴリゴリに削られ赤く点滅しているし「勘弁して下さい」とアラームが鳴り響いている。
ICチップで改札を抜けて電車に乗り込めば朝のラッシュということもあり奥に押し込まれるもいつもの事なので流されてつり革に掴まろうとすれば突然誰かに腕を掴まれて引き寄せられた。
新手の痴漢であろうか。
違った。
七海さんが奥に押し込まれた私を引き寄せて扉の前に守るように立たされて、けれども七海さんは特に何かを言うわけでもなく小さな窓から流れる景色を眺めている。
滾る心臓に、直ぐそこにいる七海さんをチラチラと観察していれば七海さんは私に視線を移し
「何か」
と。
それに私はブンブンと首を振り何でもないとぎこちなく伝え視線を床に移す。
揺れる電車、ラッシュの車内、通勤する学生や社会人。
七海さんは手に荷物もなく立っているがそれでもやり手のリーマンに見えてしまう。確かそんなところを観たような観てないような……覚えてない……。
各駅毎に乗客は降りていきそこから更に行った所で私も電車を降りれば当然のように七海さんも降りてきて。
七海さんは私の横を歩きながら視線をチラと私に向けつつ静かに私の勤める会社まで送られてしまった。
七海さんを見上げれば七海さんは私を見下ろしていて、それはもう静かな声で
「もう大丈夫ですね」
と言うと私が会社のエントランスを抜けるまで見送りそのまま静かに行ってしまった。
護衛でもされていたのだろうか、昨日の今日でとして。
己の部署まで行くと私と七海さんを見かけたらしい女性社員に問い詰められそうになったから私は「ステイ!」と言い放ち、会議の準備をするととにかく仕事に専念することにした。が。まって?何かいるよ???
今まで見えなかったのに