隣の隣の社会人(全14話)
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流しのタクシーにでも乗るのだろうかとしていれば、どうやら違うらしく黒塗りの車がスッと私の座るベンチの背後に止まり、七海さんと並んで座るというご褒美拷問を受けていた私はまた七海さんに手を引かれ立ち上がる。
さっきまで産まれたての小鹿状態であったのに今はもうピンピンであるが手を握られ引かれ歩くとは。
ちょっと白眼を剥いて現実逃避をしたくなったがなんとか頑張ってその黒塗りの車に乗せられた。
七海さんは私が乗るためにドアを開けてくれ、私が乗り込むと反対のドアから七海さんが横に座りシートベルトをしめている。慌てて私もそれに倣うと運転席にいる眼鏡の如何にも苦労していそうな男性(観たことあるけど名前なんだっけ)に住所を聞かれ鞄から運転免許証を取り出した。
ご都合主義だろうが、私の家はあるようだ。
車はゆったりと動きだし七海さんはスーツの襟を正しながら私へと視線を移し静かに問いかけてきた。
「お名前を伺っても?」
「、響アキラです」
「響さん、私は七海健人と申します」
あー!あー!本物に違いなかった!!
そうパニクりそうになる私はそれでも努めて冷静に「七海さん」と繰り返し次に問われたのは当然のこと。
「響さんは、あのようなものをいつから視認していましたか」
と。私はグルグル考えながらサングラス越しに私を見つめてきている七海さんに顔を向け、いっぱいいっぱいになりながら
「さ、さきほど初めて…?」
と呟いた。
車は家に近付いている。
そして七海さんは私の「さきほど初めて」の言葉に悩むように考えながら「そうですか」と呟き腕を組むが思い直したように手を膝に置き私を見下ろしてきた。
「…随分と離れた場所に住んでいますね」
七海さんの手にはいつの間にか私の免許証があり走る車は都内から少し離れたマンションの前に停車した。
「ここでお間違いありませんか?」
という眼鏡の人に「はい」と頷き七海さんも車を降りた。
なんだ?部屋まで見送ってくれるのか?ありがとうございます!!
心の中で盛大に感謝している私に七海さんは免許証を返してくれて、眼鏡の人の運転する車は行ってしまった。
え、七海さん?
困惑する私の背を押し歩き始めたのでエントランスでポストを確認しパスコード式のエントランスを抜けエレベーターに乗り込んでも彼は静かに着いてくる。
オモチカエリでもするのだろうか。私の部屋に?んなバカな。
階数ボタンを押さない七海さんだがエレベーターはそのまま私の住む階までサーッと昇りエレベーター内で冷や汗を滲ませながら呼吸を意識して抑え込んでいればエレベーターは止まりそのまま私と七海さんはその箱を降りた。そして歩き始める。
ええ、なんで……?
私は手前の扉の前で止まり鍵を出していれば七海さんは1つ空けて角部屋の扉の前に止まり鍵を差し込んでいる。
軽い力でキーシリンダーは回り私はその場で頭を抱え込んでしまいそうになる。
部屋が1つ空けた隣なんて聞いてませんよ!支部先生!!
助けなんかない