隣の隣の社会人(全14話)
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腐の友人から呪術廻戦というマンガを勧められ、私の好きそうなヤツがいるぜ、読めよ、と意味深に伝えられ読んでみたらガッツリ両面宿儺に抱かれてしまった。
後日、友人に宿儺様に抱かれた報告をしたら、今度は友人の家でアニメを見せられてそして改めて宿儺様に抱かれたのだがもっと衝撃的なことが起こってしまった。
私はテレビに釘付けになる。
画面の中ではカッチリとしたスーツを着た金髪の男がネクタイをスルリとほどき
『十劃呪法、瓦落瓦落!!』
と壁をぶん殴り、瓦礫に呪力というものが走り流れそれと同じように私の脳内にも走り回った。
オタクとしての反応が。
「ゆ、友人友人!あ、あの人の名前、何でしたっけ?」
「七三の方?青い方?」
「七三!」
「七海健人だよ、通称ナナミン」
「ナナミン!」
凄い!可愛い!格好いい!好き!!
宿儺の女から一気に七海の女になった私はマンガの続きを読むべくフラフラと夜道を歩いていたら真っ白い光りに包まれてしまい
「うぐっ!?」
と目を閉じ開くとそこは、呪術廻戦の世界でした!なぜかって?なぜ分かったかって?そりゃ分かるよ。
目の前にマンガやアニメで見せられた呪いとかいうのによく似たヤツがいるからだよ。
呪いらしきものは何とも言い難い雄叫びを上げ真っ直ぐに私に向かって突進してきて、私の口からは「ヒエ…」という情けない声が漏れてしまう。
マンガ読んでアニメ観てマンガで復習しようとしていたのに何でこんな積みゲーみたいなことになってんの?恐いを通り越して意味が分からない。理解が追い付かない。
硬直している私に呪いはスピードを上げて突進してきて、私は自省の句を頭の中で読んでしまいそうになる。瞬間である。
私の背後から人が現れ肩を掴まれると
「そのまま私の後ろへ」
なんて随分と静かでいて有無を言わせぬ声が耳に入りその人は呪いに向かって、大鉈を振り下ろした。
私は知っている。その声も、姿も、術式も。
七対三で分割し強制的に弱点、急所を作り出す計算されたその術式を扱う人物は。
カッチリ決められた金髪に、スーツの下にあっても分かる鍛え抜かれた筋肉に長い足とベージュの上着、そして垣間見えた横顔は
「な、ななみん……?」
私の小さな呟きは呪いの叫び声に書き消されてしまい、じゅくじゅくと消えていく呪いに七海さんは私を振り返り大鉈を背中のホルスターに納めながら私に近寄り視線を合わすよう屈んで、膝をついて……ついて?
「大丈夫ですか?」
「ひ、ひゃい…」
いつの間にか私はその場に座り込んでしまっていたらしく七海さんはサングラスを押し上げながら「失礼」と私の身体を観察し、怪我がないと見ると手を差しのべられた。
に、握れと?!その、尊い手を?私が?!握っていいの?!!?!
「大丈夫ですか」の言葉にも差し出された手にもつい今先程の呪いへの微妙な恐怖心にもついていけない、私の頭がパンク状態で硬直してしまっている。動けない。
七海さんはそんな私にまだ呪いへ恐怖していると勘違いしてくれたらしく(まあ正しいが)もう一度
「失礼」
と言うや否や背中と膝裏に腕が伸びてきて、私が「は?」なんて声を出す間もなく抱き上げられた。
プリンセスホールドされたと気付く頃には私は街頭の下のベンチに下ろされ七海さんは私の前に膝をつきもう一度、先程よりも優しい声で、静かに静かに
「大丈夫ですか」
と。
ようやく事態に追い付くことができた私は鞄を持つ手に力を入れ私よりも下にある七海さんの視線を受け止めながらも必死に頷いて
「む、無傷です!」
と答えることができ、七海さんは「そうですか」良かったと立ち上がった。
背たっか!足、なっが!声イケメン!んあーー!好きいいいい!!!
トリップして僅か10分もせず推しに助けられるってどんな奇跡と確率アップガチャか?と感動していればいつの間にか電話をしていた七海さんはまた私を見下ろし
「自宅まで送りましょう」
話がありますので、の言葉に私は拒否なんてできなかった。出来るはずねえよな!?
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