家入同中一般人と五条
タピる男とタピらぬ女(全8話)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
朝から空の様子が少し怪しかったため傘を片手に会社に向かい仕事をし、お昼休憩の頃にはザアザアと雨が降りだした。
今日はお弁当を作っていなかったので外のイタリアンで済まそうと思っていたがそれはやめて同僚と社食に向かった。
そのまま色々と話しながら食事を済ませ己のデスクに戻るって早めに仕事を終わらせようと手を動かした。そのおかげか飛び入りの仕事もなく定時よりも早めに上がれた私は酷いどしゃ降りの雨の中足を踏み出したのだが
「(これは足元びしょ濡れだな)」
そうポツリと思いながらタクシーにでも乗って帰ろうかと思案していれば本屋の店先の廂に立って壊れた傘を片手にため息を吐いている黒髪がツンツンにハネ上がっている男の子を見つけてしまい何となく近づいてしまった。
「ねぇ君」
「!……何ですか?」
ちょっと躊躇いがちに声をかければ男の子は不審げに私を見、警戒されながらも返事をくれ、私は男の子の横に立って傘を差し出した。
「傘、壊れちゃったんだよね?よかったら使って」
「は?」
「私は予備の傘あるしタクシーで帰るつもりだから」
よかったら。
そう笑いかければ男の子は傘と私を交互に見やり眉を寄せながら悩んでいる。まあ、それは普通の反応だろう。
面識のない女からいきなり声をかけられ傘を貸してやるなんて言われれば、そんなの私だって少しは考えてしまうだろう。何より今後会うことが無さそうな人に借りを作るだなんて私には無理かもしれない。
傘を受け取らず私のことを見つめてきている男の子にさてどうしようかとしながらも鞄から折り畳みの傘を取り出したところで不意に人の影が私たちの前にきて。
「恵~、何してんの?」
「五条先生…」
「え?五、条?」
「弦ちゃん?」
そう、大きな傘に片手にタピオカをもつ、今日はサングラスではない悟さんが笑ってこちらを見下ろしてきていて。
初めての飲みの時とスイパラデートでの僅かな情報で教師をしていることは教えてもらったのだが、この恵という男の子の先生発言に、本当に学校の教師だったのかと頷いてしまったのは私だけで。
「何々、二人とも知り合い?」
そんな悟さんの言葉に私と恵君は首を振り、私は恵君の傘が壊れているらしく私の傘を貸そうとしていたことを説明し悟さんは恵君のことを見ると
「ウケるねぇ~」
なんて笑いタピオカをすすっている。
知り合い。しかもそれなりに親しそうな相手の傘が壊れているのを「ウケる」と称した悟さんに、これが硝子ちゃんの言っていたクズの片鱗なのだろうかと考えてしまい、悟さんも廂に入ると私の傘を恵君に渡し、悟さんは私の肩を引き寄せるとニコリと笑い
「弦ちゃんは僕と相合い傘ね。恵はその傘使って。弦ちゃんには僕から返せるから気にするな!」
と。
恵君は、まだ何か言おうとしていたがそれ以上は何も言わず私に軽く頭を下げ
「ありがとうございます」
と言われたため笑って恵君と別れた。
背が高い悟さんの傘の位置は中々に高くほぼ濡れてしまうと察した私は調度近くに止まっていたタクシーを見つけタピっている悟さんを見上げると
「私はタクシーで帰るから」
そう伝えれば悟さんはストローから口を離し私を見下ろしてきて、と言っても黒い布で目を隠しているのだがそれはもう不服そうに、僕との相合い傘嫌なの?なんで言われてしまい私はそれを否定した。
「悟さんの身長だと私に傘の意味がないから…」
「あー、なるほど」
納得してくれた悟さんに笑いかけタクシーの窓をノックすればすぐドアが開き、乗り込む所まで悟さんは私が濡れないように傘を傾けてくれて、そして思い立ったように
「そうだ」
と口を開き何だろうと見上げれば本の一瞬だったけれど私の口に何かがかすめポカンとしていればタクシーに押し込まれドアがしまり、タクシーの運転手も何かあったのかと不思議そうにしていたが私はドキドキしながらも自宅の住所を告げ唇に指を乗せた。
キス?