狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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真希ちゃんとの女子会から少し経った頃、私とわんちゃんは相変わらずの距離感でいられているのかと問われてしまうと、それは「否」としか答えられないでいる。
そう、わんちゃんを避けている私がいるのだ。
わんちゃんはそんな私を見かける度に声をかけてこようとしてきているのだが私はそれをさせず素早く視線を外し、硝子さんに教えてもらった誰にも見つからないヤニスポットで煙草をふかしている。
最近、1日に吸う本数が増えたな。
同学年の秤もいないし、私が授業をバックレれば生徒は一人もいなくなるのでバックレる訳にはいかないし、仕方無し、と言ったらお前学校に何しに来てんだよとか云われそうだが許してほしい。
教員は今任務に行ってしまっているため3年の教室で1人プリントに向き合っていれば小さく開けた窓の隙間から風が入り込みサクラの花びらが散っていく。
それをボンヤリ見ながら机に突っ伏していれば授業終了の鐘が鳴るも私は動こうともせず息を吐き出してしまった。
どうせこの後も全部自習なのだからもうどっかでヤニチャージでもするかとノロノロと動きだしプリント片手に立ち上がった。そして教室を出た次の瞬間てある。
「ツナマヨ!!」
なんて、それはもう多く声が鼓膜を揺るがし私の背がピャッと伸びてしまう。誰かなんて聞く必要もない。
「……わんちゃん……」
「こんぶ!明太子!!」
もう一度声を出したわんちゃんは小走りで駆け寄ってきて私が逃げる間を作らせず手を伸ばしギュウと抱き締められてしまった。
わんちゃんの肩越しに真希ちゃんとパンダ君と目が合ったがパンダ君はニヤニヤと、真希ちゃんは口パクで
『向き合ってやれ』
と残してから背を向け行ってしまい廊下には私とわんちゃんだけが取り残されてしまう。
抱き締められているその身体に、私をの速る鼓動が響いてきて私の心臓もコトコトと速まっていく。
これが、今更の、私の気持ちだ。
もう、無視は出来ないんだろうな。
「初音先輩」
そう耳元で呟かれ、温かな、そして緊張したような声色に笑ってしまい肩を揺らせばわんちゃんは私の身体を抱き締めたままであるが私の顔を覗きこみ私にだけ聴こえるように、初めて、彼の、狗巻棘の気持ちを受け止めた。
「…好きだ…初音先輩が好きなんだ……」
まるで泣いてしまいそうな程の囁き声に私はわんちゃん、いや、棘の粉とを見つめゆるりと笑い目を細める。
「知ってたよ、うん、知ってた」
「……」
「最初は、ただ話せるだけの間柄だっただろうけど、棘が私のことを好きになってくれたのはそれだけじゃないでしょ?」
「うん…初めて会った時から好きだった…聞いて、初めて見た時も、話した時も、煙草を吸う仕草も、」
全部全部好きだから、だから
「キスーーしてもいい?」
私が棘に言った「キスは大切な人とするのが一番」と言うそれに、そして顔を真っ赤にしながらも泣きそうなその表情を見た私は棘のネックウォーマーをずらし、薄く色付いた棘の唇を見つめ笑う。
「いいよ、」
棘、まで言う間もなく口付けられた柔らかな感触と棘の髪から陽だまりのような匂いをかぎ、棘の閉ざされた瞳に笑って首の後ろに手を回すと私からも唇を押し付けて
「付き合ってください」
と言う『呪言』に私は笑って頷いてしまった。