狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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あの日あの後、結果的に飲酒喫煙はやめられないけど援交はしないでくれとキツク咎められ、それに了承した私だが折角お洒落したのだから普通に遊びに行こうと思い、その旨を伝えればそれはそれは大きな声で
「俺も行く!」
と、わんちゃんは手を上げてきた。それは別に問題無いのでわんちゃんが支度をする間に私は食器を下げ、談話室には真希ちゃん達がまだいて、2人して「ご飯美味しかった」と言ってくれた。口に合ったようで嬉しい。
「で、どうなった?」
「ん?あぁ、わんちゃんと遊びに行くことになった」
なんだよやるじゃねぇか棘、なんて真希ちゃんの顔に書いてありそれ以外には?と問いかけてきたその視線に笑って
「その話しはやんわりとしかしてないよ」
そう伝えた。そこではたと思いつき、食後のお茶を楽しむ2人を見下ろし、そして見上げられ
「2人も一緒に行かない?桜でも見よう」
そう誘い掛けたのだが真希ちゃんは手をヒラヒラと振り憂太君も苦笑いを浮かべ
「おかか!!」
という声が響き渡った。
わんちゃんだ。というか「おかか」って、花見をするなら大勢の方が楽しかろうに。しかし真希ちゃんと憂太君の顔には「付き合えません」とも書いてあり、わんちゃんは私の手を引いて歩き出した。
「わんちゃん髪セットしたんだ、格好いいよ~」
なんて笑いかければ、わんちゃんは本の少し耳の先端を赤くして、口元を覆い隠しているウォーマーの下でモゴモゴ呟いたのは
「初音先輩も、綺麗」
というもので、思わず心臓がトコトコと鳴っていく。そして校門近くにいた伊地知さんに最寄り駅まで送ってもらうことにした。
学校の桜も綺麗だけど山の中から向こうに見える桜も綺麗だね、なんてわんちゃんと伊地知さんに声をかければ二人して頷いてくれて
「お二人は、その」
「デートです」
「しゃけ」
ええ、と驚いた伊地知さんにもう一度笑いかけると
「うっそぉ~」
と口を開くもその手はまだわんちゃんに繋がれたままであって、それでも私はその手を払いはしない。暖かい人の手は安心する。
わんちゃんよりかは幾分か身長は低いけれど今こうして繋がれているその手は触れられただけで一発で"男の子"だと感じさせられてしまう。
大きくて、少し筋張っていて、硬くて、でも優しくて。
「(そうか、わんちゃんはこうして安心したのか)」
そうポツリと胸の中で呟いた。
黙りこんだ私の手を握りしめていたわんちゃんは「いくら?」と、手を繋ぐの嫌だった?と心配気に私の顔を覗きこみ、私はわんちゃんの瞳を見つめ返しヘラリと笑う。
「違うよ、嫌とかじゃなくてね、うーん……」
そうして悩んだ私はわんちゃんの手を握り返してから
「こうして人と触れあったことは無いけど」
わんちゃんの手は安心するねえと呟いて、わんちゃんはパッと顔をそらしたがその手は繋いだままであり車を運転している伊地知さんの顔には「青春ですね」と書いてあるのが後部座席からもよく分かる。バックミラーで見えるんだよ。
「すじこ」
「そうだね、川沿い歩くか」
「しゃけしゃけ!」
なんて声も軽く上づっていて思わず吹き出して笑ってしまった。
「…おかか」
「ごめんごめん、可愛くて」
「おかか!」
「うん、あはは!楽しもう!デートだデート!」
川沿いの桜回廊を歩いたついでに写真撮ってお土産も選ぼうかと言えばそれはもう元気な「しゃけ!」が車内に響き渡り伊地知さんは最寄り駅まで送ってくれた。さて、楽しもうかとわんちゃんに笑いかけ手を繋いだまま歩き始めればわんちゃんはその手をご機嫌に揺らしてきてさらに笑ってしまったのは仕方がないだろう。