狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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男を引っかけに行こうとした朝、初めてわんちゃんの術式をくらい動けなかったのだがわんちゃんが走って行ってしまったその背を見送ってたっぷりと間をとると、真希ちゃんがそれはもう大きく口を開け爆笑したのだ。
「初音の発言も大概だったけど棘もやるじゃねぇか」
なあ憂太、なんて言っているが憂太君は赤い顔のまましどろもどろとしており。
5分程硬直して動けずにいたのだがようやく硬直は解け、肩に下げていた鞄を真希ちゃんの座っているソファーに投げ置きしゃがみこんでしまった。パンツ見えるとか言うな。まあ、勝負下着だから見てくれてもいいけど。
そうして思わず口から出た言葉はそれはもう気の抜けた私の
「なんなの~?」
という大きな疑問。
それに対しやはり真希ちゃんは大きな声で笑い、憂太君がまだ顔を赤くしたままこちらを見ており
「狗巻君に…声をかけた方がいいですよ…?」
なんて躊躇いながらも呟いて私も困り顔で憂太君を見上げてしまった。
「なんでぇ~?」
「え、いや、だって、その、狗巻君……」
「はーい憂太そこまで」
「真希ちゃんまでなんで、教えてよ」
そう問いかけても真希ちゃんは笑ったままで、私は私で混乱しながらも立ち上がり口にしたのは2人が言いたかった事であろうそれ。
「わんちゃんが私に好意を示してきているのは知っているけど」
それってただ単に私には術式が効かないから普通に話せて嬉しい~って好意でしょう?好き、という事への差ってのは中々難しいけどわんちゃんの好意は恋愛関係のものではないと、私はそう思ってる。
「それにもし恋愛の好意だとしたら中学の時にもっと色々言ってくると思うんだけど」
「同中?」
「うん、そう」
「ふーん、で?」
「で、」
中学の時から援交してたしわんちゃんも知ってる。まあ、嫌な顔はされたけどそれって簡単に裾を開く女ってどうよ、って事でしょ?煙草に関しては何度か「吸うな」って言ってきたけど援交に関しては何も言わなかったから
「から?」
「恋愛だとは思えない」
「「………」」
真希ちゃんも憂太君もそれはもう微妙な表情で私を見てきてくれて、6年間理香ちゃんと過ごしてきた憂太君は私の肩をぽんと叩き
「狗巻君の部屋、教えましょうか?」
と恐る恐る問いかけられた。
なんかもう今は出掛ける気が失せてしまっているので仕方なしとソファーに投げ置いた鞄を持って憂太君にわんちゃんの部屋まで案内してもらうことにした。まあ、確かに、少し話し合った方がいいだろう。今後のために。
しかしそこで、はた、と思い出した私はキッチンに立って3人分のオムレツを作りトーストを焼きココアをトレイに乗せ憂太君の案内でわんちゃんの部屋を訪れた。
憂太君は手が塞がっている私の代わりにわんちゃんの部屋の扉をノックしてくれて
「狗巻君、乙骨だけど」
と声をかけ、数秒してわんちゃんが部屋の扉を開けて顔をだし私を見ると驚いてはいたが扉を閉める様なことはせず、憂太君は「それじゃあ」と行ってしまった。その背を見送った私は困惑気味のわんちゃんにオムレツなどのご飯が乗ったトレイを差し出して
「入ってもいい?」
と首をかしげた。
軽く巻いた髪と耳たぶのピアスが揺れる。
わんちゃんはしばらく黙っていたが鼻の付け根をくしゃくしゃにしながらも部屋の中へと通してくれて、ラグの敷いてある床の机の前に座り、わんちゃんに習って私も向かい合わせに腰を下ろした。
「私が作ったの、多分、美味しいはず」
「……うん」
そうして手を合わせてから食べ始めたわんちゃんを見つめながら、さて何と話を始めるかを考えていればサクッと食べ終えたわんちゃんが私のことを見つめてきて
「…行かないの?」
と。私はそれにキョトンとすると苦笑いを浮かべしまい
「わんちゃんの嫌がることはしたくないから」
だから、もう行かない。
だから、仲直りしようと聞けばわんちゃんは静かに頷いてくれた。