狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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桜も散り終わる5月始め。
3ヶ月振りに高専へと戻ってきた私の背に、一週間振りに、そして機械越しではない久しい声に振り返り顔を綻ばせてしまった。
「初音先輩!」
「わんちゃん!」
そのまま物凄い速さで駆け寄ってきたわんちゃんに手を伸ばし抱き締めてあげれば、腕の中でわんちゃんはピャッと身体を震わせたが躊躇いがちに抱き返してくれて。
「わー!元気そうだ!背も伸びたね!でもあんまり変わった様子もない気がするけど」
「明太子!」
そうして再会を喜んでいた私たちに、いや、わんちゃんに声をかけたのは身長の高い眼鏡の女の子とパンダがいて
「おい棘、そいつ誰だ?」
と。
「ん?誰?わんちゃん」
「「わんちゃん??」」
そう私のわんちゃんへのあだ名に声を上げて笑った一人と一体にわんちゃんは
「ツナ!」
と手をパタパタと動かし、女の子とパンダは自己紹介をしてくれた。なので私も私で
「露草初音」
初音って呼んでね、真希ちゃん、パンダ君、と。
「ああ、よろしくな」
「よろしく初音先輩」
そう笑顔をくれた。
「で、わんちゃん。今度は3年間よろしくね、もう何度も言うけど会えて嬉しいな」
「しゃけ!ツナマヨ、たらこ!」
これは「俺も同じだ」という事だろうと頷き
「入学してから少し経ったけど他の生徒とは会った?」
「おかか」
会ってない人もいるという事だろう。身振り手振りで教えてくれるのは、おにぎりの具で話しかけているのは私以外の人がいるからであろう、なので真希ちゃんとパンダ君に軽く手を振ってわんちゃんの腕を引くと敷地内にある大きな桜の木の下に連れていき
「よし、ここなら二人きりだ、おにぎりの具以外も話せる」
「初音先輩!」
そう顔を綻ばせたわんちゃんは私の手を握りしめ目を細めるとくると一週間話せなかったことから始まり私の呪術師としての階級を聞いてきて、私の術式の精度についても尋ねてきて。なので、と私は笑ってその質問に返し何度も電話で話していたように改めて説明するのは
私は主に『呪いよりは呪詛師の術式を解き、別場所でその呪詛師の術式が解けたのを確認してもらい呪詛師をどうにかするサポートが多い』と説明してみせた。
「まあ単独任務もできるし呪いも呪詛師も私からしたらただのモブだね」
あはは、と笑えばわんちゃんは私の顔を見つめてきて
「怪我はしてない?」
と私の身の安全を尋ねてきて。
「驚くほど無傷、怪我もしてないよーって、」
メールでも電話でも話してるじゃんと言えばわんちゃんは眉尻を下げ「直接聞きたくて」と言い淀み、私はそれに笑ってわんちゃんの頭を撫でくり回してしまった。
私に撫でられて嬉しそうだがそれでも嫌、というより不服そうにいるわんちゃんは控えめに言わなくても可愛い。
そうしていればわんちゃんは私の手を頭から離させるように手首を掴み
「おかか!」
と微か頬を染め怒ってみせて、でも私はその手をぶんぶん振り笑ってみせる。
「わんちゃん可愛いねぇ」
髪型も新しくしてみせたんだと言えばわんちゃんは小さく頷いて似合うかと問いかけてきた。なのでもう一度頭を撫でながら
「似合う似合う!可愛い可愛い!」
「可愛い……」
思春期の男の子に可愛いは無いだろうが可愛いものは可愛いんだから仕方無いだろう。
「それじゃあ改めてよろしくね、わんちゃん」
「よろしく!」
そう言いあった。