狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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卒業式、その日だけは普通にしていてほしいと言われた私はスカートを膝丈にし、ソックスにし、ボタンもリボンも締め、赤い髪はそのままだったが卒業式に出席した。
泣いたり笑ったり私のようにどうでもよさそうにした人がいたりで中々に賑やかな式を終えた生徒達が下校しているところで校門前には私の不良仲間がたむろしていた。
「初音~やっと卒業かぁ」
「留年じゃなくてよかったな」
なんてゲラゲラ笑っており下駄箱にいる生徒や保護者たちはどうしたものかと眉間にシワを寄せていて
「初音先輩!」
とここ一年でよく聞いていた声に私は振り返った。
わんちゃんと、この学校での私の取り巻きだ。
取り巻きたちはピッシリと整列し「卒業おめでとうございます」と頭を下げ私は笑って手を振る。
あっち行けという動作でもある。そうすれば取り巻き後輩はもう一度大きく頭を下げわんちゃんがパタパタと駆け寄ってきてくれて
「これ……」
とカーネーションを差し出してきた。確か花言葉は『尊敬』『感謝』そして『気品』。
「わんちゃん……!」
思わずそう呟けば、わんちゃん発言に不良仲間が「へえ」こいつがという顔をし、私はわんちゃんからカーネーションを受け取った。
「嬉しい、ありがとう」
「いくら」
「あはは、うん、そうだね!」
わんちゃんは基本二人きり以外ではおにぎりの具しか口にしないため慣れない人達には難解であろうが私は心の内を読めるため何度も言うが関係ない。
わんちゃんの頭を撫で笑えば耳を赤くしたわんちゃんにキョトリとしてしまうもすぐ理解し本の少しドキリとしてしまった。本当に、嬉しかったから。
さすがに涙は出てはこないが感謝の言葉や懐かしい出会いのことを軽く話してから私は不良仲間も追いやりわんちゃんと校門で会話を楽しんだ。
同じ学校に進学するが一年は会えなくなるため喋り納めと言わんばかりにわんちゃんは休むことなく話しかけてきて、そしてわんちゃんの背後から恐る恐ると(多分同じクラスだった)生徒が携帯片手に近寄ってきて
「あの、露草さん…メアド、交換してくれませんか?」
と。
思わず何で私と?と疑問に思っていれば、どうやら疎ましく思っていただけの人物は全員ではなかった、という事で。それが何だが嬉しかった。
アドレスを交換している間わんちゃんはずっと私の横に立ち、チラチラと私と相手とを見やり離れる気配もなく、7、8人程と交換を終えるとわんちゃんは私の手を引いて
「すじこ!」
と声をあげた。私の卒業祝いにケーキとかパフェを奢りたいという事だろう。奢られる程にみあった付き合いはしていたと取っていいのだろうか、いいのだろう。
「メールするね!」
と笑いかけてきた同級生に手を振ると私の空いた手をわんちゃんは更に強く握り締めてきて楽し気に腕を揺らし酷くご機嫌だ。
そのまま学校から程よく離れた茶店に入店すれば似たような客で溢れかえっており、けれど最後の一スペースに二人して落ち着くとホットココアを頼みわんちゃんは更に話しかけてくる。それはもうたくさん。
「それから」
を繰り返すわんちゃんに私は笑って「落ち着け」と言えばわんちゃんは一瞬口を閉ざし恐る恐ると私の瞳を覗きこみ、わんちゃんの言いたいことを理解する。
「うるさいとかそう言うことじゃないよ」
話す機会なら電話があるでしょう?そう首をかしげてみせればわんちゃんはパッと顔を輝かせ、毎日電話をかけてもいいのかと問いかけてきたので私はとうとう声を上げて笑ってしまった。
店内は賑やかだったので誰もこちらを見ない。私はそのわんちゃんに目を向け笑みを浮かべると
「いいよ」
と答え、わんちゃんは嬉しそうに目を輝かせるも不意に表情を暗くし「怪我は」しないようにと、小さく小さく呟いた。