狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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中3のGW前に中学最大のイベント修学旅行があるのだがそんなものに行く気もなくそれでもプリントを持ってきたクラス委員長には
「来てください」
とビビられながら誘われて服を着崩した私は眉間にシワを寄せため息を吐き出してしまった。
私が行ったところでどうせ1人なのだから行かなくてもいいだろう。そんなことをたまたま公園で会ったわんちゃんに話していればわんちゃんはサムズアップをしてみせて
「お土産は生八つ橋が欲しい」
なんて主旨の事を言われ私は煙草の灰を落としてしまった。
私とわんちゃんの交流は思っているよりずっとあるのだ。
あの日の校舎裏からわんちゃんは私を見つけると周囲に花を咲かせながら近づいて話しかけてくれるし私が不良仲間とたむろしていれば、それでも嬉しそうに駆け寄ってきてくれる。文字通りわんちゃんだ。けれどわんちゃんは私以外の人間に「わんちゃん」呼ばわりされるのが非常に嫌なようで、わんちゃんはあの蛇の目の紋様の入った口をさらし
「『家に帰れ』」
と口にする。そうすると私の取り巻きは混乱しながら口で色々言いつつもぎこちない足取りで行ってしまいわんちゃんは私の手を握りしめる。
とても華奢だと思っていたのだがしかしそれは男の子の手であって。
私はわんちゃんの勧めで修学旅行に行くことにした。
定番の京都奈良への旅は割りと楽しめた。
クラスに馴染めないでいた子と班を組まされそこにクラス委員長が入り、彼女、もしくわ彼らは私の存在にビクビクしていたので本の少しだけ哀れに思ってしまった。そこで新たに出会ったのが全身を黒で固めた銀髪にサングラスをかけた驚くほど背が高い男の人。口元に笑みを浮かべているがとても軽薄に見える。
グループ行動で奈良の鹿にセンベイを与えていたらその男が近寄ってきて嫌みなほどに高い位置から私を見下ろしてくると「あは」と笑い「凄い呪力を持ってるね」と口にしたのだ。
「呪力?」
つーか、あんた誰と問いかければ男は笑ったまま
「東京都立呪術高等専門学校の一年を担当している五条悟」
と名乗り私は口の中で校名と男、五条悟の言葉を繰り返し悟はニコニコしたまま私の目にかかっている髪を払いどけそして驚いたように口をつぐんだ。
「……君の術式は、?」
今度は術式かよとしていれば悟は片手を上げ私を見下ろしその手を差し出してきた。
「握手、できる?」
なんて至極真面目な口調のそれに私は眉を寄せながら悟の手に触れ握りしめた。一体なんだと言うのだ。そんな私に対し悟は多分だが大きく目を見開き
「それが君の術式か。ヤバいねぇ~、ウケる」
と笑ったのだ。
今まで接してきたどの人間よりも何倍も怪しげなそいつ、悟の手を離すと悟を見上げ首をかしげてみせた。
「名前、聞いてもいい?」
「……露草初音」
「初音か!よろしくね!それで」
高校の進路は決まってる?と首をかしげてきた悟に私は首を振り
「パトロンの愛人枠がいくつかある」
と包み隠さず口にした。こいつには恐らくだが私と同様に嘘に気付かれてしまうと思ったからだ。そんな私の返答に悟は笑って手を合わせると
「よかったら」
うちの学校においでよ~!寮生活になるけどちゃんとした衣食住には困らないし"あること"をすればお金だって貰えちゃうよ?初音の術式はめちゃめちゃ珍しいモノだから入学してくれると嬉しいし助かるんだけどなぁ~!
そうまくし立てるように言われ私はその言葉を脳内で繰り返し悟を見上げたままそのサングラスに手を伸ばした。サングラスの下には空色に光る瞳が私を見つめてきていて
「ああ、こいつは本気なんだ」
と理解した。
「受験とかあるの?」
「学長の面談だけだよ。もしかして来てくれる?」
「まあ、…行くとこもやることもないし……」
「じゃ、きまり!」
詳しくはパンフレットを送るから、よろしくね!
そう言うだけ言って悟は去っていき私は進学先のことを考えてしまった。
生八つ橋は、買った。