この関係を壊すモノがいるのならば(連載中)
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最近直哉に悩み事ができた。その悩み事は何の事かを察するのには簡単すぎることである。
「シノちゃん」
「なあに?」
お店での接客を終え送り出してからの直哉の呼びかけにシノは上半身だけで振り返り首を傾けて見せるのだが、
「(何でそないにエロいんや!)」
そうシノの動作の一つ一つが色っぽすぎてどうにはなりそうなのだ。
髪を耳にかけたり、かき上げたり、結い上げたり屈んだりの所作の一つ一つが艶やかで艶かしく、照れた時や少し困った時に目を伏せ微笑むその癖も色っぽすぎてエロすぎて、直哉は毎日ギリギリを生きてるし、女性客も男性客もそれに気づいている。
だからこそ直哉はなるべくシノが目に入る場にいるのだが、
「……あかん……」
直哉の座るスツールの横に座るという仕草さえイヤらしく、目に見えている刺青さえも他人を誘惑しているように見えてしまい直哉は頭を抱えてしまう。
「直哉くん?」
俺がかぃがったからこうなったんやろうか。それとも元々そういう素質を持っていたのか、そしてここまで見た目は 一般的でないのに魅せてくるのは、いや、やはり俺のせいか。俺が開発して人工的にそうしてしまったのか。純粋さに付け込んだ結果がこれか。
「直哉くん……」
「っ、!シノちゃん……っ」
悩み込む直哉の耳元でシノが吐息混じりに直哉の名前を囁いてくる。俺のせいか!
顔を上げ己を見るシノの目は、まるで欲を宿しているように、そして求めてきているように見え精神衛生上大変よろしくない。
童貞のガキでもないというのに。
思わずため息を吐きそうになりつつシノを抱き寄せ唇を重ね合わせるとシノの舌が絡みつき、2人きりの店内に水音とシノの甘ったるい吐息に淫靡な空気になっていく。
まだ正午にもなっていないのに。
「んっ……んぅっん、あっ…直哉くん……んっ」
シノは軽く目を伏せながら直哉の首裏に手を回すとさらに求めてきてシノの足が直哉の腰に絡みつき密着する。
ただキスをしているだけだというのに直哉の頭の中は快楽で埋め尽くされそうになり、慌て顔を離すと、ツウと銀の糸が互いの唇をつなぐ。
シノは切な気に潤んだ瞳で直哉を見つめ小さく息を吐く。
「っ、ちょお、散歩、してくる」
シノはどこか名残惜しそうに直哉から離れ、直哉は店の表口から外へと出て防波堤の壁に手をつくとようやく詰めていた息を吐き出した。
「……なんやのあれ……?何をしたらあないになる?」
どこで何を覚えてくるのか、耳元であんな甘い声で名前を呼ばれたら男として行き着く先は全て同じだろうと全男を巻き添えにする。そういうもんやろが。
「……はあ……アカンわ……」
別に今のシノは激しく肌を露出しているわけではない。ただ普通の袖が七部丈のピッタリとしたTシャツに短パンとスニーカー 。
髪型、服装、襟首、脇、腰、足、太もも、指先。その1つの身の動きで、そして視線の流し方のすべてがいやらしい。
それとも己の目にフィルターがかかってるのか。多分、概ねそう、いや違う、「シノちゃんが」、いやらしいんだ。
一旦考えを纏めたくて直哉は海沿いの道を歩いていたが次の瞬間、ブワリと重苦しい気配と呪いの呪力を感じ、瞬時に警戒態勢に入ったのは長年の経験であり癖である。
呪いの元を探すため辺りを見渡そうとした瞬間、ガラスが激しく割れる音が響き直哉の瞳孔が一気に開いた。
「シノちゃん!!」
一瞬でシノとの家に行くと、店の扉のガラスが全て砕け、店内のガラスケースも等しく割れ、そして店内の真ん中にはガラスの破片によって血だらけになってしまっているシノがいて。
「直哉くん」
突然ガラスが割れちゃって、何でだろうと“笑っている”シノの背後には1級とは比べ物にならない呪霊がシノを丸飲みにしようと大きく口を広げていた。
直哉はすぐ血だらけのシノを抱き店の外に出ると防波堤の裏に隠し道端に出てきた特級呪霊と相対した。
シノは非術師で呪いは見えないし身も守れない。
直哉は己に向かって襲いかかってきた呪霊に呪力を纏った拳を喰らわせ、戦闘が始まった。
その時、直哉とシノの家から離れた位置にある村からも“ある人物と同じ残穢”が広がり絶叫が響き渡り、直哉が呪いを祓いきったのと同時に血だらけのシノが直哉の前に立ち、薄く笑いかけてきた。
「直哉くん」
シノから底知れぬ呪力が溢れ出し、車の音とともに見覚えのある顔がシノの背後に立ち塞がった。
直哉もソイツも大きく目を見開いた。
――真希だった。
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