この関係に理由をつけるのならば(全10話)
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「……はぁ……」
あの日、夜明け近くまで抱かれ続けた私は足腰が立たずお店をお休みにしてしまい、直哉くんからのスキンシップが増えた。
直哉くんはベタベタされるのを嫌うタチかと思っていたがお決まりの「シノちゃんは特別やから」と楽しそうに笑いキスをしてくれるし抱き締めてくれる。
特に直哉くんの仕事が無い日はお店のカウンターに寄りかかり私を見て嬉しそうに微笑んでいる。
カウンターのスツールが1つ増えたのは当然だろう。
そしてその直哉くん目当てであろう女の子のお客の来店頻度が明らかに増え売り上げも上がる。
別に直哉くんが接客するわけではないし人が見ているところでは直哉くんは不用意に私に触れようとしない。たった3度の行為であからさまに私の身体が跳ねてしまうからだ。
そして直哉くんの言う「直哉くんを欲しがる目」をしていると言われたから私からも触れないようにしている。
私って結構性欲強かったんだなと思っていたら直哉くんにも
「こんなんやったらもっと早うかぃがったとわ」
と残念そうに言われた。
年か、年なのか。四捨五入すれば30代だもんな。遅かったか?
そして一旦お昼休憩に入り2人でご飯を食べ1人で砂浜を散歩しながら小さく息を吐くと小太郎さんが置網を片付けているところであり、ふと直哉くんに殴られていたことを思い出してしまう。
すっかり忘れてた。謝らなきゃ。
「小太郎さん!」
「え?あ、シノさん!?」
「ごめんなさい!」
「へ?何がですか?」
キョトンとはしているが小太郎さんに私はもう一度ごめんなさいと繰り返した。
「私のせいで直哉くんに手をあげられてしまいましたよね……あの時は本当にごめんなさい……謝罪しかできなくて……お怪我の状態は?お医者さんにかかりました?」
そう尋ねかければ小太郎さんは声をあげて笑い「俺が先に」直哉くんが大切にしているシノさんを抱きしめたんだから怒って当然でしょう、と言ってくれた。
それでも気になってしまうのは当然だ。しかし今度は小太郎さんが頭を下げ謝罪された。
「シノさんを殴ってしまってすいませんでした!」
「え……?あ、あれは、私が動いたからで小太郎さんは悪くありません」
「でも女の人に手をあげたことには変わりありませんから……」
そう困ったように笑う小太郎さんに私も笑ってしまい、互いに何かを言う前に背後から勢いよく引き寄せ抱きしめられた。直哉くんだ。
「なに楽しそうに俺以外の“オトコ”と話してるん?」
直哉くんを見ると明確な怒りが見え隠れしているが私は直哉くんの手を握りしめ「この間」、直哉くんが手を出してしまったことへの謝罪をしていると説明するも直哉くんは怒ったままだ。何かを警戒している。
「それだけか?」
「うん。直哉くんも謝らなきゃ」
「なんで?俺のお嫁さんに手ぇ出したオトコに、なんで謝らなアカンの?」
それに、シノちゃんを殴りよった、と低くつぶやき小太郎さんが慌てたように両手を上げて謝罪の言葉を並べる。
「す、すみません!あの時シノさんがひどく動揺していたから、何かしなきゃって、思って!落ち着かせなきゃって、」
「ほんで?そこで何で触る必要があった?口だけでもよう 十分やないの?もう1回言うたるけど抱く必要はあったんか?」
「な、直哉くん!あれは、多分仕方ないんだよ!わかんないけど…小太郎さんは心配してくれたからで他意はないよ」
そう説明すればする程直哉くんの機嫌と目つきが悪くなっていき、これ以上は危ない気がするから小太郎さんに頭を下げ腰に回っている直哉くんの手を握りしめるとそのまま手を引いて歩き出す。
直哉くんは何も言わずついてきてくれたそのことにほっとする。
「そういえば小太郎君と手ぇつないどったなぁ……」
ぽつりと呟かれた言葉に「えっ?」と疑問の視線を向ければ直哉くんは私の手は見つめておりそのまま家に入り敷台の上に押し倒され、直哉くんがピシャッと扉を閉め鍵を閉めた。
「シノちゃん」
「なに?」
柔らかい声音だが全くもって目が笑っていない。
「他にどこ触らせた?」
「どこにも……そもそも直哉くん以外には触られたくない」
直哉くんは違うの?と首を傾げると直哉くんは細めていた目を大きくした後私のことを抱きしめてきた。
「ほんま……シノちゃんには勝たれへん…堪忍したってや……」
そうじっとりと睨みつけられてしまい私は直哉くんを抱き返すと「ごめんね?」と眉を垂れさせてしまい、直哉くんの肩口に顔を押し付けられてしまった。
「はあー……首輪つけんの、あと一歩遅かったら危なかったわ」
その呟きの意味は分からないけど、私の口から出た本心は直哉くんの機嫌を一気によくさせたのは理解した。
「私はずっと直哉くんしか見てないよ?」
直哉くんは嬉しそうに笑って 「そうやね」と。
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