この関係に理由をつけるのならば(全10話)
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家に帰ってきても一向に泣き止まない私に代わって直哉くんがお店を閉めてから寝室に戻ってきて包み込むように優しく抱きしめられた。
その手は頭を撫で、背中を撫で、顔を覆っている手の甲にさえもキスをしてくれる。る今優しくされたら余計泣き止めないよ。
「シノちゃん」
「っ、……お、や、…くん……」
ひっくひっくと喉を引き吊らせながら直哉くんを見ると、直哉くんは困ったように笑っていて「俺が泣かせたんやね」と呟き私は必死で首を振る。
直哉くんは悪くない。でもこの涙が誰のためのことかもわからない。
「シノちゃんはええ子やね」
「っち、がう……っっ」
「ええ子」
「ちがう……!」
それでも直哉くんは私の手を握りしめ唇にキスをくれた。
涙でボロボロの瞳を向けると直哉くんはまた笑って「かぃらしいね」なんて囁いてくる。
私にだけは優しくせてくれる、それが嬉しいのか別のナニかなのか、それが私には分からない。でも私は、誰でもなく直哉くんを選んだのだから。私も、優しくしたい。
「直哉くん……ごめんね……」
「シノちゃんやから、特別に許したる。……でもなあ、」
優しい声は低くなり、笑っているのに笑っていない直哉くんの目を見てまた小さく身体が震えてしまうが、その言葉の先を聞きたくて視線で促すと直哉くんはまたキスをして問いつめる声音で言った。
「アイツとなに話してたん?」
「……アイツ……?」
「小太郎君」
「あ…小太郎、さんとは、何も」
「嘘ついたらひどいことしてまうよ?」
「嘘、なんて……本当に、何も」
小太郎さんとは本当に何も話していない。店を閉めるために戻ったら小太郎さんが来店していたので対応し、ずっと考えていたことを……あ。
「相談、しようと、しただけで……」
全てを聞く前に直哉くんが帰ってきたから本当に「しようとした」だけで実際は何もしていない。
その旨を何とか説明すると直哉くんの腕に力が入りさらに強く抱き締められ耳元に直哉くんの吐息がかかる。
心臓が激しく苦しく騒いでいく。それでいてとても安らいでいく。
「俺に言えへんこと?他の男に惹かれたいん?」
「違うっ!直哉くんが……」
「俺が?」
私は直哉くんの肩から顔を上げ、あと数cmで触れ合ってしまいそうな距離のまま、今日までの疑問を投げつけてしまった。
「直哉くんが……私とシようとしないから……。私にはそんな魅力がないのかなって、思って……直哉くんに大切にしてもらっている要素が何なのか、わからなくて……」
直哉くんは私といてシようとすることがないから、魅力がないのかなって。だから直哉くんも触れてこないのかなって、そう小さく呟くと直哉くんは「はぁーー……」と長い ため息を吐き言いすてた。
「シノちゃんって、アホなん?」
「なんで!?」
「ホンマもんの天然て怖いわ……」
「て、天然?そんな……私しっかりしてるよ!?」
「否定されると余計そう思うわ」
直哉くんは何故だが心底呆れたような顔をしてちゅっと唇にキスをしてまた「はぁ」とため息を吐き「これでも」わからんの?と言った。これでもとは。
「特別好きで大切にしたい女の子以外とキスせえへんし守りたいとも思わん。シノちゃんはずぅっとキレイでかぃらしいから手ぇ出すのが怖いねん。俺の手ん中にいる間は他の誰にも渡さへんし俺の手ぇから離れたら絶対に許さへん。この意味分かる?」
私は直哉くんの言葉を頭の中で繰り返し呟く。
特別で大切で好きで守りたくて綺麗で可愛くて手を出すのが“怖い”……?
「私、怖いの……?手が出せないくらい、ダメな子?」
「……アカン……ほんまもんや……」
「え……?」
「優しいしすぎてかぃがりすぎたわ……俺のせいやね……」
またしても意味が分からず混乱していると「まあシノちゃんやし」と呟きぎゅうと抱き締められ囁かれる。私の背を撫で上げる手がくすぐったい。
「シノちゃん、俺とシたいん?」
「?」
「せやから、えっち、シたいん?」
「え…?……っ!あっ、いや、そうじゃなく、てっっ!?」
パッと顔を上げたら満面の笑みの直哉くんが私のことを見下ろしていてそのまま畳に押し倒され、今度もまた優しくファスナーを下ろされ下着のホックを外され外気に晒される。小さく肩が跳ねた。
「シノちゃんは特別やから、ずぅっと我慢してたんのに、そないに俺のことが欲しいんやったら――あげる」
そう笑って首筋に噛みついてきた。
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