この関係に名前をつけるのならば(全20話)
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散歩から戻ってきても直哉くんの機嫌はいいが、その反対にどこかそわそわとしており夜が待ち遠しい。
直哉くんに言われた言葉が頭の中を埋めつくし、ドキドキとする。苦しいけど、嫌じゃない。
お夕飯もいつも通りだった。白ご飯にお味噌汁。冷奴に魚のお造り。直哉くんは料理もうまいな。
夕食を終え食器を片付けてる間に直哉くんがお風呂の用意をして「一緒に入ろ」と笑いかけてきてさらに心臓が跳ね上がった。
直哉くんの裸を見たことがないわけじゃない。裸といっても下着は履いていたが着物の着付けを私がすることもあったので、じゃあ私も(全裸だが)、見られたこともあるしいいかとうなずいた。
直哉くんが本当に嬉しそうに笑う。
お風呂では髪も身体も全部直哉くんに洗われ、お返しに洗い返すが正面から洗うのは恥ずかしくて背面から身体を流していたら直哉くんが悪戯みたいに手を遠ざけたので抱き込むようにして洗う。
そうすると「柔らかくてええ乳が当たっとるよ」なんて意地悪いことを言い真っ赤になる。直哉くんに抱きついて、抱きしめてもらったことなんて、覚えてないくらいあるのに、何を今更に。
髪を乾かしていたら「終わったら内奥に来て」と囁かれ直哉くんは中庭の見える縁側に行ってしまい、なるべくいつも通りにスキンケアまでして直哉くんの元へと向かった。
直哉くんは中庭から見える月を眺めており薄明かりの下でピアスがキラキラと輝いていたが直哉くんの横に座ると腰をスリと撫でつけてくる。胸がドキドキとうるさい。
「シノちゃん、見て」
「うん」
直哉くんに促され月を見ると三日月であり、それでもその輝きは衰えていないし綺麗だな、と思っているとひどく静かな声が胸の奥まで響いた。
「お月さん、綺麗やね」
「え?」
パッと直哉くんを見ると直哉くんも私を見ており、その表情はいたく真剣なもので、もう一度、今度はゆっくりと言い聞かせるように、そして私の首を撫で静かに囁いてきた。
「せやから、お月さん、綺麗やね」
その意味を一瞬で悟り、心臓がかつてないほどに早鐘を打ち、直哉くんは私からの返事を待っている。
私は呼気を震わせながら直哉くんの首に抱きつき直哉くんの顔を見つめ呟いた。
「直哉くんと、ずっと月を見てたい」
直哉くんが目を細め口を弓なりに上げると「ほんまにええの?」なんて言ってきたから、たまらず胸元に顔を押し付けてしまう。ふわりとお香の香りがしてぎゅうと抱きしめられた。
ピタリと直哉くんの胸に耳を当てると直哉くんの心臓も早鐘を打ち、左手をスルリと絡めとられた。
「ちょお目ぇ閉じててや」
「うん」
言われた通り目を閉じ待っているとスルと冷たいリングが指を通り根元まで入れられた。その感触に黙ってじっとしていると直哉くんが私の右手を取り何かを持たされ、スルリと指が通りそのまま手を、指先を絡めて握りしめられる。
「直哉くん」
「目ぇ開けて」
伏せていた目を開け直哉くんを見ると酷く優しい目で私を見ており、絡めとられた指先を見て直哉くんは薄く笑った。
「俺と、結婚して」
「っ――、」
その柔らかい声に喉の奥がぎゅうと苦しくなり、涙がポロポロと溢れだし、声を出せない代わりに必死で何度も頷いた。
「シノちゃんは泣いてもかぃらしいね」
ちゅっ、とすくうように唇を落とされ直哉くんの腕に包み込まれる。直哉くんが小さく 笑ったその吐息が耳に触れ、たまらなく愛しい。
私はあなたのもの、私はあなたの所有物、私はあなたを一生愛す
首の刺青は直哉くんのためのものだったかもしれない。この文字を入れる時に浮かんでいたのは直哉くんの顔、姿、笑顔、言葉。
『他に好きな男を作ったら殺すからな』
あの時には、私はきっと直哉くんに愛されていた。大切にされていた。
直哉くんの家庭事情は多分きっとこの先も教えてくれないと思う。だけど私にはそんなことどうだっていい。
あの時、直哉くんを庇って刺された時には、私は愛で直哉くんを縛っていた。
直哉くんが生きてくれればそれでいいと思った。でも直哉くんは私と「生きたい」と思ってくれていた。これ以上言葉なんて必要もない人、私は直哉くんに焦がれていた。
直哉くんもきっと同じで、それ以上に愛をくれる。
直哉くんの顔が近づき、唇が触れ合い、吐息を吸われ、そのまま縁側に押し倒され。
「シノさん、おはようございます」
「漁、お疲れ様です。調子どうですか?」
「今日もいい感じでしたよ。持っていきます?」
「いいんですか?ありがとうございます」
「いえいえ!じゃあ、これとか、これとか、これ……あれ?指輪……?」
私は少し目を伏せてから笑いかけると直哉くんが近寄ってきて、若い漁師さんの目が直哉くんの左手を見て、驚いていた 。
この関係に名前をつけるのならば(完)
第1章完
直哉はマジで親族死んだことになんの感情も向けていません。「やっと死んだんか」くらいです。次いでに禪院家への道のりや内装は全て妄想と漫画内による捏造です。ご了承ください。
そして途中から優しくなっちゃってて何でか不思議ですが直哉が生きてりゃハッピーなので甘い終わりになりました。
「ごめんちゃい」をどうしてもいれたかったので灰的にはそこでもう満足です。
直哉くん、次も頑張って!(2章へ続く)
2026/05/17
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