この関係に名前をつけるのならば(全20話)
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直哉は術式を使ってシノと帰宅するとシノを布団に寝かせ 同じく横になる。
あれはアカンかった。ついてってよかった。でないとあの場の全員を殺すところだった。
すやすやと寝息をたてるシノに軽く口付けてから布団をかけて眠りについた。
「シノちゃん、おはよぉ」
「直哉くん……頭痛い……」
いつもより遅めの起床のシノに笑いかけ、シノは頭を押さえ呻いた。
本気でファジーネーブル一杯で酔って記憶を無くしたらしい。
本人もお酒は強くないからと言っていたがここまでとは予想外であり、外で誰かと飲んだことはあるのかと問うと、シノはゆるく首を振って「そんな人、いない」と言ってくれたので安堵した。
「今日は1日寝ててええよ。お店、お休みのつもりやったんやろ?」
その宥めるように言うと頭痛薬を飲ませ、また眠りについたシノの頭を撫でてから直哉は家を出た。
そのまま目の前の浜辺に行き置網を整えている男に声をかけた。
「小太郎くん、おはようさん」
「へ?えっ、あ、直哉、君……?おはようございます」
「昨日は迷惑かけたなぁ、ごめんちゃい」
「い、いや、俺は大丈夫っすけど……シノさんは……?」
「二日酔いで寝かしつけといたわ」
小太郎とはシノと交流を持った男であり、飲みに誘った張本人であり、直哉の笑顔に怯んだ。
しかし迷惑という迷惑を実質受けていないためシノの様子を尋ねると簡潔に返ってきてほっとする。
「あないになると知っとったら行かせんかったわ」
そう飄々と笑うが目は全然笑っておらずまた怯む。
「小太郎くん、ここ地元やろ?聞きたいことあんねんけど」
「俺でよければ……」
何か恐ろしいことを言われるのかと覚悟を決めつつ返答すると直哉くんは声音も表情も変えず「お茶美味しい」みたいな言い放った。その内容にポカンとしてしまう。
「この辺に人が来やんデートスポットってない?」
「で、デート……シノさんと…ですよね?」
確認したくないことを確認してしまい直哉くんは眉を寄せ「他におるんか?」と切り捨てられた。
しかしここは田舎の村で、たとえ人気のない場所を見つけても翌日には村の人間に話が広がるような場所だ。
しかもその対象がこの2人となると余計2人きりは無理だろう。町まで足を運んでもそれだけで年寄りどもの話の的にになってしまう。
しかしずいぶん堂々と口にするな。照れはないのか。関西の人間はみんなそうなのか。
「そろそろ首輪付けとかんと悪い虫つくわ」
内心ギクッとしながらも「え?」となる。
この男は恋人ではないのか?2人で暮らしてるし、昨日の夜、居酒屋であんなキスをするぐらいだし(いや、酔っていたからノーカンか?)、シノさんも 「恋人」にも「彼氏」にも反応はなかったけれど、じゃあ結婚?こんな男と?
しかし直哉はジッと男を見つめており眉を寄せると「早よ答えんかいカス」と罵ってくる。カスってなんだカスって。だが教えたくないけど、仕方ない。
「船……まあ、ボートを使って行けるとこなんですけど…」
「見せてや」
それが人に頼む態度かと心の中でしか毒づけず、網を片付けるまで待ってもらってもいいですかと聞くと綺麗な舌打ちを一つして「しゃあないから待っとってやる」と、またもや人に頼み事をする口振りではない言葉と仕草で腕を組み見下ろしてくる。
着流しだがそれでも身体はよく鍛えられたのがよくわかるし腕を組む袖の隙間から伺える腕もたくましいし、むかつくくらい足が長いし、金髪でピアスだらけなのに品があり、何より着物に慣れきっている姿がまた腹立つ。
「シノさんとはいつ会ったんですか?」
腹立ち紛れに聞いてしまったが、これはシノさんが今日まで頑なに教えてくれなかったことの一つだが、男、直哉は海を見つめながらポツリとつぶやいた。
「中3の夏、受験前やね」
「塾とかっすか?」
「ガッコの席が隣やったん」
「それまで話したことは……」
「ない。シノちゃんのピアスがかっこよかったからそん時に開けてもろた」
高校が違う、大学も違う、家も遠い。顔を合わせるのも半年に1、2回あるかないかぐらいであり、一度シノさんだけは別の県でお店を経営していたが恋人ではない。なのに籍は入っている。
意味がわからなくなりながらそんな関係でよくご両親は了承しましたね、という感想がもれると直哉は遠くを見て、またぽつりと口にした。何とも思ってないように、淡々と。
「親族みぃんな死んでるからなぁ」
言ってから直哉は俺を見て「内緒やで」と綺麗に笑った。極道か。いや、もっと生々しい別のものの気がするが、その笑みに背筋がゾクリとし冷や汗が流れるのがわかった。
「――で、まだなん?」
「あ、すいません!すぐ」
「早よしいや」
やっぱり極道が駆け落ちしてきたのか?わからねえ。
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