この関係に名前をつけるのならば(全20話)
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「真希ちゃん」
直哉くんから東京から戻ってきた、とだけのメールが届くも会うに来るつもりはないらしいので怪我の心配をしてしまうが特に問題はないらしく ほっとした。
そのまま直哉くんのオーダーメイドのピアスのデザインも決まり作成作業工程も終わり私は顔を上げコーティングの確認をして2粒のピアスを眺めた。直哉くん、気に入ってくれるかな。
ビロードの箱に入れ着替えてから直哉くんの家に行くとふとした違和感と血臭がした。
すごく濃い血臭。そして打音。
どうしていいかも分からず、門の前で立ち尽くしていたらギィと門が開き1人の女の子を担いでいる、火傷の跡が全身に残っている、8年前とは様子の違う真希ちゃんがいて、悟った。
「殺したの?」
「殺した」
「みんな?」
「全部」
「死人の寝床なら、入ってもいいよね」
私は真希ちゃんの返事も待たず門をくぐると中はひどい有様だった。
破壊なんて可愛い言葉では語れないほどに家は崩れ、切り殺された死体で埋め尽くされている。
真希ちゃんが、全部。
「直哉くん」
私は死体を跨ぎ禪院家の庭先を走り首を巡らせると、大きな池とそこにかかる橋が無惨な姿となっており、這ったような血の跡を見て追いかけた。
縁側から倒れてる直哉くんの姿を見つけ、そして包丁を持ち直哉くんの背中に振り下ろされているソレを見て、直哉くんを庇うように間に入り背中から直哉くんを抱きしめた。
ずぶり、と背中に包丁が突き刺さり、痛む前にまずめり込む感触を覚えすぐ激痛が襲いかかってきた。
「――カハッ……!」
ひゅっと息をのみ咳き込むこともできず息を吐くも、直哉くんの首筋に指を添えるとまだ脈打っている。
顔の右側が血だらけであり気を失っているようだが致命傷にはなっていない。
「なおやくん……しなないで……」
手に持っていたビロードの箱が私と直哉くんから流れ出た血の中に転がり、私はそのまま意識を失った。
直哉くん、死なないで。
遠くで直哉くんの声がした。ひどく慌てたような、苛立っているような、何と表現すれば正しいのかわからない声音と揺れる私の身体。
抱き上げられてどこかへ運ばれているらしい。
直哉くん、死んでなかった。嬉しい。よかった。涙が流れた。
「シノちゃん、目ぇ開けて」
ごめんね、身体が動かないし目蓋も重いんだ。直哉くんを見たいけど、すごく眠たいの。
「すぐ治したるから、起きててや」
うん。起きてるよ。頑張って直哉くんの声も聞いてるから。でもやっぱり少しだけ眠らせて。
「俺より先にこっちを治せや!!」
直哉くんの怒った声を聞いた。そんな風に怒るんだ。
ゆらゆらとして意識下で、刺された背中がちょっとだけあったかくなって。それで。
目を開けたらいつもの私の家の天井が見え身体を起こした。服が着替えさせられており布団から出ると居間から話し声が聞こえてきた。
お父さんと、お母さんと、――直哉くんの声。
「直哉くん!」
「シノちゃん、起きたんやね」
扉を開けて駆け込むと、顔の右側に生々しい傷跡がある直哉くんが私を見て笑い、両親が安心したように泣いている。
それにも構わず直哉くんに抱きつくと、いつもみたいに優しく抱き返してくれて額にキスを落とされた。
「俺、遠くに行くことにしたんやけど、シノちゃんも来てくれる?」
「うん、一緒に連れてって……」
直哉くんと一緒にいたい。離れたくない。また優しくキスをしてくれた。
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