この関係に名前をつけるのならば(全20話)
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学校を卒業してバイト先に就職も決まり、一旦実家に戻って報告をし、久しぶりに、本当に1年ぶりに直哉くんの家へと訪れた。
直哉くんには事前に連絡を入れておいたので敷地内に入る許可をもらっている。
3度目だし、そのうち2度は車で連れられていたので間違ってるかわからないが一本道に入ったので多分あってる。
「おい」
突然背後から声をかけられて振り向くと去年庭先で見かけた女の子がそこに立っていた。
「お前あいつの何だ?」
すぐ直哉くんのことだと分かったが、私と直哉くんの関係性って確かになんだろう。
ちょっと困って笑ってしまうと女の子は私を睨みつけたまま返答を待っており、私は少し考えてからそのままを話した。
「中学生の時からの友達……かな」
「やめとけ」
ピシャリと言い捨てられた。空気がピリッとして、女の子は私を睨みつけてきた。でも敵意じゃない、心配に近い視線と声音。
「アイツはやめとけ。ここにも来るな」
「ありがとう、ごめんね」
女の子は私の言葉に顔を歪ませるとそのまま私を追い越して行ってしまったので、後を追うわけではないが私も歩き出す。
この子は一体何の心配をしているのかわからないけど、でも直哉くんの家の人を数人の女中さんとこの子以外を見たことがないから何とも言えないし言葉も浮かばない。
門の前まで行くと女の子は私を待っていた。そして直哉くんのような鋭い視線で言葉を発した。
「ここは『一般人』が来るとこじゃねえ。だから、やめとけ」
どこか懇願に近い響きであって、静かに見つめるも私の口からは「ごめんね」という言葉しか出てこず、門が開き直哉くんが姿を見せた。
女の子は直哉くんを睨みつけたが直哉くんはその子を無視し笑顔で私の手を引いて歩き出した。今日は家の中には入れてくれないらしい。
それでもご機嫌そうな直哉くんについて歩いて行くとふいに足を止め顔を覗き込んできた。
「真希ちゃんとなに話してたん?」
「真希ちゃん?あの子、真希ちゃんっていうの?」
「なんや、名前も名乗ってへんのか。ほんまカスやな」
心底おかしいと嘲笑っている直哉くんを見つめつつ「真希ちゃん」とつぶやき、覚えておこうと思った。また会う気がするから。
直哉くんは真希ちゃんのことはもうどうでもいいようで少し歩いたところに抹茶の美味しい喫茶店ができたと教えてくれて一緒に歩いて行く。
そのまま特に会話もなく歩き お店に入ると店長らしき人が丁寧に頭を下げ奥へと通された。広い個室だった。
「シノちゃんと来たかったんやで?」
そう笑う直哉くんに「連れてきてくれてありがとう」と言うと目を細め座布団の座りすぐ抹茶とあんみつが置かれた。
「直哉くん甘いの好きだっけ?」
「ここのは特別や」
いただきますと手を合わせてから抹茶とあんみつを口にすると控えめな甘さと抹茶特有の香りと苦味に「美味しい」と呟くと直哉くんはさらに嬉しそうに笑った。
「首、綺麗やな」
「これ?」
首を一周するように入れた刺青。
私はあなたのもの、私はあなたの所有物、私はあなたを一生愛す
別に誰かに向けてのものではないけれど、そう綴られた文字に直哉くんは口角を上げたまま見つめてきており、私は抹茶をすすった。
「仕事、いつから?」
「4月の初め。その前に1回引っ越し作業があるからここにいられるのは明後日までかな」
「短いなぁ」
不満気な言葉に小さく笑ってしまってから直哉くんに大学のことを聞くと「つまらん」と、たった一言で終わらせてきてあと1年後には卒業し家業をするらしい。
そういえば直哉くんの家はかなりの名家らしいけど何の名家かは詳しく知らないしあまり聞こうとも思わない。
興味がないのではなく聞くと直哉くんが嫌そうな表情をするから聞かないし、直哉くんも話さない。
「シノちゃん、結婚 せえへんの?」
「もらい手はいないよ」
「そやろなぁ」
直哉くんはケラケラと笑ってから抹茶を飲み干しテーブルに肘を置き頬杖をついて見つめてきたので、ほんの少し目を伏せてから笑ってしまった。
「シノちゃん、かいらしぃのになぁ」
「そんなこと、直哉くんしか言わないよ」
直哉くんはまたケラケラと楽しげに笑った。
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