この関係に名前をつけるのならば(全20話)
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東京の専門学校に通い大量にレポートやら課題やら誘われた先でのバイトやらで私はあっという間の1年を過ごしていた。
お正月前に女子高校生がピアスを開けに来たり選んだりするのを見て対応していたらカランという音ともに羽織姿の直哉君が入ってきた。
高校を卒業して大学1年のはずなのに、ほんの少しだけあどけなかった様子も失せ『1人の男』がそこに立っていた。
直哉君の頭髪が金髪になっており一瞬では判別できなかったけれど「シノちゃん」と跳ねるような声はあの時のままだった。
「直哉くん」
久しぶりだね、と近寄るとピアスを見ていた女の子たちも直哉君に見惚れておりなんとなく気まずくなってしまう。
けれど相変わらず周りを気にしない直哉君に懐かしくて笑ってしまう。
「前髪切ったん?よう似合うとるよ」
伸ばされた指先が私の前髪をかき上げ左眉の端を見て目を細め何事かを呟いた。
それは小さすぎて聞こえなかったが、次に私の唇の下にあるピアスを撫で直哉君は薄く笑った。
「こないなとこにも開けたん?食事、大変やないの?」
今度はちゃんと聞こえる声であり口のピアスを指先で撫でながら目を細め問いかけてくる。
「全然帰ってき来やんから心配したんやで?」
「ごめんね」
「帰らんの?」
「ごめんね?」
直哉君は眉を寄せたのでシフトもあと30分で終わる旨を説明しそしたらアパートに戻ると伝えると笑ってくれた。
「住所教えてや」
「狭いし散らかってるよ」
「そんなん知るか。早よ教えろや」
「30分待っててくれる?」
直哉君は綺麗な舌打ちをするとお店のすぐ目の前に設置してあるベンチに行ってしまい、オーナーに許可をもらってから紙コップに熱いお茶を注ぎ直哉君のもとへ行き手渡した。
直哉君は何も言わず受け取ってくれたので少し笑いかけてから接客に戻る。
女の子がチラチラと直哉君に視線を向け伺っていたが、そうしている間に30分経ってしまい、遅番ではないからと荷物を持ってパーカーを着ると直哉君の元へと急いだ。
「29分…… 及第点やな」
そして立ち上がった直哉君は私の手を握りしめ視線で促してきたので駅を越え、そこそこいい条件に見合った、それでも少し古めのアパートに直哉君を案内し、鍵を開けて玄関に入った。
「なんや、ほんまに狭いわ。物置とちゃう?」
「1人だとこれぐらいで十分だよ」
直哉君も草履を脱いで入ってきたのでソファーベッドにしているそこに座ってもらい私も軽くデザイン帳や、作りかけのアクセサリーを片付けテーブルを出しお茶を注いだ。
「大学どう?」
「つまらんわ」
本当につまらなさそうな口調 だったのでそれ以上は聞かず、いつまで東京にいるのかと聞くと舌打ちをされ「帰らんのか?」と睨みつけられた。
なので直哉君のテーブルの前に座り1月いっぱいは帰れそうにないこと、2年に進級が決まればその後の春休みには時間を作れると話すと「そうか」と笑ってくれた。
直哉君のピアスは私が選んだものがずっと光っていて、大切にしてくれているんだと嬉しくなる。
「卒業したらどうすんの?」
「さっきのお店で働かないかって誘われてるから、このまま東京に住んで働いてみるつもり。お父さんとお母さんにもその話をするつもりだけど直哉君が一番先になっちゃった」
ほんの少し目を伏せて笑ってから顔を上げると直哉君が「おいで」と手を広げたので 立ち上がりそっと抱き付くと優しく抱きしめられた。
ほんの少しお香の香りがする。身体はやはりたくましい。
何かされるのかなとぼんやり考えていれば直哉君は私の頭を撫で、背を撫で口づけを落としてくるけど、それ以上のことは何もしてこない。
「他にここに入った奴はおるん?」
「本当に誰も来たことはないよ。そんな暇、なかったから」
直哉君が初めてだよ、と言うと顎を上げさせられて切れ長の目が私を見据えていた。どこが嬉しそうに目を細める。
「ホンマに?」
「うん。狭いし、用事もないし」
「そうか」
そして引き寄せられ唇を塞がれたので直哉君の肩に手を置き目を伏せれば喉奥で笑われ
「いい子やね」
なんて甘い声音で笑ってきて、そしてまたキスをされる。
舌を絡めとり形を確かめるように這い回してた舌は、ちゅっと言う音とともに離れて行き、目を開けると満面の笑みの直哉君の顔がすぐそこにあり、たまらず首元に抱きついてしまうと優しく抱き返してくれた。
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