癒しの悦楽(全34話+おまけ)
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「許可なく見上げるな、不愉快だ、小僧」
虎杖は今の状況に困惑しつつも目の前の光景に激しい憤りを感じていた。
暗いはずなのに周囲は見え、大量の骨が積み上がったその上に宿儺が座って虎杖を見下ろし、そしてその膝の上には燐が寝かされている。
「燐さんに何をしたんだテメエ!」
「貴様の知るところではない。黙っていろ」
「燐さんを殺したのか!?」
「黙っていろ、と言った」
ビリッとした気配に虎杖は肌が焼かれる気配を感じたがどうせもう『死んで』いるのだから地獄だろうがなんだろうがどうでもいい。宿儺をボコる。だがしかし宿儺は燐の頬を撫で、まるで慈しむかのような視線で燐を見つめ触れている。意味がわからない。
それでも虎杖は宿儺から燐を離させるために足元にある頭蓋骨を投げ付け宿儺は燐を抱き上げながら虎杖を見下ろしている。
「何を焦っているのか知らんが燐は死んでいない。そして小僧、貴様もだ」
「……は?!」
そりゃそうか。燐さんが地獄に落ちるわけがない。ここに来て今まで会ってきていた中で一番心の優しい人だった。今俺と宿儺がいる場所が地獄でないならそれだけで救われる。が、だめだ。
宿儺が一体どうしてそこまで燐さんに執着してるのかが全くもってわからないが触れさせ続けたくなどない。これは恋愛感情ではなく嫌悪の問題。燐さんはこんな絶対悪に染められてはいけない嫌悪だ。
燐さんには当てないように、だがこいつにだけは当たるように攻撃を仕掛けるが全てを読まれている。
「初めに言ったはずだ小僧。燐を差し出せば 大人しくしてやろうと言った それと、燐に触れたら貴様を殺す、ともな」
「いやもう死んでんだから無効だろ!」
「まだ死んではおらんと言ったはずだ。ここは俺の生得領域だ」
「!」
「心の中、と言い換えてもいいだろう」
虎杖は動きを止め宿儺と宿儺の腕の中で眠っている燐を見て思考がほんの少し停止する。そんな虎杖を見下ろすような視線で宿儺は燐を抱いたまま骨の上に腰を下ろす。
「燐は今、時の狭間を彷徨っている。あの虫のせいだ」
そして小僧、貴様らの脆弱ぶりのせいで。
宿儺はギリっと歯音を立て忌々し気に吐き捨て燐の頬を撫で続ける。そのまま続いた言葉にまた宿儺に怒りと希望を見いだし「貴様は知らんが、」“俺”の時に“俺と燐は”一つの縛りを設けた。
「燐と指を絡めている間、何も誰も傷つけぬ、と」
俺はその縛りを破り
「燐さんは死んだのか……?」
「話を聞いていなかったのか? クズが……時の狭間を彷徨っていると言っただろう、痴れ者め」
「瀕死……ってことか?」
「簡単に言うと“そう”だ」
燐の優しさに甘え縋り燐は全てのソレに寄り添い続けた結果、貴様らは成長が滞り燐がこうなるはめになるまで頼りすぎた。と。
虎杖はすぐ特級呪霊と接敵した瞬間、燐さんだけがその気配に気づきそう、己と小指を結んだのだ。己が死んでも“俺たち”を守るために。これが甘え以外の何と言えよう。
虎杖はギリと歯を食いしばり宿儺を見ると宿儺もまた虎杖を見る、と言うより睨みつけておりため息を吐いた。
「おそらく貴様は死亡した体で扱われるだろう。そして俺に対する燐も切り札として扱われることになる 。そこについてはもうどうでもいい、貴様は貴様らに“燐を殺すな”とだけ伝えろ。後は何でも好きな話せ。ただしばらく燐の心は俺の生得領域で守ると誓おう」
「信じられるか!」
「信じる信じないの問題ではない。これは縛りだ。破って罰を受けるのは俺だけだ」
「……っ、なんで……!お前はそこまで燐さんに執着する!」
「はっ!貴様の知るところではない」
とっとと去ね。
その言葉を最後に虎杖の意識は浮上しゆっくりと体を起こすと全裸で解剖台の上におり 、家入と五条と伊地知がポカンとこちらを見ておりすぐ傍らには燐が横たわっていた。
静かに、眠っている。
そんな燐をじっと見つめた虎杖は渡された服を着ながらすぐそこにいる3人にだけ事のあらましを説明し珍しく五条は小さく苛立った。
「燐を人質に取られちゃったか……」
燐の意識が浮上しないことでそう捉えた3人は困ったように燐の寝顔を見、宿儺が言ったように虎杖は死亡した体で鍛えられることになった。
3人の『最強』によって。
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