癒しの悦楽(全34話+おまけ)
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夜中の宿儺の呼び出しの回数が増えた。
先日の一件以来、多くて3度 呼び出される。そんな時は大抵私が誰かに助けを求める夢を見ているからで、飛び起きるとメールが届く。
「ふぁ……」
そう欠伸をしながらデスクに突っ伏すと横から伊地知さんの声が聞こえ顔を上げるとコーヒーをくれた。
「最近眠そうですね、何かありましたか?」
「うーん…特に何かってわけでもありませんが……」
宿儺の呼び出しは虎杖君と五条さんと私だけの秘密としている。初めての呼び出しの日、私と虎杖君は出張に行っている五条さんに電話をし宿儺が言い出した「1分の縛り」だけで私と会いたがった旨を話した。しかしその内容は話していない。話せることが何もないからだ。
「分からぬか」
といい、抱きしめてくるだけでその他には何も言わない。
確かに夜中の呼び出しは結構キツイものがあるが宿儺の声と温もりに泣き出してしまいたいくらい嬉しい心が湧き上がり胸の中の空白が埋まっていく感覚が寂しい。
もっと何か教えてくれればいいのに、宿儺は何も教えてくれないし私も強いるようなことはしないし言っていない。
「今日の予定は?」
「んー……あ、冥さんから呼び出しがあるだけで今日はそれだけですね。虎杖君達は体育があるみたいだし」
「目の下のクマが酷いですよ ……?家入さんのところで仮眠を取ってはいかがでしょう?」
「伊地知さん優しい~」
ヘラりと笑い会話をし、息抜きをしてから伊地知さんに従って家入さんの元へと訪れた。
「ああ、燐どうした?」
「ちょっと仮眠を…」
ベッド借ります~といえば快く譲ってくれる家入さんの目の下にもクマが住んでいるが 家入さん曰く学生時代から蓄積されたものなので消えないと教えてくれた。
ジャケットを脱いでベッドに入り込むと家入さんはカーテンを閉めてくれてぎしりと椅子に座り説明を求められる。
言っておいた方がいいだろう と判断する。
「実は夜中の呼び出しが多くて……」
「宿儺?」
「はい」
私を夜中に呼び出すのは五条さんくらいだが、今その五条さんがいないため必然的に1人に絞られるので頷く。
「別に特別な何かがあるってわけでもないんですけど、何か呼ばれるんですよ。虎杖君も寝不足になるので私は心配しているんですけど普通に爆睡するらしいので平気と言ってますが……若さですかね」
家入さんは小さく笑ってから 私の頭を撫でて私の喉首に指を滑らせ「寝な」時間になったら起こすから、といい私はそのまま眠りについてしまった。
家入さんの気配。薬品の匂い、 硬すぎず柔らかすぎずのベッド、少しくたびれているが張りのある布団は心地いい室温と時計の秒針の音。ズルリと夢の中に足をつけた。
私は1人歩いている。色しかわからない世界で歩いている。時折『虫』や『黒いモノ』に襲われたり追いかけられたりするが、それでもずっと1人で歩いている。が、今は1人ではない。男の声が私を呼び、腕を掴まれ横に引かれるので従うと男は笑う。
『――――――』
男は何か言ったが私はそれより『虫』の気配にハッとし男にしがみつくと男の従者であるもう一人が『黒いモノ』を消してくれて、男は私は抱き上げる。
『対価は分かっているな?』
「『うん!ありがとう――――!』――ッ!」
私はバッと跳ね起き吹き出る汗が首筋のチョーカーに染み込み家入さんがカーテンを開け「燐!」と心配そうにタオルで汗を拭ってくれて頭を撫でられた。
「何の夢を見ていたか覚えてる?」
「……わたしの、ゆめ……」
家入さんは何も言わず汗を拭いペットボトルを渡してきて、私も頭も撫でられながら家入さんを見上げると渋い表情を浮かべているので私は寝言か何かを言っていたのだろうか。
「私、」
次の瞬間、スマホのアラームが鳴り、すぐ冥さんとの約束を思い出し家入さんに頭を下げてから上着とスマホを手にしもう一度頭を下げて保健室を後にした。
家入は慌てて去っていく燐の背中を見つめるとベッドを整え大きく息を吐いてから携帯を耳に当て電話をかけた。
「ああ、五条。今いいか?」
『硝子どうしたの?何かあった?僕、今おやつタイム』
なんて言葉を無視して家入は呟いた。
「燐に宿儺を近づけない方がいい」
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