癒しの悦楽(全34話+おまけ)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「宿儺」
「何だ」
燐は山の中の屋敷の一室にある虫除けの垂れ幕の中で月見酒を楽しんでいる宿儺に声をかけた。
以前廃寺で同衾をして以来、宿儺は気まぐれに燐を抱き燐もそれを受け入れていて、今もまた情事の後の布団の中で燐は身動ぎペタリと座っている。その体中に異常な数の赤い花が咲いている。
「裏梅がね、『宿儺様』を呼び捨てにするなって言ってきてね」
燐は着物を肩にかけ垂れ幕越しに月の下の宿儺を見て首を傾げた。
「私も宿儺のこと『宿儺様』って呼んだ方がいい?」
「お前はどうしたい?」
宿儺はチラリと笑い燐は宿儺を見つめ「うーん」と唸ってから宿儺に視線を戻す。
「宿儺が『様』って付けて呼べって言わないから私は宿儺て呼んでいたい。でも宿儺が馴れ馴れしいって思ったら裏梅みたいに呼ぶよ?」
「ハッ。言ってみろ」
「宿儺様。……うわ、なんか違和感すごい……やめよ」
宿儺は声を上げて笑い酒を傾ける。
「俺は別に何でもいい」
「じゃあ宿儺って呼ぶ!変えない!」
「そうか、好きにしろ」
「うん!」
燐は何かの温もりと己の名を呼ぶ声に眉を潜めゆっくりと目を見開くと伏黒君が私の名を呼び心配そうな表情をしており、その向こうには男の子も立っていて私を見てやはり心配そうにしている。
「……あれ…何があったっけ……」
痛む米神に手を当てるとぬるりとした感触がし、手にはベットリと血が付着している。そうだ、確か扉が。
「あ!無事!?伏黒君、被害は?!」
「大丈夫です。何とかなりました。」
燐さん以外に大怪我を負ったものもいないと聞いてほっとした次の瞬間、伏黒君と男の子の間に2級相当の呪いが降ってきたのを視認するのと伏黒君を突き飛ばして守ったのはほぼ同時で、勢いよく壁に叩きつけられた。
背中越しにクレーターができ襲いかかる痛みにも呻きつつ2人と一般人の無事を視界で捉え、そのまま押し出すように壁が破壊され私も吹き飛ばされた。
すぐ伏黒君の玉犬が落ちた私を支え伏黒君がボッコにされている、瞬間、また心臓が爆音を奏でる。
近くに、ある――……!
「俺に呪力があればいいんだろ!?」
「っ!ばか!虎杖、やめ――!」
私は咳き込むことも止血することもできず虎杖という少年とその手にある特級呪物『両面宿儺』の指が嚥下されたのを見た。
溢れ出す呪力、圧倒的な呪いのオーラ、そして、ずっと求めていたあの胸の空白が激しい喜びに埋め尽くされていくその感覚と感情に揺られ、2級以上の呪いは吹き飛んだ。
特徴的な紋様と久しい声、言葉。特級呪術、呪いの王が受肉した。
けたたましく笑い、焦る伏黒君とは対照的な視線で宿儺を見つめ、宿儺も私を見た。
「……虫……」
「っ!やだ―!?どこ!?どこどこどこ!!?宿儺!いっそ殺せ!!」
私は呪いなんかより何より『虫』が嫌いだ。
一瞬で取り乱した私を伏黒君が庇いつつ宿儺を見て、宿儺は私が頭から血を流している様に眉を寄せた。酷く、不愉快そうに。
「誰に傷をつけられた」
「さっき宿儺が祓ったアレ!」
咄嗟の叫び声に宿儺は舌打ちをしながら私と伏黒君のところまで来ようとした所で「彼」の左腕が「己」の顎を掴み1人、2人で話している様は何とも異様だ。
肉体の主導権が虎杖君に戻る寸前、宿儺は私を見て口角を上げた。
「またな燐」
紋様は消え後に残されたのは困惑して私を見る伏黒君と、きょとんと両手を上げている虎杖君。そして
「お疲れ様サマンサー!お、燐、怪我してんじゃ――」
私の意識はそんな声を聞き終える前に物プツリと切れた。出血量だろうか、何だろう。わからないけれど、嬉しいことだけは理解していた。
そしてそっと抱き止められたが、でもあなたじゃない。私が欲しいのは。
→