癒しの悦楽(全34話+おまけ)
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特にどこへ行くわけでもなく歩く宿儺と宿儺に命じられ姿を消した裏梅。そして歩く宿儺の服を掴んで歩く燐と過ごしてしばらく、宿儺は今一度『燐』という存在に頭を回していた。
盲目ではないらしいが簡単な色以外のものをうまく認識できないというのに『虫』に対しては驚くほど機敏に反応し宿儺にしがみつき、宿儺の求めには応じるその軽さに。
『虫型』以外の呪いや本物の『虫』以外には本当に怯えもせず宿儺と話し、ふと気づいたのは燐といると 宿儺が反応する前にそれが例え『かなり等級の高い呪い』だとしても一瞬で消え去るということに。
燐本人からはあまり呪力を感じ取れないし、今まで宿儺より先に裏梅が対処していたそれを無意識に担っていることに。そしてやはり 虫が怖いということ以外何もわからないことに。
道中、季節は春を迎え野道を歩きつつ1つの廃寺を見てそこで休もうとしたが燐に廃寺前で宿儺にしがみつき「む、虫、いる?虫!」と涙声で訴えかけ 宿儺は低く笑ってから『虫』を殺し尽くした。
『虫』という名の賊を。
賊は宿儺に対して「化け物!」と罵ってきたが、それもサクッと始末し「化け物」という単語に燐はどんな反応をしてるのかと見下ろすがしかし、燐は宿儺の着物を握りしめたまま背中に張り付いている。
「おい」
「な、なに?!虫いない!?」
「おらぬ」
そう言ってから己の前まで引き寄せると『虫』から守る代わりに燐からの接吻を求めるようにし、そして燐もそれに応えている。
そして今もまた『虫』を始末したので燐は宿儺の顔へと顔を寄せ、背伸びをして唇を重ね合わせてくる。
ほんの数秒してから燐は足を下げるも宿儺はそのまま廃寺の階段に燐を押し倒し、舌を割り込ませた。
「んっ……」
と甘い声を漏らし宿儺の口付けを甘受している燐の動作に宿儺はとうとう口にした。
「同衾だ」
トロリとした燐の瞳を見つめ囁くように笑うとしかし燐はにっこり笑って頷いた。
「私を『もらって』くれるんだね!」
なんて心から嬉しそうに笑って、宿儺のことを、全てを受け入れた。
夕闇が過ぎ、夜半を過ぎ、朝を迎えることになっても宿儺 は求め、燐はそんな宿儺に口付けながらその求めに応じ続け幾年かが過ぎた。
そして宿儺が討たれる時も宿儺の側にいた。
数多の呪術師が宿儺を狙い戦い続け最期の時、初めて見せた時の涙を浮かべ燐は宿儺の身体を抱きしめ胸に頭を抱く。
「宿儺がいなくちゃやだ!宿儺とずっといたい!宿儺がいない時なんて過ごしたくない! 宿儺だけがいい!!」
「っは、……なら、死ね」
血を吐く宿儺を見下ろして訴える燐にも、いくつもの傷が走り作られ、けれど痛みに喘ぐことなく、残酷で慈悲のある言葉に
「うん、分かった!」
と笑い、唇を重ね合わせてからぎゅっと宿儺の頭を抱きしめ、すぐ脇に落ち着いた刀を燐は一瞬の躊躇いまなく己の喉笛に突き刺し、宿儺を守るかのように、守るかのように抱きしめ、息、絶えた。
大量の血を吐くもその表情は恐ろしいほどまでに穏やかで安らかで、その顔をしかと目に刻みつけてから宿儺も笑って封印された。
また輪廻で出会おうと。
宿儺の最初にして最期のものとなった女に笑いかけ、そして女も最初にして最期のモノと全てを受け入れ続け、時は巡る。
千年の月日が経ち呪肉した宿儺は笑い、叫び、千年越しの呪力にパッと顔を向け呟いた。
「……虫……」
「やだーー!どこ?!どこどこどこ!?やだやだやだ!宿儺!いっそ殺せ!!」
「死ぬのはまだ先だぞ?燐」
輪廻とは巡ること。
再び出会った、俺だけのモノ。
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