狗巻と同中先輩が呪術師になった
私は彼をわんちゃんと呼ぶ(全21話)
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「さ…さむ……」
2月のある日の高専寮て目を覚ました私は暖房を入れてから布団を抜け出し起き抜けの白湯を飲み息を吐き出した。
カップ越しに手が温まっていきチビチビと飲み干すと身支度を整え今日のスケジュールを思い出す。
確か今日は一件、祓いの任務が入っていたなぁと一服してからコートを羽織って自室を出た。
時刻はまだ薄暗い朝の5時半。持つもの持って車のエンジンをかけ暖房を入れていた新田さんに声をかけ車に乗り込んだ。
軽く新田さんと話しながら呪いの発生場所や階級などを高専支給のタブレットで確認していれば数時間走ったところで車は止まり、私は顔を上げた。
東京の郊外からその反対にある郊外まで来たようで時計を見ればもう11時。
大分移動したなと思いつつ車を降りてから帳を下ろしてもらい私は呪いの呪力を辿る。呪いは難なく祓えた。本当に、難なく。
森の中を軽く見て回っても問題は無かったので帳を上げてもらい冷えきっている手をさすりながら新田さんの元に戻り素早く車に乗り込んだ。
さむっっ。
そうして帰る途中、何とはなしに窓から外を見ていれば、でかでかとビルや店先、ショッピングセンターのウィンドウガラスに「バレンタイン」のチラシやポップが貼り付けてあり、思わず「あ」と呟いてしまった。
「どうかしたっスか?」
「いやぁ、バレンタインだなって」
「そういえばそうっスね」
と話してから私は少し悩むと新田さんにデパートに寄ってほしいと頼み、新田さんは笑顔を作った。
「狗巻君にっスね!」
「それもある~」
新田さんも一緒に行きましょうと誘えば乗ってくれて、2人してバレンタイン当日のチョコレートコーナーに足を向ける。
女子、女子、女子のゲシュタルト崩壊である。呪いでそう。
新田さんは気になるチョコがあったらしく「ちょっと」行ってくるっス!と早足で消え、私はお世話になっている補助監督さんや五条先生、パンダと乙骨、真希ちゃんの分を手にしてからわんちゃんの事を考えてしまう。
一応本命だ。
既製品で良いのだろうか。
いっそ作るか。
いやでも買った物の方が美味しいのではあろう。が、そういえば私、わんちゃんの好み知らないしなぁ。
それでもと私が足を動かした先は、。
「何か甘い匂いするな」
「真希ちゃん」
「初音、なに作ってるんだよ」
「ん?ブラウニー」
そう答えながら私はチョコを溶かし、真希ちゃんは溶かす前のチョコを一欠片口に運んでいる。
因みに、今日の授業は全て終わっているので暇な学生は各々、思い思いに過ごしているが私は寮の談話室のキッチンに立っているわけで。
「真希ちゃん、冷蔵庫の赤い包みが真希ちゃんの分」
「わたしにもあるのか」
「あるよ」
真希ちゃんはもう一欠片手にしつつ赤い包みを取り出して一言。
「棘だけに手作り渡すのか?」
と。
真希ちゃんは私の横で包みを剥がし私は溶けたチョコと小麦粉を合わせ混ぜながら否定してみせ
「みんなの分もあるよ」
でも本命だから手作りも用意しておこうかなって。でも1人分なんて器用なことは出来ないし、どうせ作るなら次いでにみんなの分も、と。
型に流しこんでからオーブンに突っ込み後片付けをしていればその匂いに吊られてからか談話室に後輩が集まってきて、その中にはわんちゃんもいる。
「ツナ?」
「わんちゃん、パンダ、乙骨も、今日はフリーなんだね」
その私の言葉に3人は頷き片付け終えてから冷蔵庫内のチョコを渡し、オーブンで焼き上がったブラウニーの粗熱をとる。
そうしている私に代わって真希ちゃんがバレンタインの日付を告げ皆が「ああ」と納得し、私はブラウニーを切り分けていく。これは五条先生。
背中にわんちゃんの視線を感じたのでもう包むのはやめて皿に盛り付けテーブルへと置いた。
「はい、どうぞ」
そう笑った私の手をわんちゃんが引いてきて
「高菜!」
という言葉と共にわんちゃんの部屋へと拐われてしまい
「…手作り、俺だけじゃないの?」
「あっは!」
と思わず声を出して笑ってしまい、けれどわんちゃんの手にはハートの形のチョコが入った包みが握られており、嬉しそうではあるが気に食わなさそうでもあるみたいだ。
大変な感情でいるんだなあと思った私はわんちゃんの目を見つめると笑顔を作り
「ハッピーバレンタイン、好きだよ、わんちゃん」
そう言って私はわんちゃんの頬に口付けた。
わんちゃん、ハッピーバレンタイン!
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