7年ぶりの初めまして(全39話)
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いつものようにジョギングをしていれば折り返し地点で以前見たトレーナージャケットを着てフードを深くかぶって佇んでいる男の姿を見つけ思わず頬が緩んでしまう。
「皆、ここで折り返していつものように!」
「はい!」
そう声を揃えた門下生を横目にフードの男に近寄った。
「おはよう、どっちかな?」
「今は降谷かな」
フードの男は少し笑い私はもう一度降谷に「おはよう」と伝えた。そうすれば降谷は私を見つめ「おはよう奈々」と、そして、二人の時は降谷じゃないだろ?と笑顔を向けられれば「零」と口にするしかなく二人で笑いあう。
「それにしても奈々って体力あるよな。ここから道場まで往復二時間だろ?」
「慣れだろ、何年走り込んでると思ってるの?」
零だってそれくらい余裕だろと問えば、まあ、そうだけどと返されもう一度笑い合う。
そして私はとてつもなく気になっていたそれを口にしたのはそう、それ。
「美和子…警視庁捜査一課強行班係の佐藤美和子って知ってる?」
降谷は困ったように笑うと首を振り少し言えないかな、と、でもその彼の笑顔は隠し事をしている時の昔から変わらない笑顔で懐かしさに心がほわりとしてしまう。
しかし言えないという事はつまり知らないという事にも繋がるであろうし、もしかしてと考えていたのは警察の公安という部署。
しかも警視庁ではなく警察庁公安委員会警備企画課。家族にも親しい人間にも話すことが許されないそこにいるのかもしれないと思い降谷を見上げると
「ゼロ」
と呟いた。その言葉に降谷は一瞬肩を揺らしたので「なるほどねぇ」と小さく呟いた。
降谷は大きく息を吐き出すと
「奈々は鋭すぎるからちょっと関われないなぁ」
なんて困ったように笑い私はそれ以上は言わないことにした。だって分かっちゃったし。「もう会いたくない?」と問いかければ降谷は私をジッと見つめ緩く首をふると、出来ることなら毎日だって会いたいよ、でもそういう訳にはいかない。でも今日はあいたくなった?と続けるように口にすれば降谷は困ったように照れたように戸惑ったように笑うと
「奈々には敵わないな」
ポアロで会った時は驚いたけど嬉しかったし変わらないなって思ったけど、そう口を閉ざし、零はどんどん大変な状況に追い込まれてそう、と。
「何か知ってる?」
「なーんにも」
でも雰囲気と私と一線を置こうとして来る所が変わったかな?だけどこうして二人でいると昔と変わらない。
ふふと笑うと降谷も同じように笑い、俺の事はトップシークレットで頼む、奈々には迷惑かけたくないから…と。なので、私は笑い
「他人でしょ?」
「あぁ…ごめん」
「次謝ったら人前でれーくん!って呼ぶよ?」
なんでと戸惑った降谷にだってと切り出したのは、謝られるようなことは何一つしてないじゃん、仕事柄なんでしょ?だったら仕方無い、だから謝られるいみはない。
降谷は大きく息を吐き出すと
「全ての方がつくのが一体いつになるのかも分からないしそれまで奈々の心を束縛し続けてしまうし俺から離れるのだって許したくないけど」
もしそうなったらそれに口を出すことなんてできないし、する資格もないだろ?だから今謝った。
奈々は降谷を見つめると少し悩むそぶりを見せ
「零、れい」
奈々は内緒話をするように手招きをして降谷が身を屈めたところで軽く唇を触れあわせた。そんな一瞬のことに降谷は驚いたようにこちらを見たがすぐ悪戯っぽく笑うと、私の顔に手を触れ今度は降谷から長く優しい口づけを与えられた。
唇を離すと至近距離にある降谷のアイスブルーの瞳と見つめあい
「奈々」
「なに?」
「ポアロに来るときは連絡くれないかな?」
「なんで」
降谷はチラリと笑うと
「俺が奈々の前で"安室"でいるための心の準備が必要だから」
それに首をかしげると「そうなの?」割りと普通に安室さんだったけど、まだ準備したいの?と言葉を出せば、それに、
「?」
降谷はどこか拗ねたように顔を背け
「安室はタイプじゃないって言われた……」
俺結構傷ついたんだけど、そう言われてしまえばとうとう奈々は声を上げて笑ってしまい、だって不自然すぎるほど自然だったから仕方無いじゃん。
「笑うよ」
「笑うんだ」
まあまあ。
ポアロにいたり誰かといる時は安室として接するからどっちも好きでいてくれると嬉しい。その言葉に私は笑うも「欲張」なんて言ってしまい
「奈々に対してはいくらでも狡くなるさ」
「あはは!そっかそっか!」
そう笑い降谷の肩をポンポンと軽く叩くと、その手を握りしめられ指を絡まらせれると何も言えなくなり同じように握りしめ指を絡める。
「零」
「なに?」
「好きだよ」
「っ!!……俺も」
奈々は小さく笑うと手を離し「返事をおっそ」と言えば降谷はムスッとしたように私を見つめてくると背に手を回されぎゅうと抱き締められてしまった。
そのまま耳元で降谷が口にしたのは「好きだ」というもの。その吐息にくすぐったくて笑うと「ばーか」なんて呟いて降谷の肩に額を押し付けた。
「好きって言ったよ」
「私だって言ったよ」
「もう一回」
「一回だけ?」
降谷は黙りこむと私の頭に口付けてきて
「何度も言われたら俺も耐えるのしんどいけど、まだ聞きたい」
「ふーん……零」
「ん?」
奈々は顔を上げるとにこりと笑い降谷を見つめ
「大好きだからね」
それじゃ、私戻るからと言えば降谷はもう一度私の事を抱き締めてきて二人して笑ってその場を後にした。