7年ぶりの初めまして(全39話)
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なんとも言えないティータイムがあってからしばらくが経ったのだが、あの日家に着いた瞬間を見計らったかのように安室さんから一通のメールが届いたので本の少し笑いつつ道場に顔を見せ父に頭を下げると母屋に戻る。
もう少し遅くなるだろうと思っていたが安室というか降谷がちょっと責めるような視線で見てきていたため紅茶を飲み干すと早々にポアロを後にしたのだが……。
荷物をしまいスマホを片手に縁側に座ると指を動かしてメールを見れば美和子からもありその内容は『夕方にはニュースになるわよ~?』というものでそんなこと言われてもである。まあ、人一人助けたので名前が出るかもしれないけど大丈夫?と続いていて『出来ればやめてほしい』と送っておいた。それと一緒に久し振りに会えて良かったとも送り一息つくと安室さんからのメールを開いた。
『無事に帰れましたか?』
とあり、やはり敬語の安室は慣れないなぁなんてぼんやり考えてしまう。そして次に思ったのは、私また安室さんに会うつもりなのかというものであり、まあそのつもりなのだろうかと頬が緩んでしまう。
それにしても安室は「つい」であろうが私の名を呼び捨てにしてきたのはやはり多少は焦ったからであろう。
久し振りの降谷だったと思いつつ首から下がっている指輪を撫でつつどう返したものかと考える。
足を揺らし空を見上げれば真っ赤な世界が作り出されておりそっとため息一つ。
「あー…降谷、調べてみようか……」
いや、やめるか。そのまま背中を伸ばし倒れこめば「こら奈々ちゃん」なんて声と供に母がトタトタと廊下を歩いて来る所であり
「だらしないわねぇ、麗しの乙女が」
なんて言われてしまった。
麗しの乙女ってなんだよ……
「そろそろいい人見つけなさいよ?」
「母さん勘弁して…」
首に下げた指輪がシャラリと落ちコツンた廊下に音を立て母が私の横に膝をつくと私の指輪を見つめ「それ、零君とのよね?」と見つめられたので曖昧に返事をしながら身体を起こし指輪をしまう。そうすれば母はそれ以上何かを言うこともせず
「暇ならお夕飯手伝って頂戴」
「因みに献立は」
「唐揚げよ」
「よし、やる」
その言葉と供に立ち上がると母はキッチンへ、私はスマホを自室に置き袖を上げ直しながらも同じようにキッチンへと向かった。
そういえば安室さんにメール返してないや、まあいいかと考え直し母と笑い合いながら夕飯の支度を終え父、母と供に夕食をいただく。
そうしながらニュースを見れば今日の落下事件についてが報道されており両親が口にしたのは「奈々でしょう」というもの。
「…何でそう思うの?」
と呟けば「こんな無茶をする人なんてそういないだろ、それに今日は米花町まで行くと言っていただろう」時間的にもそう思うのは仕方ないだろうな。
「咄嗟だったんだよ。歩いていたら上から落ちてきて」
骨折覚悟だったけど運良く無傷だし目の前で死なれるよりましでしょ?そう答えていれば父も母もため息を吐き出して「奈々ならそう簡単にどうにかなることはないだろうが、やはり無茶はするな」とたしなめられてしまった。
そうして夕方のニュースは次の情報へと移り、三人での静かな夕食を終わらせ食器を洗うとその間に母が風呂の用意をし、父は縁側で日本酒を口に運んでいる。
それを横目に見つつ部屋へと戻り着物を脱ぎ寝巻きへと着替えると思い出したようにスマホを手に取った。そこには美和子からメールの返信が来ていて『ニュース、一応奈々の名前は伏せておいたけど見た?』とあり安室さんからのメールを返すことにした。
『咄嗟だったけど私の事呼び捨てにしたね』と送ればすぐ『当然だろ』とありどうやら降谷モードのそれらしいと笑ってしまった。
『心配してくれてありがとう、もう夕食も済ませて後はお風呂に入って寝るだけ』
よかったら降谷もくる?
と贈りそうになったがその文章は削除して『降谷もちゃんとご飯食べて寝なよ、また会えたら嬉しいけど』迷惑じゃなかったらまたポアロに行くね、それじゃあお休みなさい。
風呂から戻ってメールを見れば降谷らしく『お休み、またな』と、再び笑ってしまった。