この世界で迷子の僕を(全80話)



ジンもウォッカも気にしていなかったがリレは新聞を見ながらポツリと思ったのは、やはり工藤新一の死亡記事。

まあ、あるわけないのを知っているのは今のところ僕だけだし、僕以外ではこの後シェリーさんと他の組織の人間が彼、工藤新一の家を訪れるのは2回だけ。それまでジンは工藤新一のことを覚えているのだろうがシェリーさんが死亡へ改変するまでまだ少し先だと思われるのだが。

新聞をテーブルに置き時計を見上げればもう朝の9時を回るところ。
昨日遅くまで動いていて、必然的にリレも遅くまで過ごしてしまったがジンは帰宅したらそのままベッドに潜り込みリレはそんなジンを横目にしつつ風呂へと入った。

浸かりはしないがシャワーだけ浴びベッドに向かえばジンに引きずりこまれ抱きしめられる。

タバコの香りが鼻先をかすめ足までも絡まされてしまえば 身動きはしない。なので、とそれを甘受していればジンの唇がリレの首筋に寄せられ強く吸われた。

チリっとした痛みを感じながらも暗闇の中のジンを見つめればモスグリーンのとても眠そうな瞳と目が合い、そして、ふ、と笑われ


「とっとと寝ろ」


と言われてしまえばリレも笑うほかなく、そっとジンの背中に手をを回すとギュウと抱きしめ返す。そしてリレもジンと同じように目を閉じ眠りの世界へと落ちていった。

ふんわりとした眠気に抗うこともせず身を委ねていれば、あっという間に落ちていき、朝方であろうジンが起き上がったり気配にリレも目を覚ます。
やはりジンが目を覚ましたようだ。

その衝撃に意識を浮上させればジンが長い髪を搔き上げながら欠伸をしており、裸のままジンは寝室から出て行ってしまいリレはその背中を見つめながらも再びベッドに倒れこむ。

まだ朝日が入り込んでくるまでそれほどの時間ではないが、それでもうっすらと日が入ってきている。
布団を引き上げで二度寝を決め込んでいればシャワーの音が響いてくるのを子守り唄にしつつウトウトとしていればいつの間にか眠ってしまっていたらしく、スルリと頬を撫でてくる優しい感触に目を覚ました。

いつの間にかうつ伏せになって枕を抱きしめていたらしいが、そのくすぐったさに目を開けばジンの瞳がリレの顔を見下ろしていて、そのジンの瞳を見てリレは笑みを浮かべながらも起き上がりジンの腰に抱きつき完全に覚醒した。


「ジン、おはよ」


その言葉にジンは頭をぐしゃりとリレの頭を撫でると


「来い」


と口にし、リレもキョトンとしながらもその後をついていく。


「今日は夜まで仕事はない、朝飯買いに行くぞ」


と言われる。
笑って頷くと先ずはと顔を洗い服を着替えていればジンはすでに用意ができているようで玄関で靴を履いている。
そんなジンにパタパタと駆け寄り同じように靴を履き玄関を後にした。

そうしてコンビニまで歩き朝食、ついで昼食も買い、リレは新聞も手に取った。

基本的にジン達の生活スタイルは毎日家に帰ることはないので新聞を取っているわけではない。なので、たまにこうして帰宅すれば新聞を買い目を流していくが高校生探偵の死亡記事はない。

そうして一通り目を通していれば目に入ったのはとある会社の爆破の記事。

そう、昨日遅くまでは動いていたのはこの会社を爆破、及び破壊というそれで、ここに中西に関連していた奴らや取り引き先であったそれらも全て潰すと言っていた言葉のそれだがジンはわざわざそれをリレに伝えたり教えたり話したりはせず、リレは車の中で待っているようにと言われていた。

1人きりはまだ少し怖かったが、けれどジンはしっかりと車にロックをかけジッポをリレ持たせると


「すぐ戻る」


と口にし行ってしまった。
それにそっと息を吐きながら 静かに待ってればジンはウォッカと共に本当にすぐ戻ってきてくれて、ジンは運転席に乗りながらジッポを受け取り

「いい子だ」

と笑ってくれた。
そうして夜中の2時半を回った頃に帰宅し潰れるように眠ってしまった、今朝の今である。

ジンもリレも朝食を食べジンはテレビのニュースを見つめ口端を上げ笑った。


「これで終わりだ」


という言葉は耳に入りリレは顔を上げると首をかしげてしまいジンの手はリレの頭を撫で

「もう大丈夫だ」と。
その言葉に一瞬何がだろうかとしていればジンは笑みを絶やさず


「お前に手を出すような奴らはもういねぇ、安心しろ」


そう言われ、リレは「あぁ」と納得したように頷き、改めてジンの優しさが身に染みてしまう。


「ジン、ありがとう」


率直な感想と感謝を述べればもう一度、今度は先ほどよりも強く頭をぐしゃりとかきまぜ撫でられ、ジンは


「コーヒーだ」


と呟き、リレは新聞を畳みコーヒーを淹れるために立ち上がった。

ジンにはブラックを、自分にはカフェオレを淹れるとジンとチラリと見つめ合いながらもコップに口をつけ、たった今淹れたそれを互いに喉に流し込んだ。


工藤新一はどうなるか。
原作ではどうなるか。

今後僕は組織のために、いや、ジンのために動き続け、ジンによって居場所をもらい、もう「迷子」ではなくなった。
だからジンのために、例えそれが蕀の道だと分かっていても僕にはもう「この道」しかない。
ジンのいない道は選ばない。

工藤新一、それは僕への棘となるだろうが構わない。
あの日「迷子だった僕」を助けてくれたジンに、ただただ着いていくだけだ。
そう、リレは小さく微笑んだ。
それを見たジンも、同じように口端を軽く上げ、笑っていた。









(完)

最後までお付き合い頂きありがとうございました!
「居場所」と「ジン」を求めた主はその求めた「先」を見据え組織のために「ジン」のために動きます。
連載開始から長い間が経ちましたが、これが一応の完結となります!
更新を楽しみにして下さっていた皆さん、改めて、ありがとうございました!
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