この世界で迷子の僕を(全80話)



『高校生探偵またのお手柄』

そんな新聞をリレはぼんやりとした気持ちで見つめていればジンがリレのいるソファーの横に座りテレビを見ている。
別に喧嘩をしているわけではないが、2度目の誘拐以降リレが外出しようとするのに否定的気味になっており、例え着いてきたとしても車からは 降りず後部座席でじっとしていてウォッカは気にしているが、ジンもリレも何も言わず過ごしていく。

リレは外に出たがらないがリレの仕事もあるのでジンがリレの手をしっかりと握りしめていれば外へと出てくれている。だが、どこか緊張したようにしているのは分かってしまう。

そうリレは外の世界に怯えているのだ。

それはきっと犯してこようとしたそれと、また中西関連の人間たちに拐われてしまうのであろうかという恐怖があるのであろう。
回せるところまで手を伸ばしたし中西関連の残党ももういないはずだが、リレはジンの家に引きこもってしまいジンはそんなリレをチラリと見下ろしたがリレはぼんやりと新聞を見ているだけでジンの視線には気づいていない。

ジンが一緒にいなくても1人で過ごせるようになったのかと思いきや、残念ながらそうでもない。
平気な日もあるがそうでもない日もあり、それは一体どういう時かと大体分かる理由は簡単だ。出て行こうとするジンに着いてくるのか来ないのか、その2つである。

リレを、というより、他人を気遣うジンこ姿にウォッカも シェリーも、そして他の人間たちもどうしてすればいいのかもわからないようであり、けれど手を握りしめたまま


「リレ仕事だ」


そう声をかけてきたジンの言葉にリレは従いはするもののジンの側を離れようともせず そうしてから久々のジンの休日であり冒頭に戻る。

リレは新聞をぼんやりと眺めえいるだけでジジンはそんなリルの頭ぐしゃりと撫でてきた。
リレはそんなジンの手に一瞬ビクリと肩を跳ねさせたが、すぐジンしかいないことを思い出したのか何なのかリレは肩の力を抜き新聞をたたみテーブルの上に置いた。が、その瞳は頼りないもの。


「リレ」
「なに?」


リレはジンの低い声に首をかしげながら見上げれば、ジンは前髪の隙間から見えるモスグリーンの瞳で見つめてきていてリレはもう一度

「なに?」と。

ジンはリレを見つめているが その瞳はふっと柔らかくなり


「散歩するか?」


ここ1週間リレは外出しておらず、ただずっとソファーかベッドかのどちらかにしかいておらず、そしてジンの言葉にリレは顔を俯かせしばらく悩むと顔を上げ

「行きたくない」

と小さく小さく呟いた。
それでもジンは髪を軽く結わえ立ち上がり


「行くぞ」


とリレの腕を掴んだ。
リレはまたびくりと肩を揺らし、不安気な表情を見せるとジンは低く笑い

「そこのコンビニまでだ」


と。そういえばジン、タバコを吸っていない。もしかしたらそれを買いに行きたいのだろう。外は怖いがジンの誘いに一度断ったが掴まれ立たされてしまえば行く他ないだろう。

リレはノロノロと立ち上がり ジンと揃いで買ったカーディガンを羽織るとジンとともに1週間ぶりの外の空気を吸い込んだ。

ひんやりとした空気を吸うがリレの心臓はドキドキと高鳴っていき、ジンの手を握りしめてしまう。
それに答えるように握り返されればホッと息を吐き出した 。

ジンはゆっくりとリレの手を引きながら歩きエレベーターに乗ると空いた手でリレの髪を撫で、すぐエントランスを抜けマンションを後にした。

時刻は昼時だがジンと向かう コンビニはそこまで離れた場所にあるわけでもないので大きく息を吐き出すとジンに歩調を合わせ足を動かしていきあっという間、ということでもないがわりとすぐコンビニが見えジンとリレはコンビニに入り込んだ。


「ついでに昼飯でも買うか」


と呟くジンに頷くがジンの手を離しはせず、ジンと共に弁当コーナーまで足を動かした。

人はいるにはいるが、弁当はまだ揃っており2人して見ていればジンはサンドイッチを手に取り、リレはおにぎりを手にする。
ついでお茶を買いにレジへと行けばやはりタバコが欲しかったらしくジンは愛煙している銘柄のタバコをカートンで頼み購入するとすぐ2人は部屋へと戻り、リレはおにぎりを食べながらジンを見つめポツリと口にした。


「……ありがとう、ジン」


そのリレの言葉にジンはタバコを吸いながら少し笑うとリレの頭をぐしゃりと撫でてきた。









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