この世界で迷子の僕を(全80話)
とある夜中。ジンの腕の中に引き寄せられ抱きしめられてしまっていたリレはパチリと目を覚ましジンの寝顔を見つめる。
今日も仕事終え家へと戻り、リレを抱きつぶしてから2人して眠りへ入っていったのだ 最近リレは夜中に目を覚ましてしまう。ジンとの行為には慣れたようなそうでないような、抱かれてからはすぐ眠ってしまうが、けれどもそれも少しの間だけ。
気絶するように眠ってからジンはリレの寝顔を見つめながら眠るのだがそうそれから少ししてリレは目を覚ましてしまう。
静かなジンの寝息を耳にしながらジンを見つめていてもジンが目を覚ますこともなく、ジンの腕の中で強い力で抱きしめられているリレが目を覚ましたことに気づくこともなく数日が経つ。
だからと言って昼間に眠っているわけでもなくリレは生欠伸をしながら車内で話すジンとウォッカを見つめてしまう。 そんなリレに気付いたようなジンとウォッカはリレをチラリと見て口にしたのは
「眠いのか」
というもの。眠いと言っても眠くないと言っても両方嘘になるが別段伝えることはせず へらりと笑い首を振る。
ジンは探るような視線を少しだけリレに送るが、それ以上追求してくることもなくそして今日も今日とて夜中にリレは目を覚ます。
ジンの腕の中はすこぶる心地良く気持ちいいのだが何というか少しだけ力を緩めて欲しいというのは贅沢であろうか。
ジンが起きないように最善を尽くしジンの腕の中からそっと出て起き上がると足音を立てずリビングへと向かいホットミルクを口にするがジンが起きてくる気配はない。
カーテンもないリビングにある窓から 月の光が室内を怪しく照らしておりリレは窓を開けベランダへと足を踏み出した。
今日も良い月だなあと夜風を感じていれば冷たい風が体を冷やしていきリレは生温くなったミルクをちびちびと口に含んでいれば、じきにコップの中味は空になりすっかり冷えてしまった体を震わせ振り返れば、そこにいたのは上半身裸のジン。
それに驚いていれば、眉間にシワを寄せベランダに立つリレを見下ろし
「何もしている」
と低く低く問いかけられた。どうやらジンは少しだけお怒りのご様子だ。
なぜだろうと疑問に思いつつも室内に戻ろうとすれば、それより先にジンがベランダに足を踏み出しリレの両脇に手を置き壁ドンのような仕草をされてしまう。
な、何だろう、と思いつつ
「ジン?」
と問いかけ見つめていればジンの顔がゆっくりと近づき、耳元で囁かれたのは
「最近、お前、夜中に起きてるな」
びっくりだ。知られていないと思っていたが気づかれていたのかと思いつつジンの瞳を間近で見つめてしまえばリレにはどうすることもできず素直に小さく頷いてしまった。
「……そうか」
「え」
もしかして、今のって、ただカマカケをしてきただけだとかそういうことだったのだろうか、もしそうだとしたら僕はチョロすぎる。
簡単に頷いてしまったとしていればジンの左手がスルリと リレの頬を撫で
「ヤリたりねえか?」
そう耳元に口を寄せられ低く甘く囁かれてしまう。
その声にゾクリとしたものを感じつつも小さな声で「ジン」と呟いてしまった。
そうしてリレの耳元から顔をはなしリレはジンの「ヤリたりねえか?」の言葉に心臓をドキドキとさせてしまい必死で首を横に振り「そんなことない」という意思表示を示す。
もう一度ジンはリレの頬を撫でると顎を上げさせられ、ジンはリレの唇顔をに重ねてきた。
フワリと鼻先にジンのタバコとコロンの香りを感じ冷たくも熱い口づけにリレは反射的に目を閉ざしてしまう。
リレの唇をジンの舌が舐めてくるその感覚にゾクゾクとしつつも薄く開いてしまった口の中にジンの舌が入り込む。
「っは、じ、ん……?」
舌を舌で掬われつつは途切れ途切れにジンの名を呼び、恐る恐ると瞳を開けばモスグリーンの鋭い視線にさらにドキッとしてしまう。
深いが浅い口づけに一体どうしたのだろうと混乱しそうになっていればジンの舌が口の中から抜けていき、ジンとリレの額を合わせられる。
本当に、一体、どうしたのだろうか、と、問いかけようとすればジンに引き寄せられるとひどく優しく抱きしめられた。
「ジン?」
ポツリと問いかけたがジンは何も言わずさらに強い力で抱きしめてきて本当に訳が分からなくなってしまいジンの腕ほ中にいながらもジンを見上げジンは黙っているがリレの体を抱き上げるとベランダの
窓は開け放ったまま寝室のベッドへと拐われてしまいリレの手にあったコップはテーブルに置きギシリと押し倒された。
「やるぞ」
「え」
否定はさせてもらえなかった。
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