この世界で迷子の僕を(全80話)


リレが組織内でコードネームをもらったという話は組織内にいる様々な人間に知れ渡っていた。それはリレがジンに聞かれたその日に広まっていき、コードネームを貰えない 末端たちには酷く屈辱的なもの。己たちも役に立っているはずなのになぜあのガキだけがそんなにすぐコードネームをもらえるのか、と、とにかく悔しいというそれだけだが リレがそんなことに気づくこともなくジンに言われたことにポカンとしてしまったのはしょうがないだろう。

今日はもう外には出ないだろう、ジンはタバコを吸い終えると


「リレ、コーヒーだ」


と口にし、リレはハッとすると頷き立ち上がる。時刻はもうすぐ夕方の5時を回るところでありリレはお湯を沸かすとリレはジンにはブラックを、自分にはカフェオレを作ると2人分のカップを持って ソファーに近寄りジンにカップを差し出しながらジンの横に再び腰を下ろす。

ジンは熱々の、リレは冷たいカフェオレをにする。ジンの好みのものすごく苦いコーヒーだがりとは牛乳で割りちょっとずつ飲んでいく。

そういえばこのベルモットさんは知っているのだろうかと考えるも携帯に手を伸ばすこともなくソファーの上で膝を抱えるように丸くなりカップをテーブルに置くと鳴り響いたのはリレの携帯。
もしかしてベルモットさんではと思いつつ携帯を手に取り コールオン響くそれを開けばそこには『ベルモットさん』という文字。

何かあっただろうかそういえば最近ベルモットさんともやり取りはしていなかったが、それとも……

そこまで考えながらもすぐ電話に出ればベルモットさんの声が耳を揺らしてきた。


『組織入りおめでとう』


まさかの言葉に驚けばベルモットさんは小さく笑い、幹部クラスには知らせが入るのよ 、知ってた?

「いえ……知りません」


ジンったらそういうことは教えないのね、なんて呟き、本当なら私も祝ってあげたいけど、ジンに任せるわ、横にいるんでしょ?

…ベルモットさんどこかで見ているのではと考えながらも リレは笑って

「はい」と、横にいますと答えそしてしばらくのやりとりをし、

「そういえばベルモットさん、仕事中ですか?」


そう尋ねればベルモットさんは笑ったままに
『今は寝るところ』

ここのところ仕事で立てこんじゃって嫌になるわ、だからリレを息抜きにさせて付き合ってもらっているところよ、と。
リレはなるほどと頷きベルモットと会話を楽しんでいればジンの眉間のシワが濃くなっていき深く刻まれているがリレは気づこともなくベルモットと共に笑っている。
いや、ベルモットが笑っていることはジンが知るはずもないのだが今のリレの緩みきった顔がベルモットも笑っていることを教えてくれていて、それでもそのまま続きそうな会話はジンがリレの携帯を奪い取ったことで途切れてしまい、キョトンとしながらも

「あっ、」

と呟きリレの携帯を耳にあて


「とっとと寝ろ」


そう一方的に通話を切られてしまった。電話越しでベルモットは小さく笑うと携帯を置き


「仔猫ちゃんの飼い主は厳しいのね」


とワイングラスを傾けた。

携帯を取られたリレは一体どうしたのだろうかとジンを見つめるとジンは携帯をテーブルに放りのリレのことを抱き上げバスルームに連れ去られてしまった。それの意味することを理解したリレは顔に熱が集まるのを感じ、ジンの腕中ではわはわとしてしまう。

抵抗という抵抗はしないしできないでいる。
それでも聞いてしまうのは


「ジン……するの?」


とそんな小さな呟きにジンは口端を吊り上げると


「そうだな」


なんて呟き、バスルームに下ろされた。









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