この世界で迷子の僕を(全80話)


しばらく走ってたどり着いたマンションに3人は足を踏み入れるとウォッカと別れると リレとジンは部屋に入る。

しばらく戻っていなかった部屋は空気がこもっておりリレはコートを抜きながら窓まで歩み寄ると窓を全開にした。
本当は掃除もしたいのだがその道具はないだろうと換気するだけに止めることにする。
そして全室の窓を開けていればジンはそんなリレの背中を見ながらも、それほど気にもせずコートと帽子を放りおきタバコを口に加えた。

リレはそうしてジンの元に戻ってくると2人分のコートをハンガーにかけタンスにしまい込みジンの元に戻ればジンは早々に一本吸い終えており ジンのヘビースモーカーぶりに驚いてしまうがいつもすぎると灰皿を見つめつつソファーに腰を降ろしているジンの横に座り込む。

ジンは煙を吐き出しながら腕時計に自然を落としつつテレビのリモコンを操作した。
何か見たい番組でもあるのだろうかとしていれば、とあるチャンネルに切り替えると番組が映し出されお昼のワイドショーなんてものがやっており、ジンは携帯を操作し

「やれ」

と呟いた。
一体何をやるのだろうかとしていればジンは口端を吊り上げたまま携帯をテーブルに置き足を組み替えると不意に画面の上にテロップが表示されるのはそうそれ。
……もしかしてこれ、さっき僕が見ていた会社の監視カメラで写っていた黒服の男たちの仕業だろうかと思う。そして指示を出したのはジンであろう。


『番組の途中ですがニュースをお知らせします』


そう映し出されたのは水無怜奈であり、カメラには炎上している会社が映し出されジンの携帯が鳴り、タバコをくわえつつも携帯を手に取り何事かを見るとニヤリと笑いメールを打ち返し煙を吐き出した。

水無怜奈はリポートを続け画面の中では様々な人間が炎上しているビルを見ながら眺めておりテレビの向こうで2度目の爆発が起こった。
建物は崩れ燃え上がりリレとジン、というかジンのいる組織に手を出すとこういう目に合うと心の深いところまで教えてくれる。

恐らくどの番組もこの爆発事故についてやっているに違いない。この分なら夕刊になるに違いない。ジンは吸い終えたタバコを灰皿に押し付けるとフイとリレを見つめ笑い


「さっきシェリーに聞いていただろう」


なんて言われてしまえば隠すことも嘘を吐くことだってできるはずがない。なのでリレは素直に頷き


「不用意に俺たちの組織に手を出すとこうなるんだと」とジンは紡いできた。
遠い記憶でシェリーが組織から逃げた後、シェリーが関わってラボ、というか製薬会社は今と同じように炎上していたようなと思い返す。

そう言えばジン、リレはチラリとテレビを見たがすぐ視線を戻すと


「僕に話すことがあるって、言ってたけど……」


「何?」そう首をかしげてしまった。
ジンは「ああ」と呟き、リレを見下ろすと


「ボス ……“あの方”にお前のことを知らせてしばらく経っているが、」


そこでジンは言葉を区切りリレの金の瞳を真っ直ぐに見つめ笑みを浮かべ一言で伝えてくれた。


「お前に コードネームを与える」


ジンたちと過ごしてもう半年くらいになるけれど、僕は翻訳以外には何の役も立っていないのに、今日、さっきみたいに簡単に拐われてしまってるのに僕にコードネームを与えていいのだろうか。

一気に緊張してしまっていればジンの手がゆっくり伸ばされリレの頭をぐしゃりと撫で


「コードネームはリレ、そのままだ」


と。


「ジン……」
「なんだ」
「僕役に立ってないのに、さっきみたいに迷惑をかけたのに、」


本当にいいのだろうか。
ジンは黙るとリレの顎に手を添えると顔を上げられ


「お前は今一自分に自信がないみてえだが、」


一々他の人間の手を使う必要もない上に黙って俺に従って動いているし、“あの方”の命令でもある。お前はもっと自信を持て。リレ、お前は気づいていないだろうが組織に多大な利益をもたらしているんだよ、いいか?お前はもうこっち側の人間だ。

その全てを聞いたリレはジンのことを見つめると


「僕は一人で行動させたりするの?」


ジン薄く笑うと

「お前の扱いは今までと変わらない」


俺かウォッカの言うことに従え、俺の言うことは絶対だ、わかったな?

そう撫でられながらもほっとしたようには笑みを浮かべるとジンに近寄り、ぎゅうと抱きついた。


「ジン」


これからもよろしくね!と口にしたリレに、同じようにジンも笑ったままで優しい空気が広がった。









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