この世界で迷子の僕を(全80話)
走り続ける車はどこに向かっているのだろうか。
そんなことを考えながらジンとウォッカが低い声で話し合ってるそれに耳を傾けつつリレは携帯を取り出した。
海沿いのコンテナに着いた時ベルモットからのメールに視線を落とせばそこにはジンやウォッカの機嫌が上下していくその内容にリレもそっと息を吐き出した。
『確か今日の取引相手は内田だったかしら?少し手を回しておいた方がいいわよ』
リレ、そう伝えておいてね、なんて内容。
リレからしたらこの取引相手の内田とかいう奴がベルモットも知ってるほどの問題を抱えている人間なのかと思ってしまいチラリと2人を盗み見る。
2人は変わらず話し合っているのだが、だいたいの内容は内田に関連している人間たちは全て消すべきだとジンは口にし、ウォッカも運転しながら相槌をうちジンは携帯を耳に当て
「今どういった状況だ」
そう誰かと始めている。
誰だろう、なんて考えてもおそらくは末端のパシリに指示を出しているだろう短く指示をだし終えジンは通話を切り 再び(今度は別人にであろう) 電話をかけ低く低く指示を出している。
そうして数度ほど何人かに指示を出していたジンは携帯をしまい眉間に手を当て息を吐き出し何事かを考えておりウォッカも多くもそんなジンにちらりと視線を送り黙っておく。
時刻はすでに14時を迎えさすがにベルモットも眠ったのであろうそう思いベルモットには連絡を入れていない。
それにしても、とリレは自身の横にある内田、という男が渡してきたアタッシュケースをチラリと見つつ難しい表情でいるジンを見つめウォッカを見る。
そしてジンはふと思い立ったようにやり
「リレ、アタッシュケースの中を見ろ」と。
「え、いいの?」
それはもう本心であり、しかしリレはそれ以上ジンの言葉を聞き返そうとはせずそっと アタッシュケースを開いた。
そこにはぎっしりと札束が敷き詰められておりリレはそのままを伝えながらもふと違和感を覚え、札束をどかしてそこに隠してある白い書類を取り出した。
「ジン、これ」
そうしてジンに書類を差し出せばジンはそれを受け取り中身を確認し眉間にしわを寄せ ほんの数枚の書類に目を通し終えると低く笑い怒りが垣間見えてしまい車内に緊張が走る。
「あの野郎…いい度胸してるじゃねえか……」
そんな呟きと供ににジンは書類を荒々しくリレに返しリレはそれをアタッシュケースにしまい込む。
もちろんリレがその書類に目を通すことはせず、ただただ淡々と作業と、いうことでもないがそれをこなしジンは再び携帯を取り出すとプッシュした。
相手は一体誰、と思えば数コールして相手は出たようでジンの言葉の中から「ベルモット」そんな単語が出てきた。
この距離では車の音もあるし声だって聞こえては来ないが
『今寝てたのよ』
そんな言葉だけは耳に入ってきた。
「内田だが、お前何をした」
うわ、もしかしてさベルモットさん内田に何かしでかしたのだろうか。
ジンの低い声と怒りと苛立ちが混ざったような声色にウォッカとリレも息を殺し二人の会話に(リレは、だが)気を向けず外の景色に視線を向けた。
少々 話し合ったジンとベルモットだが二言三言、言葉を交わすと、ジンはさらに不機嫌そうに通話を切りすぐリレの携帯が鳴り響いた。
今の流れだと相手はベルモットしかいないし、ディスプレイに映ってるのはやはりベルモットさん。
「もしもし」
『ごめんなさいね、ジンの携帯のままでもいいかもしれないけど今何かしているでしょう?』
そんな 含み笑いたっぷりの言葉にリレはジンのことをチラリと見て
「そうみたいです」
そう答えた。
ベルモットの小さな笑い声が耳に響き
『内田のことなんだけど、リレからジンに取り成してくれないかしら?ちょっとした入れ違いなのよ』
とベルモットは笑い、それでもリレは思うところがあり
「ベルモットさん、車に発信機みたいなつけられたのも関係あるんでしょうか」
『あるわね』
あまりにもあっさりと言われたことにどう返せばいいかもわからずで黙ってしまっていれば
『リレが多言語を理解できるというの知られてしまっていてね、あなたの行き先を突き止めようとしたんでしょうね』
… ベルモットさん、そんな恐ろしいことを……そう更に黙り込んでしまえば全くそんなことは思っていないような口調で『ごめんなさいね』なんて紡がれて、ジン程ではないが思わずため息を吐きちょっとした頭痛と恐怖を覚えてしまう。
それって確実に僕狙いじゃないですか……
そうポツリと呟いてしまえば ベルモットさんは小さく笑い もう一度ごめんなさいね、なんて。
「ベルモットさん、他にジンに伝えそこなったことはありますか?」
『そうねぇ、』
今のところ思いつくことはないわと帰ってきて、そういえばベルモットさん、今そっちは何時ですか?
『あら、なんで?』
「寝てたのかな って思いまして」
そう言えばクスリと笑い
『優しいのね。今は夜中の1時を回るところ、ちょうど寝れそうな時にジンから電話がきて起きちゃった』
そんな声と言葉を聞いていればもう少し付き合って、そうね30分くらい付き合ったてくれば私の気も済むから、悪く思うならジンにして、と。
まあそれくらいならいいだろうし別に悪いことなんて少しもないだろう、なので「大丈夫ですよ」と答えた。
ジンとウォッカは何事かを話し込みリレはベルモットと他愛もない会話を進めていく。
だけれどもベルモットさん。世界の大女優がそこまで起きていて肌とか美容とか色々大丈夫なのだろうか。いや、でもも変装とか余裕でかますのだから疲れ目とかも全てどうにかなるんだろうな。
そうベルモットと会話をしながら考えてれば不意にジンがリレをチラリと見やり、リレはミラー越しにジンと目が合い何事かを言おうとしている。
30分と言っていたし、そろそろいいだろうベルモットさんと思っていればその一瞬の雰囲気でリレの方で何かあったのかベルモットは悟りくすくすと笑いながら
『ジンでしょ?』
と。思わず苦笑しつつ「はい」と答え
『それじゃ、お休みなさい』
『good boy』そうつむがれ ベルモットとの会話を終了させた。
リレは携帯をしまいジンを見つめればベルモットとのやり取りを教えろと言わんばかりのそのジンにリレは大きく息を吸うと
「その取引相手、さっきの人ですけど…僕のことを知って居場所を知ろうとしての発振器だって、」
「……ほう」
「後は特に何もないそうだけど、僕と言う存在が様々なところに知り合わたっていて…」
1人にならない方がいいとも言っていたから…そうポツリと呟けばジンはそれはもう苛立たし気に舌打ちを一つこぼし
「これからは何があっても俺のそは側を離れるな、わかったな」
リレはコクリと頷き
「わかった」
と答え、ジンは再びウォッカと会話を始めリレは小さく長く息を吐き出した。
疲れる位置にいるな、僕。
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