この世界で迷子の僕を(全80話)



久方ぶりにジン、ウォッカ、リレは自宅へと帰り着き、エレベーターを降り

「しばらく待機ておけ」


そうジンはウォッカに指示をするとそのまま別れリレはウォッカに「お休み」と声をかけウォッカはそっと笑いリレの頭をポンと撫で
「おやすみなせぇアニキ、リレ」

と返してくれた。
まあジンはそれにはいつものように返事はしないがしかし、今日は比較的に気分と機嫌がいいらしくそれはもう珍しいことに

「ああ、おやすみ」

なんて口にしていて。思わずリレもウォッカも驚きに目を見開いてしまったがジンはチラリとリレを見下ろし

「行くぞ、リレ」


と歩いて行ってしまったそのジンの後追いかけながらもリレはもう一度ウォッカに頭を下げポカンとしながらもウォッカは手を振ってくれてリレもバイバイと手を振り返す。

ジンは自宅の鍵を開けるとリレも室内へと入ればジンは大きく息を吐き出しながらコートと帽子をソファーの背にかけバスルームに消えてしまいすぐ姿を現した。
どうやら顔を洗ったらしくほんの少し前髪が濡れており、ソファーに腰を下ろしながらタバコに火をつけ吸い込んでいる。
そうして煙を吐き出したジンと同じようにコートを脱いだリレに「腹が空いてるか」なんて問われてしまうがお腹は別に空いていない。
その旨を伝えればジンは「そうか」と頷きもしかしてジンはお腹が空いているだろうか、そうハッとすればしかし ジンは低く笑いか

「俺も別になんかい食いてぇわけじゃねえ」

そう呟きどうやらリレのこと思っての言葉なのかとついつい頬が緩んでしまいジンはチラリとリレを見ると

「酒だ」

と口にする。
リレは笑って頷くとジンのボトルとグラスをジンの元へと持っていき、ジンはグラスを差し出しを注ぐ。

いつもの適量だと思われる量を注げばジンは「いい子」だと笑ってグラスを傾ける。
空いたグラスに何度か注ぎ入れていれば機嫌が良くなってきたようでグラスに一口残っていたそれをリレに差し出し「付き合え」、と。

いやいやいや何を言ってるのだと言いたくなるがそれでもジンの誘いを断るわけにもいかず一口くらいならとグラスに口をつけ、こくりこくりと飲み干した。
直後、喉が焼けるようにしみてきて頭がグルリと回り小さく呻いてしまう。
そんなリレを見てジンはおかしそうに笑いボトルの残りも飲み干した。

これでボトルも空になりジンは煙草をもう一本口に咥え吸い込み吐き出していて、そして やはりというかなんとか たった今火をつけた煙草をリレは差し出され、それにはついつい困ったような表情が変わってまったのは許してほしい。

ジンの吸っている煙草の香りはどこか甘く感じてしまいそれだけで十分であると伝えたくて首を振れば、けれど許してもらえるはずもなく無言で差し出された煙草をリレはジンとを見比べれるとジンどこが楽しそうに笑っており渋々と受け取りそっとほんの少しだけ吸い込んだ。

口の中に苦い香と微かな甘味に眉間にシワを寄せるとケホケホと咳をしながらジンに煙草を返した。
そんなリレをジンは上機嫌に笑い

「もう1回吸うか」と。

リレはそれにコホコホと咳をしながらとブンブンと首を振り「もういい」と 精いっぱいに伝えた。

ジンは「だろうな」初心者にはまだ 苦いだろうな、なんて言っていたが吸ってもいい歳じゃないし僕はジンが吸っているのを横で見ているだけでいい、ジンの吐き出す香りが好きそうポツリと呟けばジンは一瞬止まるとリレの頭をぐしゃりと撫で


「煽るんじゃねえ」


なんて言っていたが別に煽るようなことなんて一言もと言っていない。

そうキョトンとしながらも頭がふわふわし始める。ジンの酒のせいだろう、それしかない。
リレはへラリと笑うとジンにぎゅうと抱きつきジンはそんなリレの突然の行動に陣驚き 自然と煙草をリレから遠ざけるように動きそんな自身の行動に眉間にシワを寄せてしまったが、それに気づく人物は生憎と存在しないのですぐ表情を戻し


「おい、リレ」


そう呼びかける。
リレはヘラヘラとジンの首筋にすりより「ジーン!」と頬を緩ませ酷く緩い顔で笑いかけてくる。
ジンはそれに息を吐き出し煙草を灰皿に押し付けるとリレの頭をポンポンと撫でつつ


「ヤルか?」


と楽し気に問いかければ赤く染まった頬と耳が目に入りリレは笑って「何を?」なんて首を稼げているがジンの言葉の意味はしっかり理解しているようだ。

リレは頬をジンの肩に押し付けるようにしつつそしてジンの首筋に唇を寄せた。
さて、何をしてくるのだろうかと楽しんで身を任せていればリレの唇はジンの耳の下に移り、チリっとした痛みが走る。

ほう、そうきたか、と思わず笑ってしまえばリレはジンの顔を覗き込み


「ふふ…ジンの目、好き!」


と言い放ったのだ。
今まで数多の女に言い寄られ適当に体を重ねてきていたのだが今までの女たちはジンの冷えた目に怯えたようにしてたが好き、か。
随分と可愛らしいこと言ってくれたもんだ。そう低く笑ってしまった。
そんなジンの笑い声にリレは顔を寄せ額を合わせてくると


「ちゅーしていい?」


ね、いいよね?そう尋ねかけてくるその声はとても浮かれたものであり、もう一度ジンは笑ってしまう。


「してみろ」
「する!」


赤い頬と微か潤んだ瞳は中々そそるものであり、そういえばここのところリレのことも抱いていないと顔を寄せ、ちゅっ、と口づけを送ってきたリレのことを抱き上げた。

突然の浮遊感にリレはキョトンとしながら嬉しそうに笑みを浮かべ「ジンのえっちぃ~!」なんで笑っている。
思わず全身の力が抜けそうになってしまうがそれでもしっかりと歩きバスルームへと向かえば

「ジーン!ジン、ジン、ジン!」


ヘラヘラと笑うリレにこいつは酒乱なのだろうかと考えてしまったのも束の間、リレの手がジンの首に回り顔に口づけの嵐を起こしてくる。


「おい、リレ」


思わずそんな言葉が出てしまったがリレは気にする気配もなくもう一度

「ジン、好きだよ」

そう耳元で囁かれた。
色んな女に好きだと口説かれていた頃もあったが今のリレの言葉ほど信用の置ける相手はいない しこいつは俺といなければダメだという確信もある。


「仕方ねぇやつだ」


そんな言葉も、しかし楽しそうに笑ってしまったのは自身の心もリレのことを思ってると言っても過言ではないことであり、ちゅっちゅっと、リッ音を奏でながらキスをしてくるリレの唇に重ね合わせつつバスルームでリレと己の衣服を脱ぎ捨て“夜の行為”の事前準備を施した。

さて、楽しもうじゃないかとリレの身体をジンはゆっくりとベッドに押し倒した。





 



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