この世界で迷子の僕を(全80話)
「シェリーのところへ行くぞ 」
そう突然口にしたジンにリレはポカンとしてしまったがすぐ破顔し「うん!」と頷いた。
シェリーさんとはもう2週間会っていなかったからとても嬉しいものであり、メールでのやり取りだけでは少し寂しかったこともありそう、笑顔になってしまった。
ウォッカが待機している車にジンとリレが乗り込めば車はスルスルと動き出して進んでいく。
日によって訪れる研究所は違うので今日はどこに向かうのだろうと思っていてもその道は覚えられないでいる。
と言ってもまあ大体はきてしまえばわかるのだからそれでいいだろう。ジンとウォッカといなければ行くとこもないし車からの流れる景色を見ていればほどなくして見知った道と景色に変わっていきリレは小さく笑ってしまう。
思わずして鼻歌を歌っていればジンとウォッカがリレを見やりジンと顔を見合わせると少しだけウォッカが笑ってしまっている。
そうして着いた場所は○○製薬所と書かれている大きな建物。
ウォッカは守衛と話すとゲートをくぐり地下へと車が入り 停車する。
ジン、ウォッカ、リレと車を降りると地下からの建物への入り口を通り足を踏み入れた 。
シェリーさんに会える。
それをウキウキにしながらリレはジンの背後でコートをそっと掴んでしまっているのはいつもの癖であり、ジンにちらりと見下ろされ頭をぐしゃりと撫でてくる。
リレは笑ってジンを見上げ研究所の最奥の扉を開け室内へと入り込む。
そこには数人の白衣を身にまとっている人がおり、リレはジンの後ろから顔を出してシェリーを見つけようとした。
そしてその姿はすぐに見つけたことができた。
何かの実験でもしていたのであろう、レベル3と書いてある扉、そしてその奥にあったのは関係者以外立入禁止と書かれた扉。そこから出てきたのだから実験していたのは確実だ。
その部屋から出てきたシェリーはひどくお疲れであろうし 少々眠そうでもある。もしかして、ずっとこもっていたのだろうか。
「シェリーさん」
リレはそうシェリーの名を呼びかけてシェリーはジンの背後から顔を出しているリレと目が合うとふわりと笑ってくれた。
「リレ、久しぶりね」
そんな声にリレも笑いジンが そんな2人を見ながらほんの少し口端を釣り上げ笑い
「薬の出来はどうだ」
と問いかけている。
シェリーはジンは見ると息を吐き出しながら「まだ」もう少し行ってところかしら 、と。
「いつできる」
「そんなのわからないわよ、時間がかかるって言ってるでしょう?時間は変わらないわ 」
シェリーは スパッと切り捨て
「私はこれから食事をするんだけど」
そうして言葉を区切るとリレを見つめ
「リレも一緒にどう?」
と問いかけられた。リレはジンを見上げどうするかを悩むがジンは眉間にシワを寄せリレを見つめたがシェリーは気にする様子もなく「いいでしょう?」そうジンに問いかけている。
「……好きにしろ」
そうジンは呟くとリレは嬉そうに笑うが、ジンが見える位置にいなければリレは嘔吐いてしまうのです自然、3人、もしくは4人での食事になってしまう。
それでも最近はシェリーと二人きり(と言っても視界のどこかにジンがいなければならないが)過ごすことができている。
「ジンもウォッカも行こう」
そう尋ねかけるリレにジンは深く息を吐き出したがそんな ジンを見上げるもジンはもう 特に何も言わず
「行くぞ」
そう言ってくれた。
リレはそのジンの言葉にすぐ笑顔を浮かべジンの腰にぎゅうと抱きついてからシェリーの手をぎゅっと握りしめ
「行きましょうシェリーさん」
そう手を引く。
まあ食堂の場所なんてリレが知るはずもなくシェリーは優しく微笑みながら手を引き歩き出しジンとウォッカの間を抜け研究室を後にした。
ジンとウォッカはそんなリレとシェリーの後に続き部屋を出ると4人で食堂へと足を動かしていく。
時刻は夕暮れ時。廊下には人工的な灯りしか灯ってはおらず、厭に無機質な圧迫感に襲われる。
自然シェリーの手を握る力が入ってしまう。
「どうしたの?」
そのシェリーの問いかけには何でもないと言う風に首を横に振りとジンを振り返る。
しかしジンはウォッカと小声で話していてシェリーとリレを見てはいない。
しばらく歩いたところで食堂 と書かれているそこに入ればそこはなかなかに賑わっており4人が入ってきたことに気を向ける人はおらず、しかしジンの姿を見つけてしまった人はほんの少し口を閉ざし失礼の無いようにと顔を伏せている。
しかし、ジンに好意を寄せている女性も少なくいるらしく 事実、リレとシェリーに鋭い視線を送ったりしている女性もいるがシェリーもリレも気にすることなくシェリーはカウンターにいる飯炊きのおばさんに定食を頼み、リレとシェリーは窓側の2人席に腰を落ち着け、その近くにジンとウォッカも腰を下ろしてくれた。
それからしばらくはシェリーと会話を楽しみあっという間に時間が経ち
「行くぞリレ」
その言葉にリレはシェリーに「またね」と手を振りジンとウォッカとともにその製薬所を後にした。
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