この世界で迷子の僕を(全80話)
ここのところジンは酷くご機嫌であり、その理由というのがおそらくリレの仕事っぷりが満足いくものであるだろうし全ての仕事が順調に捗っているためでもあるのだろう。
明日も朝早くから遠出の仕事があるため家には戻らずホテルで過ごすことになりジンは 上機嫌にウォッカをホテルの最上階にあるカクテルバーへと誘ってくれる。リレは言わずもがなてある。
そうして3人でバーへと向かえば程々に賑わっておりジンとウォッカはカウンターへと 腰を下ろし座っている。
もちろんリレもジンの横に腰を下ろすとジンとウォッカは ウイスキーをショットで、そしてリレにはノンアルコールのカシスオレンジを頼んでくれた。
カウンター内にいるマスター らしき男はそっと微笑みことりと目の前にグラスを置いてくれた。
ジンはウォッカとグラスを傾けリレもストローを吸い中のものを飲み込み、美味しくてそっと笑ってしまえばマスターは同じように微笑み
「どうぞ」
とチョコレートを差し出してくれた。
「ありがとうございます、いただきます」
そう伝えつつチョコレートを口の中に放り込みもぐもぐと口を動かし
「美味しいです、」
チョコもカシオレも、と。
マスターは笑って声をかけてきたその内容は、本の些細な事柄であり、リレは考えつつもそれに答えていく。
まあ、ジンやウォッカもさりげなくリレに意識を向け不用意な発言をしないかと聞いているがまあマスターは込み入ったことにまで話を広げてはこない。それはリレにとっても嬉しいもの。
そうしてカシオレをちびちびと飲みジンとウォッカもお酒を追加で飲んでいる。
明日に響かないだろうかとも思うがジンとウォッカがそんな失敗を犯すはずはないだろうとリレはカシオレを飲みほしグラスを置く。
「リレ、他に何か飲むか」
そのジンの問いかけに首を振り否定の意思を示せばジンは「そうか」とつぶやくとカウンターにお金を置き
「部屋に戻るぞ」
と声をかけてきて立ち上がり リレはマスターに
「おやすみなさい」
ありがとうございました、と頭を下げるとマスターも同じく頭を下げ「ありがとうございました」と返してくれた。
エレベーターに乗り指定の階まで降りればジンとウォッカは放れホテルの一室に入っていく。
もちろんリレはジンと同じ部屋なのでジンの背を追いかけ部屋へと入る。
しっかりと鍵がかかるので、それに気を向ける必要もなく それにしても広い部屋だなあ なんて感心してしまう。
ジンはコートと帽子を脱ぎ捨てるようにソファーへと投げかけリレもそれに倣いコートを脱いだ。そして部屋にある時計を見上げればもう少しで11時30分を回るところでありジンがリレを呼び浴室に誘われる。
ということは、するのだろう。
僕は諦めて服を脱いだ。
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