この世界で迷子の僕を(全80話)
ジンに拾われジンと行動を共にするようになってからおよそ3ヶ月。肌寒いと思ってからの3ヶ月である。
そう、冬到来。
この3ヶ月でリレは様々な翻訳を任されるようになり、 ジンの役に立った頑張っているのはきっとジンには届いているだろう。
そして、組織内にもそんなリレをほんの少しでも見てみたいと考える輩も出てくるがそれはジンによって阻まれている。
だが他の人間のそんな気持ちがわからなくてもない。
何せジンがずっと側に置き、ウォッカとほぼ同じくリレに信頼を置き可愛がっているのはよく分かるもの。
リレは決してジンの側から離れないしジンも離そうとはしない。リレの噂はすでに組織内にわたっている。
今更コソコソと隠す気はないのだろう。ジンとウォッカ以外でリレが言葉を交わすのはシェリーとベルモットのみ。
特にシェリーはジンとウォッカが施設を訪れるため会話の回数は増えているし、さりげなく携帯の番号も教え合っている。まあそれはジンも気づいているが特に問題はないと思われているのはリレの知らないところであり。
そしてシェリー程ではないが ベルモットもごくごくたまにメールを送ってきてくれている。内容は 他愛もないこと。
別段、ジン報告する必要もないし報告しなくともリレの携帯内の全てのデータはジンに筒抜けで、ある意味リレのプライバシーなどはないと言っても過言ではない。
そして週に一度、多い時で四度、ジンはリレの体を求めてきている。
それは嫌ではないが前準備がとてつもなく疲れる。しんどい。だがそうしなきゃ抱けないし抱かれない。
ジンはヘテロではないのだろうかと考えてしまうがジンはリレ以外の男に対し性的感情を覚えることはない。
しかしなぜかリレには欲情する。それが何故かはジンにはわからない。
そうしてリレは毎日が筋肉痛であり、だんだんと腎に開発されていく 初めての日だってなかなかに荒く抱かれていたし(いや優しさもあったが)、強すぎる快楽に落とされれば泣き叫んでいたと言っても嘘にはならない。
そんなことになってしまったリレだが、ジンに抱かれるうちに排尿感と射精の違いが分かるようになりそれがジンにとっても楽しく嬉しいもの。
そしてリレもそれがとても嬉しい。
なぜならリレが役に立っているのだとしたら翻訳面1つだけである。
そしてジンの性欲を満たしているということはそう、本当に邪魔な存在だと思われてはいないことにつながっていると思ってもいいだろう。
それに 男なら子供を宿すこともないし月のものだってないのだから、そう、いつでも問題はない。
何度ジンに抱かれたのだろうか、薄暗い夜明けの光がリレの頬を照らし、ぼんやりと目を覚まし寝返りを打ちながら 横にある温もりを視界に捉えた。当然だがジンがいる。
長く柔らかな銀色の髪は重力に従い流れで広がっており、前髪もジンの寝顔に影を作っている。
伏せられた瞳に、というか目蓋に青白い顔も、しかし太陽の光が優しくジンの顔を照らしている。
またぼんやりとしながらリレはジンの頬に手を寄せ、ソロリと撫でれば、ジンはピクリと目蓋を揺らし、リレは手を離す。しかしジンを見つめることはやめない。
そんなかすかな動きにジンは目を覚まし目蓋をあけリレの瞳を至近距離で見つめてきた。
「ジン、おはよ」
と笑いながらジンに声をかければジンは眉間にシワを寄せリレを抱き寄せると強い力で腕の中に閉じ込め再び眠りの姿勢に入り、そういえば今日は特に何かしらの用事がないと昨晩行っていたような。
ジンの肩に顔を押し付けながら小さく息を吸い込めばジンの髪からフワリとシャンプーの香りが鼻をくすぐり、そしてタバコの香りも誘ってくる。
そう、ジンの休日。
だから昨日あんなにも抱きつぶしてきたのだろうか。今だ 下腹部がじんわりと疼き、後ろの肛でさえまだ入っているような何とも言えない感覚だ。
一応スキンは衛生上つけているのは当然のことであるが、それでも体力があるらしいジンは何度となく奥をで貫いてくる。
たった3ヶ月、されど3ヶ月。
リレの体はジンのモノを受けいれやすい体へと変わっているのはジンの狙い通りなのだろう。改めて、ジンってすごいなぁなんて考えてしまう。
完全に二度寝のジンであるがリレの体に回ってる腕の力が緩むことはなく、ギリギリと締め付けてくる。
もしかして、起きてるのかな……?
ドキドキとしながらジンの顔を見つめていてもジンが目を開くこともなく、とても穏やかである。
それでも苦しいものは苦しいのでジンの腕の中で軽く身動ぎをしながら少しでもその腕の力を弛めて欲しいもの。
そうしてモゾモゾとしていれば再びジンの眉間にシワが寄り
「どうした」
なんて低い声がリレの耳を揺らしてきた。その低い呟きにドキッとしながらも小さい声で返したのは
「苦しい」
という言葉。
その言葉をしっかりとジンに届いたらしくジンは目を開き 鋭い視線をリレに向けたがリレはほんの少し困ったようにジンを見つめることしかできず、ジンは少し息を吐き出すとリレの体に回ってる腕からそっと力を抜いていく。
このままジンは僕のことを離すのだろうか。それはそれで 寂しいと思っていればそんなリレの心の内を見たようにジンは薄く笑い、寝た状態でリルの頭をふわりと撫で先ほど よりも強い力で抱き寄せられた。
つまり、離す気はないということだろう。
思わず小さく笑ってしまったが、すでに眠ってしまっているジンには気づかれることもなく、そしてリレも目を閉じ
「お休み、ジン」
と、ジンの唇にそっと、本の一瞬だけ触れるとリレも二度目の夢の中へと旅立っていった。
リレが寝て数分、ジンは目を開くと腕の中で無防備に眠りについているリレを見つめると口端を上げ低く笑うと
「ずいぶん、」
可愛いことをしやがる、なんて呟きジンもまたリレの額に口付けを落としリレが起きないように静かに動くとベッドから抜け出して欠伸を一つ 、コーヒーの用意をした。
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