この世界で迷子の僕を(全80話)



どこか遠くで携帯であろう着信音が聞こえてきたリレはボンヤリとしながら目を覚ます。そこにはジンの姿の温もりも気配もなくリレは思い切り飛び起きてしまった。


「ジン……?」

と呟いた言葉は薄暗い室内に溶けていってしまいリレはベッドから降りようと立ち上がりズクリとした鈍い痛みに顔をしかめてしまった、が、そんなことよりもジンの存在を探さなければ。
そう痛む下半身に鞭打って立ち上がり寝室を後にした。

カーテンも何もないリビングは昼の明かりが室内を照らしだし、そしてシャツとズボンだけのスタイルのジンがテレビを見ながらタバコ吸っており、リレに気づくと口端を上げ笑い


「起きたか」

と。
ジンがそこにいたことにホッとするとその場にヘタレと座り込みジンは少し驚いたような表情を浮かべるがすぐ何故なのかを悟ると低く笑いタバコを灰皿に押し付け立ち上がりリレの前まで歩いてくる。


「もう少し体力をつけろ」

その言葉の意味にリレは頬を赤くさせジンを見上げてしまいジンにひょいと抱き上げられてしまいそのまま連れられたのには浴室であり

「自分で洗えるな?」


そう問われてしまいリレは赤い頬のままい小さく頷いてジンの腕から逃げるようにして浴室へと入り込んだ。

シャワーを流しお湯に変わるのを待っていればジン少しだけリレを見つめてきたが曇りガラスついたの扉を閉めて行ってしまい別の意味でほっと息を吐いてしまった。

スキンを着けてされたけどローションを塗り込まれていたしリレの白濁もカピカピに乾いて腹部にはりついている。
改めて恥ずかしくなりながらもお湯へと変わったシャワーを頭から浴びボディシャンプーであろうそれを手に広げ体を洗い頭を洗い一旦落ち着いてから後ろに指を埋め込むと、未だヌルリとした感触に息を詰めるが洗浄を済ませておく。それにゾクゾクとしたものに背筋を震わせていてもジンは来ない、来てほしくない今は!
ザーザーと流れる音とグチグチとした音に耳を塞ぎたくなるが今は一人今は一人と自身に言い聞かせ洗浄を済ませシャワーを止めた。

……疲れた……

そうして浴室を出ればバスタオルとリレのであろう服が置いてありジンって本当に優しいと感動してしまう。
タオルで体を拭き、リレのであろう服に腕を通したが
「ん?」
と首を傾げてしまったのは、待って、これって、ジンの服では…?
黒のシャツだがジンとリレ体格差ではこうなるだろう。
ジンの服である大きいシャツは膝まで、とはいかないが太股は完全におおっていてリレはパタパタと洗面所を後にした。


「ジン……」


そうソファに腰を下ろしてるジンを見つめ声をかければジンはリレに視線を向け低く笑ってきた。


「……ジン、ズボン……」

そんなリレの呟きに、ジンは

「そのままでいいだろ」


なんて言ってきてリレは何とも言えず困ったように眉を落としてしまう。
ジンはなおもを笑ってままだがジンが己の脇からズボンであろうそれをリレに投げかけてきた。

ボスッと顔面に当たりながらもそれを受け取り足に通せば嬉しいことで今度はリレにぴったりと合っていて思わずホッとしてしまう。
袖を捲りながらジンの横に座り

「おはよう」

と笑いかければジンは小さく
「ああ」
と答えてくれる。そしてジンはテレビのニュースを目を向けながら、まだしっとりしている髪を撫でてきてリレは目を細めてそれを甘受する。

流れていくお昼のニュースでは様々な事件が報道されておりしかしリレには関係ないことだとジンに引っ付きながら窓から外に視線を向けた。
ジン越しではあるが窓から見える外はマンションの上階なため下を見ることは叶わずずっと遠くの空で見えてしまう。
そんなことをぼんやりと考えながら見ていればジンはチラリとリレを見下ろすと

「どこか行きてぇのか」


と問われてしまうがリレは首を振り、かしげ、

「喉乾いた」


と口ににする。ジンは少し黙り込むと立ち上がり髪をまとめながらカーディガンだろうそれを羽織り

「来い」

と誘われそれについていくがどこへ行くのだろう。
いや来いって言ったんだからちょっと買い物だろうが、ジンも買い物に行ったりするんだなあと考えてしまいジンの大きなシャツのまま、あとを追いかける。

ガチャリと外へ出てエレベーターで降りものすごく近くのコンビニへと足を踏み入れた。 そしてかごを渡され、好きなもん買って来い、と背中を押されリレは少し悩みながら飲み物や(ちょっと食べたいなと思ったのでそっと)チョコをかごに入れジンも同じように棚からコーヒーを選びリレの持っているかごの中へ。


「ジンってご飯どうしてるの?」


近くに立つジンを見上げ首をかしげればジンは特にどうと言った表情もなく

「腹が減れば食ってるだろ」

と。それはそうだろうけどそうではなくて僕が訪ねたかったのは自炊しているのかどうかということで、伝わっていなかったようで

「なんだ」

と呟かれてしまう。
気になるが、気にするのはやめようと思いいたりリレはカップスープもかごに入れた。

会計でもチラリと目に入った焼き鳥を見ていれば

「トリ串、塩とタレ」

とジンが店員さんに呟き、カードを差し出し会計を済ませている。ブラックカードなんて初めて見た。ジンっていったい……そう考えながらも袋を渡されトリ串も持たされる。

コンビニを出ながらリレはトリ串を口にし、ジンの横を歩きジンはリレの手にあるトリ串を一つ口にするとそのままに咀嚼している。


「美味しいね」

そんなにリレの言葉にジンは特に答えることもなく飲み込んでいるが、まぁいつもの事だとリレはもう一口口に含みそしてエレベーターに乗りジンの部屋に戻ってきた。

ジンは袋からコーヒーを取り出し飲んでいたのでリレもそれに倣うようにお茶に口をつけた。
そういえば冷蔵庫はあるけれど中身はあるのだろうか。いや1ヶ月以上…かは不明だが、マンションに戻っていなかったのだから冷蔵庫に物が入ってる可能性は限りなく低いだろう。それでもと杏仁豆腐などの冷蔵菓子をしまうために冷蔵庫を開ければ予想した通り何もない。未開封のミネラルウォーターが冷えており今日のご飯について考えてしまう。
ホテル生活でジンはそれほど食事をとっていなかったがリレが食べるよう促せば口にはしてくれていた。そんな不規則な食生活でよくジンはもっていたのだから凄いと思う。
燃費が良すぎるジンはそれに慣れているだろうが、いや、でもさっきトリ串食べていたのだからお腹は空いているんだろうね。

今日から僕はジンのためにご飯を作る!

そう決意しても、もしかしてまた僕を拾った時のように一か月家に戻らない事ってあるのであろうから食品のストックができないだろうなと思い早々に諦めた。
そうしていながら冷蔵庫を閉め顔を上げればジンがコーヒーを飲みながらリレを見つめており、リレの言いたいこと悟ったのか


「しばらくはホテルに滞在することはねぇよ」


ならばジン、

「後で買い物行こう」

そう笑いかけた。 そんなリレにジンは面倒そうな表情を浮かべ息を吐き出すと、リレの頭をグシャリと撫で

「今日の夕方に食事は届く」


そう呟きリレの腕を引きソファーに座らされジンはごろりと寝転がるとリレの膝に頭を乗せ

「そのままテレビでも観てろ」


と、寝の態勢に入ってしまったジンにちょっとだけ笑ってしまった。








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