人魚と同じ夢を見る(全10話)
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彼女がポアロに来なくなってから1週間が経った。理由はわからないが仕事で忙しいのだろうか。そんなことを考えながら梓さんとコーヒーを飲みつつ話していれば外では雨が降り始め彼女は大丈夫だろうかと考える。
まあ水の匂いに敏感な彼女が傘を忘れることはないだろう 、先日にたった一度だけだが忘れていたようだが。
「今日の降水確率30%だったのになぁ」
「そうですよね、ここのところ雨が多いですね」
梓さんの呟きにポツリと答えれば、ふと気がついのは彼女が「海に呼ばれる」と言っていたそれ。
辛い時に呼ばれると言っていたそれだが、もしかしたら、そうなのか?いや、ただ彼女のツラさとは何だろう。
好意をもった相手に望まれなかった、とか……?
いや、だとしたら彼女は僕に彼女の秘密を教えてくれたのだから僕のことを想ってくれればいいのだが、もし、別の相手を想っての告白で、知ってくれる、理解してくれる相手が欲しかっただけなのだとしたら。
いや、彼女に限ってそれはないと思いたい。何度も会ってはいるがアドレスを交換したことはないし常連さん全ての人とアドレスを交換するはずもない。まあたまに女子高生に尋ねられるが笑ってごまかしつつも断っている。
雨のせいで店内に逃げ込んできた人たちを接客しつつ外を見つめ、注文を取り、梓さんとマスターと働いてれば大きな青い傘をさした淡いピンクのワンピースを着た彼女が窓の外に見え、思わず追いかけるように扉を開け
「渼瑚さん」
と名を呼んでしまった。が、しかし、彼女は振り返りもせず歩いて行ってしまい足にはブーツで水から守っているようにも見え、人違いだとは思えない。
もう一度名を呼び、肩に手を置けば彼女は小さく振り返り ひどく悲痛な、沈んだ表情を見せヒヤリとしてしまった。
「時間があれば、ポアロに、」
「……ごめんなさい……私、行かなきゃ、いけないの……」
まさか断られるとは思わず、彼女を見つめていれば彼女は小さく頭を下げ去って行ってしまった。
行かきゃ、いけない、なんて、もしかしたら、彼女は、海へ……?
「安室さん、どうしたんですか?」
チリンという音と共に梓さんが顔を見せて後ろ髪を引かれてしまうも仕事があるので手が離せない。それでも彼女を追わなければと脳内に過り僕はエプロンを梓さんに押し付けると
「今日のバイト代は要りませんとマスターに、では!」
「あ、安室さん!?」
背後で梓さんの声を聞きそれでも走って追いかければ彼女はタクシーに乗り込み走り出す。
タクシーのナンバーを覚えるとポケットに入れたままの鍵を取り出し急いで車に乗り込むとそのタクシーを追いかけた。しかし運が悪く信号で離れてしまいスマホで風見に連絡をしてタクシーの追跡をしてもらうと彼女の乗ったタクシーは海辺と向かっているらしく「やはり」「もしかして」彼女は「想い人に」想ってもらえなかった。
「海に、」
呼ばれたのか?
人魚と“なってしまう”彼女の悲しみを、僕が癒してあげるのに、彼女の想い人への憎しみが勝り、ギリと歯を食いしばってしまった。
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