人魚と同じ夢を見る(全10話)
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海野渼瑚からとんでもない話から1週間。彼女は相変わらずポアロに通ってくれるし小さな声ながらも話をしてくれる。
だが他の人たちには一線を引いたように見えるのはあの話を聞いてあの目で見たからなのかわからないが、気になるのは確かだ。
そう僕は彼女に魅せられ、惹かれられている。
おそらく初めて出会ったあの海のあの浜辺で、まるで人魚姫の王子のように。
「いらっしゃいませ渼瑚さん」
「……こんにちは…安室、さん…」
「いつものですよね?」
彼女はコクリと頷き、いつもの席へと座ればいつものようにアイスコーヒーを淹れ軽く会話をする。その声は意識してから余計にだろうか、どんなに店内が賑やかでも耳に入ってきてくれて、言葉を交わせてしまう。そしてそんなことを知ってるのが僕だけだという優越感に浸りそうになるが、ポアロも警察関係もこなしていき日々を過ごしていく。
もしかして、僕のことを好きに、いや、気にしてくれているのでは?という感情が芽生えてしまうのも仕方ないだろう。
風見たちにも怪しい目で見られるほどに僕の機嫌はとてもいいもので、3徹しても元気でいる。いや、正直、多少はおかしなテンションになっていただろうがその真相は話せない。
今日も今日と徹夜からのポアロに入りカウンター越しに彼女と話していれば、学校帰りの女子高生がポアロに立ち寄りこちらに声をかけてくるのでそれに対応しつつもチラリと渼瑚さんを見れば ぼんやりとアイスコーヒーを飲んでおりその表情に気を向けられなかった。
「…梓さん、お会計、いいかしら……?」
「はい!ありがとうございます」
「あ、渼瑚さん、またいつでも」
どうぞ、とまで言う前に彼女は行ってしまい、そういえばお会計はいつも僕だったが梓さんを指名するとは、と疑問に思っていたが寝不足と忙しさに背を押され、仕事もこなしラストオーダーを受けたところで夜の明かりの中ガラス越しに空を見上げている渼瑚さんの姿を見つけてしまった。
急いで店内の清掃を行い、梓さんと締めの作業をし表に出れば梓さんは「やだ、雨!」なんて言っており、確か微かだが雨が降っている。
梓さんに挨拶をし、ポアロ前にいた渼瑚さんにも声をかけた。
「こんばんは、渼瑚さん」
「…こんばんは、安室さん……」
どうかしましたか?と言い掛ければ彼女は空を見上げ
「雨が、降っているから…」
ここから動けない、と。微かの雨だとしても足が濡れてしまうと人魚に変わってしまう。 恐らく、ここまで来てから雨が降り始めてしまったためであろうと考え、もしかしたら頼られてるのかもしれないと邪推し
「今、車持ってくるので少し待っていてください」
「……ごめんなさい…ありがとう……」
やはり、頼ってくれている。
それがこんなにも嬉しく感じたことはなく初めてのそれに笑ってしまう。
すぐ車を動かしてポアロ前に停車させると車内に置きっぱなしにしていた傘をさし車まで誘導し乗ってもらった。
彼女はもう一度ありがとうと呟き、微笑まれたのは初めてでありドキリと心臓が高く鳴ったのは、つまりそういうことだろう。
僕は静かに車を動かした。
彼女のマンションへと。
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