人魚と同じ夢を見る(全10話)
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いつもの倍速で店内を清掃すると入り口の扉の鍵を閉め裏から出てから表に回れば、2人組の男に声をかけられている彼女がいて
「いいじゃん、遊ぼうよお姉さん」
「何か喋ってよ」
なんて絡まれている。なのでとびきりの安室の笑顔を見せ
「遅くなってすいません」
と声をかければ2人は僕に驚いたようでスゴスゴと去って行きしかし渼瑚さんはなんとも思っていないの様子で僕に向かって
「お疲れ様」
と呟いた。その声はいつもと同じ鈴のような声であり男2人組の言っていた「何か喋ってよ」の言葉を考えると、どうやら無言で拒否していたらしくなんとなく優越感を覚えてしまった。
「どこか居酒屋へ行きますか?と言っても、僕は車なので飲めませんが」
「……家に、来て……」
「え?」
「……無理かしら……」
その言葉に否定すると彼女は今度はちゃんと僕を見つめ「私の家、」すぐそこのマンションなの、と。
車で来ても来なくてもいいけど車なら住所を教えるから来 て、とまで言われると従ってしまう。だが助手席に彼女を乗せようと手を引けば、戸惑いつつも手を重ねてきて降谷の車に乗ってくれた。
そして教えてもらった住所は本当にすぐそこで、駐車場の空きスペースを教えてもらうとそこに車を止め流されるがままに彼女の部屋を訪れてしまう。
「……どうぞ……」
と彼女は降谷のことを自室に通してくれてアクアリウムと言っていいほどに彼女の部屋には大きな水槽が設置されており薄暗い青い光の中で彼女が動きソファーに勧められたので座らせてもらう。
「…何か、飲む……?」
「お気遣いなく」
「……そう……」
と彼女は降谷の前のテーブル越しに座り込んだ。
「…私の、話したいこと、わかる……よね…」
「海でのことですよね」
話してくれるんですか?そう問いかければ彼女は小さく頷き
「見られたからには…話しておかないと、ダメだと思って……聞いてほしいの…」
「はい」
彼女はほんの一瞬だけ息を吐き出すと
「……私、家系が、母方の家系が……」
人魚なの。
「……人魚……」
「産まれは普通、なんだけど……その生まれた子供が女だと、水に触れると人魚になってしまうの……」
もちろん、手や首が触れる分には問題ないけれど、足にかかると、そこから尾びれになって、乾くまで元には戻らないの。
「……人魚姫の物語は、知ってる…?」
「人間の王子に恋をするも、声が出せず、王子は別の姫と婚約し、人魚に戻りたければ王子を殺し、それができなければ泡となり消える……というものですよね?」
「……だいたいは、そう…そして、私も」
「つまり」
渼瑚は降谷を見つめ 少し悩むがすぐ顔を上げ
「私は、海に呼ばれるの……」
「呼ばれる?」
「辛い人生を捨て、海の人魚となり、消える……」
「ツラい、人生……?」
渼瑚さんは小さく頷き「恋をして、それが叶うまで、」私は水に触れると人魚になってしまい、人の世を終えてしまう。
人魚は不老長寿、なんて言われるけれど、本当はとても意味のない、寂しいもの……。こんな人間とも言えない存在が受け入れられるまでこのことを誰にも話せるわけなんてないし、信じてももらえない、だからと言って水に触れて晒すことが出来るほど、私の心は強くない。そして、人魚の声は人を惑わすもの。
「セイレーン……」
「……ええ」
船乗りを惑わす人魚。怪物。異生物。そんなことを知られると問題がある。だから私はあまり話したくない、思ってもいない相手は惑わしたくない、そして、海に呼ばれる。だからと言って水から離れられるわけもないから私は、ずっと、孤独。
「でも、あなたに見られてしまった。知られてしまった……」
「……理解者になってほしい、と?」
「……理解は、しなくていい。ただ、話さないといけないと思って……」
そうして2人の間には沈黙が走る。